基金の活動

託せる企業・受けとめる経営者のあるべき姿とは?「第19回建設業経営者研修」を開催〈ダイジェスト版〉

(一財)建設業振興基金

 2月13日、建設業振興基金は「第19回 建設業経営者研修」(於:浜離宮建設プラザ(東京都中央区))を開催しました。今回は「託せる企業・受けとめる経営者のあるべき姿」と題して、講演とパネルディスカッションを行いました。当日は、全国各地から約60名の建設業経営者、後継者、経営幹部の参加者が集まりました。

 

 講演1

「なぜこの会社に人財が集まるのか」
坂本 光司 教授


法政大学 大学院 政策創造研究科
教授 坂本 光司 氏

 坂本教授は、自身が取材をしてきた数多くの企業事例を挙げながら、これからの経営指標を提示した。
 企業にとって人は「利益を上げるためのざい料」ではなく「ざい産」である。時代は「人ざい力」を求めている。人財が集まらないと嘆く経営者は多いが、問題は、「外(社会)」ではなく「内(企業)」にあることを知るべきだ。
 経営者がよく人財を確保できない、育てられない言い訳に 景気 業種 企業規模 ロケーション(立地) 大会社(ネーム)を挙げるが、誤解や錯覚、甘えではないだろうか。条件の整わない企業でも、人が定着し営業利益を出しているところもある。そうした会社の経営者の掲げる理念は、まず何をおいても「社員第一」である。経営者は人財こそが、企業成長の原動力であり、創造の唯一の担い手であることを自覚すべきだろう。
 坂本教授は、数多くの会社を調査・研究して人財力のある会社には共通して3つの特徴があることを提示した。 社員第一主義 仕入れ先・協力企業を大切にしている 顧客満足度が高い。このうち特に重要な項目はの「社員第一主義」であり、「大事にされた社員は辞めない」と語った。

 

 講演2

「人材危機 ~建設業から沈む日本~ 職人・技術者不足をどう乗り切るか」
野中 賢 編集長


日経コンストラクション
編集長 野中 賢 氏

 野中編集長は、業界誌の編集者の立場から、建設業界の人材危機について社会的な背景、具体的な数字を用いて解説。
 建設業界の人材不足をどう解決していくべきか? 待遇の改善 キャリアの形成 人材教育 働きやすい環境づくり、など課題は多い。人材不足は3・11の東日本大震災が契機とされているが、実はそれ以前から始まっていた。2008年のリーマンショックで建設需要が激減し、仕事量の減少と単価の下落を引き起こし、多くの職人が転職または離職。2010年ごろから徐々に建設需要は回復するが、職人は戻らず、慢性的な人材不足の状況になった。そんな状況下で東日本大震災が発生し、さらに深刻化した。これに加えて、職人の高齢化も進んでいる。
 全国各地の人材確保・育成に向けた団体や中小企業の取り組みを紹介し、職人・技術者不足の解決に向け理解を促した。

 

 講演3

「ものづくりを次世代につなぐ ~ジリ貧会社を再生させた勇気と決断」
諏訪 貴子 社長


ダイヤ精機㈱
社長 諏訪 貴子 氏

 ダイヤ精機は中小企業の集積地として知られる東京・大田区で半世紀近い社歴を持つ。自動車部品用ゲージを製作する会社だ。2代目社長である諏訪氏は、2004年に会社を継いだものの、当時はリストラをせざるを得ないほど経営は苦境に陥っていた。そこで打ち出した社内改革。1年目は「意識改革」、2年目は「チャレンジ」、3年目は「維持継続発展」。「意識改革」ではトップダウン業務指示組織からボトムアップ化への転換を図り、意見を集める意見集約型組織を構築した。社内改革と併せて設備投資による社内活性化なども功を奏し、経営は好転した。
 「大きな石だけでなく、小さな石もあるから、強固な石垣ができる」と、町工場と大企業の関係を石垣にたとえ、町工場がものづくりを支える大切な役割を担っていることを語った。

 

 ★パネルディスカッション


(一財)建設業振興基金
理事長 内田 俊一

 当基金理事長の内田俊一がコーディネーターを務め、3名の講演者をパネラーとしてインターンシップの活用や、入社後に離職を予防するためのコミュニケーションの取り方、若手育成法などについて意見を交え、1時間という限られた中で非常に有意義な時間となった。
 冒頭で内田理事長は、建設業界が人材確保に向けて行っている「給与や休暇などの処遇の改善」と「業界のイメージアップ戦略」の2つのポイントを挙げ、それぞれについてパネラー各氏にコメントを求めた。坂本教授はインターンシップの積極的導入を示唆。「業界内で働いて現場を経験することがイメージアップにつながる。給料や福利厚生だけでなく、理念に共感する人が増えれば、それだけ離職者も減るだろう」と、企業理念の重要性を強調した。また、野中編集長は、「学生の中には建設業が何をしているのかよく分かっていない人も多い。分からない世界に飛び込むのは勇気がいること。建設業界は率先してリアルな情報を発信し、より多くの人に仕事の内容、醍醐味、やりがいを伝えるべき」と語った。女性経営者の諏訪社長は、近年、インターンシップ制度を導入し「新入社員の育成においても3年計画で、若手生活相談係などの担当を決めてフォローしている」そうだ。最後に内田理事長は、「ある経営者が学生に語った言葉が印象に残る。『入社すれば、自分が責任を持ってあなたを一人前に育て上げる』。この一言で入社を決意したそうだ。今求められるのは、経営者の覚悟と決意である」という言葉で締めくくった。

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