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実践的!広報塾

積極広報へ向けた正しいプレスリリースの作り方

【講師】作家・土木史研究家 高崎 哲郎 氏
1948年栃木県生まれ。NHK記者、帝京大学教授を経て、
土木研究所などの客員研究員や東京工業大学などの非常勤講師を務める。

プレスリリース(PRESS RELEASE)とは、行政機関や民間企業などから報道機関向けに発表された声明や資料のことです。多くの人たちにお知らせしたいことをプレスリリースにして発信することは大変重要なことですが、問題は、そのやり方によってマスコミの取り上げ方に大きな差が出ること。そこで、しんこうWebでは、全5回シリーズで、「積極広報に向けた、正しいプレスリリースの作り方」を特集します。第1回目は、その考え方と作り方の基本を紹介します。

マスコミ対策として「積極広報」のための4つの姿勢

① 今日のマスコミ(新聞・テレビ・ラジオ・インターネット・ミニコミ紙など)は私たちが考えている以上の大きな影響力を秘めています。そのことを十分に理解し、その力を上手に活用しようという姿勢を持たなければ、結果的に、国民の皆さんに建設業の本当の姿を見せることはできません。

② 建設業の存在、活動内容、社会貢献の内容などを国民にアピールするには、常日頃よりマスコミとの良好な関係を保ち、それを維持することが不可欠です。その上で、理解ある報道を求めるのです。

③ マスコミへの協力要請は、受け身(待っている)ではなく、積極的な姿勢が必要です。こちらから情報を提供しなければ、マスコミも関心を持ってくれません。

④ 情報提供の手段には、「記者会見」、「プレスリリース(投げ込み)」、「個人的提供」などさまざまな方法があります。情報提供の際には、情報が正確であること、分かりやすいこと(専門用語は避けるなど)、発表するタイミングを心掛けてください。もちろん、記者たちとの個人的信頼関係が重要なことは言うまでもありません。

 

プレスリリース(投げ込み)とは?

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 プレスリリースはニュースリリースとも言われ、報道関係者向けの発表、あるいは官庁・企業・団体などが広報活動の一環として報道機関(記者クラブなど)に配布する印刷物のことです。記者クラブでの発表の多くはプレスリリースの配布であり、ほとんどが記者クラブの入り口付近に設けられたボックスに、プレスリリースを投函します。このため、通称「投げ込み」と呼ばれています。

 国土交通省内にある国土交通記者会のボックス。全57社のボックスがある。

 

プレスリリースの作り方のポイント

 自分たちが発表したことを、確実に新聞などの報道機関に取り上げてもらうためには、ただ資料を投げ込めばいいわけではありません。ここでは、そのポイントについて解説します。

 

資料は3点セット

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 資料をまとめる際の原則は、A4版用紙3枚(以下「3点セット」)。
 必要不可欠な要素は「わかりやすい概要説明文」、「地図の添付」、「概要文を説明するための資料」。これらをそれぞれ1枚にまとめ、3枚を超えないようにしましょう。

 

★1枚目

見出し

 見出しは資料全体を説明する“顔”に当たり、最も重要な部分です。記者の目を引けると同時に、取材意欲を掻き立てるためには、「簡潔かつインパクトのある見出し」を考える必要があります。見出しは原則として1段書き、7〜13文字を目安に収めるようにしましょう。例えば、“環境に配慮した”といった表現は、記者の目を引き、アピール度も高くなります。例:「環境に配慮した○○づくり」など。

 

サブタイトル

内容が伝えきらないため、サブタイトルをつけて2段見出しにするのもいいですが、あまり文字数が多いと情報が多岐にわたり焦点が定まりません。1段書きでは情報が伝わらない、誤解を招く恐れがあるなどに限ってサブタイトルをつけます。サブタイトルに組織名や社名は出さないようにします。

 

概要文

 概要を説明する文章は、できるだけ簡潔に。伝えたいことの焦点を見定めて目標はA4版で5行程度が理想で、多くても10行以内にまとめましょう。だらだらした長文では、何が言いたいのかわからなくなるので注意が必要です。
 文章の書き方については、ワンセンテンスを心掛け、1行1行を切って書きます。例えば「今回の催し物は○○を願ったものです」「参加者は○○な人たちが中心になると思われます」「雨天でも決行します」というように1行1行を切ると分かりやすい文章になります。記者たちが読んでいる姿を想像しながら、簡潔明瞭を心がけ書くようにしましょう。
 文中で注意したいのは、「なお…」という接続詞。概要の部分では重要な内容を伝えているので、概要の部分で「なお」書きは避けましょう。例えば、「なお、雨天の場合でも決行します。」では「なお」をとってください。

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アピールする言葉

 アピールする言葉とは、印象に残る言葉。記者が書きやすい言葉や、書きたくなる言葉を使うと記事を作成しやすくなります。

① “初めて”“業界初の”“日本初の”
 今回初めて行ったもの、業界では初めて行ったこと、初めて成功したことなど、今までに誰もやっていない「初めての」ことがあれば、それをアピールすると当然ニュースになりやすくなります。

② “0”または“5”の数字
 5年目、10年目、25年目、50年目など、切りのよい数字は伝える相手にもわかりやすく、インパクトがあります。例えば、「今年で5周年を迎えた…」、「10年の歳月をかけて完成した…」、「あれから20年を経て…」など。

③ “最大”“最小”“突破” 
 「過去最大の」、「過去10年間で最小となった」、「2,000人突破」など、“最大”、“最多”、“最小”、“突破”などは、読む人の目を引きつけ、印象に残りやすい表現です。

 

その他の留意点

 このほかにも、環境配慮や社会的弱者(高齢者、身障者、子供たちなど)に関する情報はマスコミ受けします。例えば、「新工法により造成を行った結果、○○川に魚が戻ってきた」、「子供たちの安全を守るため、安全パトロールを実施」、「お年寄りの家を訪ね、屋根の雪かき」など。

 

人名、地名、施設名には「ルビ(ふりがな)」をふる

 人名や地名など、読みにくいものにはもちろん、そうでないものであっても必ずルビをふります。こちらから取材をお願いしてプレスリリースを行う以上、伝えたい内容を可能な限り優しく、分りやすく説明する必要があります。特に、テレビやラジオは活字ではなく音声なので、読み方には特に気を使いましょう。
 なお、地名については市町村合併などで、存在すると思っていた町がなくなっている場合などあるので、この点にも注意が必要です。

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プレスリリース(投げ込み)先、問い合わせ先の明記

 1枚目の下記にはプレスリリースを行う記者クラブと問い合わせ先、担当者を明記します。プレスリリース先の明記は、どこに発表したかを記者クラブにも分かるように配慮したもの。また、問い合わせ先の注意点としては、担当者の氏名を明記するとともに、誰でも読めそうな簡単な氏名であっても、必ずルビをふります。これも記者たちへの配慮です。

 

団体・企業のマーク(ロゴ)を付ける

 数あるプレスリリース資料の中から、このマークを見れば、どこの団体・企業が出した資料であるかすぐに分かるようにロゴマークをつけることも必要です。

 

一枚目

 

★2枚目

地図の添付

 取材をお願いするような場合、誰もがその場所を知っているとは限りません。そのため、2枚目には、必ず場所を示す地図を添付します。縮尺はその状況に応じて変りますが、最もわかりやすいと判断できるものを添付しましょう。

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《例》
<開催案内>
日 時:平成24年○月○日(○)
時 間:13:00〜15:00
場 所:東京都港区虎ノ門4-2-12
    虎ノ門4丁目MTビル2号室
電 話:03-5473-4572
交 通:地下鉄日比谷線神谷町駅
    (4a出口)より徒歩1分
     地下鉄銀座線虎ノ門
    (2番出口)より徒歩9分

 

★3枚目

概要文を説明するための資料

 3枚目には、関係する資料を添付します。これは、1枚目の概要文をさらに分かりやすく補足するためのものであり、文章以外の、写真や図版、グラフなどです。例えば、前年に開催したイベントの風景写真、統計資料、グラフ(線・円・棒)、難しい語句(専門用語)の解説。1枚目に「重力式ダム」と書いたら、「重力式ダムとは?」と用語の説明をします。当日カメラ撮影が可能であれば「当日撮影可」、提供できる写真があれば「写真提供します」などと記載します。

2枚目、3枚目

 


 

「実践広報塾」塾生のプレスリリース募集

 建設業界の協会、団体の皆さんを対象に、プレスリリースを募集します(メールでも郵送でも可)。集まったプレスリリースの中から毎月1点を選び、高崎先生が丁寧に添削いたします。添削の内容は、「しんこうWeb」上の実践広報塾で公開します。なお、応募されるプレスリリースは今後記者クラブへの投げ込みを予定するものに限り、新聞用だけでなくTV用でもOKです。注目度アップを目指して、奮ってご応募ください!

送付先 :(一財)建設業振興基金 プレスリリース診断係
〒105-0001東京都港区虎ノ門4丁目2番12号 虎ノ門4丁目MTビル2号館
E-Mail : itaoka@kensetsu-kikin.or.jp

 

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