広報

実践的!広報塾

有効なプレスリリース(投げ込み)の方法

【講師】作家・土木史研究家 高崎 哲郎 氏
1948年栃木県生まれ。NHK記者、帝京大学教授を経て、
土木研究所などの客員研究員や東京工業大学などの非常勤講師を務める。

プレスリリース(PRESS RELEASE)とは、行政機関や民間企業などから報道機関向けに発表された声明や資料のことです。多くの人たちにお知らせしたいことをプレスリリースにして発信することは大変重要なことですが、問題は、そのやり方によってマスコミの取り上げ方に大きな差が出ること。そこで、しんこうWebでは、全5回シリーズで、「積極広報に向けた、正しいプレスリリースの作り方」を特集します。第2回目は、投げ込むタイミングと記事の構造を紹介します。

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①記者クラブでのルール

記事になるのは、新しい情報のみ
 日本には約800の記者クラブがあるといわれています。中央省庁から国会、各政党を初め、企業、業界団体、地方自治体の役場などに置かれて、それぞれに独自のルールや決め事があるため、プレスリリース(投げ込み)を行う場合は、それぞれのルールや決め事に従わなければなりません。
 その中で、大前提となる原則は、発表する情報は未発表のものである、ということです。たとえ前日であっても、一度出たものは扱われないと考えていいでしょう。既に表に出された情報は価値が下がります。記事として紹介されるには、より新鮮で国民的関心の高い情報を提供することが必要になります。

 

②プレスリリースの時期

直前はNG、よくタイミングを計って
 投げ込みのタイミングは、よほど緊急性の高いものは別として、ある程度事前に予想できるものや、事前に分かっているイベントなどは、1週間前までにプレスリリースをします。1週間ほど期間があるとマスコミはスケジュールが組みやすいのです。
 次に、どのような取り上げ方をしてもらいたいかによって、プレスリリースのタイミングが異なる点にも注意が必要です。例えば、毎年定期的に行っているイベントであれば、プレスリリースは15日前くらいでもいいでしょう。不確定要素があり、変更する可能性がある情報については、発表をギリギリまで待つなど、タイミングを失わないようにしましょう。
 一例として、「きれいになった川に魚が戻ってきた。その情報を伝えたいが、記者発表当日はあいにく天候が悪く、魚が一匹も見られない」……そんな状況はできるだけ避けたいもの。長期予想などで天気のよさそうな日を選ぶなどの配慮が必要です。悪天候に備えて、事前に魚の泳ぐ姿を映像に収めておくとよい。

 

 

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 地元に根付く産業である建設業の場合、プレスリリースを行うに際して一番重視すべき点は、地元の新聞社(地方紙)及び地方放送局です。地方紙と全国紙にはそれぞれの役割がありますが、建設業の活動が地方紙に注目され、掲載されるための努力が必要です。また、広報活動を行う上で、企業が発表した情報をメディアが実際にどのように取り上げたのか、それを評価し、次につなげることも大切です。次につなげるためには、新聞記事の構造を知っておく必要があります。

①新聞の構造

構造は3段構え 「見出し」→「リード」→「本文」
 新聞は、原則として3段構えになっています。この手法は、もともとアメリカが行っていたものを、戦後になって日本も取り入れたものと言われています。
 大きな記事の場合、見出しの次に「リード」という文章が入ります。普通の文章と違うのがこの「リード」といわれる部分です。リード」を受けた「本文は」重要なものを先に書き、重要なものを先に書き、あまり重要ではないものを後回しにするという、逆三角形のような構造です。読者に記事への理解を深めさせるためにも「リード」は大変重要になります。

見出し 関心を抱かせる言葉で
リード 本文を要約したもの
本 文 最も伝えたい事柄をはじめに、さらに関心を持った人がより詳細な情報を求めて読み進める。重要な物でないものは後で補足的に紹介する。「見出し」は記事の内容を要約して「関心を抱かせる」ようにするが、さらに詳しく伝えるために見出しを膨らませた内容を「リード」にして本文に入る。

 

<例文>
交通事故の記事の場合は、見出しに「交通事故で一人死亡」、続いて「○○市内の交差点で乗用車同士が衝突し、車を運転していた大学生が死亡」、この後に「昨夜未明、□□県○○市△△の××交差点で…」と本文がはじまる。

 

記事の評価

使われた段数で評価
 新聞記事の価値判断は、明白です。その記事が、「何段記事で扱わられたか」です。見出しに準ずる段数が5段であれば5段記事となります。一般的に3段以上で扱われた場合は、新聞社が重要に考え、大きく扱っていると考えていいでしょう。1段記事は通称「ベタ記事」と呼ばれています。段の数が多いほど評価が高いと判断できます。

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 失敗や事故(自社に非があった場合)が発生した後に、マスコミに対してどのように対応していくか、その時に備えて訓練をしておくことが必要です。そのための例としてメディア・ゲームを紹介しましょう。メディア・ゲームは、アメリカの大手石油会社が起こした大型タンカー座礁事故による原油流出事故の際に、これからのマスコミ対応に向けて幹部が受けた研修で配布されたものです。

メディア・ゲーム“The Rules of Media Games”
記者会見でマスコミに対処する方法

1. Tell the truth.

 とにかく本当のことを言うこと。これに尽きる。

2. Listen to the question.

 質問に対して真摯に耳を傾ける。「この記者は何を聞こうとしているのだろう?」と、内容をよく読み込むことが重要である。

3. Know your audience.

 自分の視聴者・観ている人を知ること。
 記者会見はテレビやインターネットを通じて日本、全世界に流れている。組織の長がどっしりと構えて対処する度胸が必要だ。

4.Answer directly.

 すぐ答えられるように用意を怠らない。すぐに答えないと、躊躇しているような印象が残るので、迅速性が求められる。

5.Stick to your objectives.

 発言趣旨をきちんとおさえてぶれないように。自分がなぜ記者会見をしようとしているのか、どういう戦略のために記者会見をやっているのかということを忘れないようにする。

6.Anticipate question.

 質問をよく読み込め。想定される質問と、その質問の答えを考えておく(想定問答)。

7.If  you don’t know, Say so.

 もし知らなければ、知らないという。質問に対して知らなければ、率直に「知りません」「わかりません」と答える。

8.Headline your answer.

 見出しになるような簡潔明瞭な答えを心掛ける。積極的に回答しているという印象を記者に与える。

9.Protect the record.

 記者会見で準備した資料を紛失しないこと。記者に出しては行けない資料が外部に出たりしないように資料を保護する。

10. Maintain control

 記者会見が円滑に進むように、組織や個人が役割を自覚する。記者会見中は慌てた態度を見せず、組織としての統制を維持する。

11.Avoid arguments.

 議論は避ける。記者会見は15〜20分で終わらせる。記者会見をダラダラと長くしない。

12.Use personal examples.

 個人的に経験したことをまじえながら、具体的に説明するとリアリティーが広がる。

13.Never say “No comments”.

 「わかりません」「知りません」「言えません」を延々と言わない。それらの言葉を何回も使うとその組織の信憑性がなくなる。

14.Nothing is “Off the record”.

 「オフレコ」という表現は大変重要な情報とみなされるので、いかなる場合も使わない。オフレコと決断をしたならば、絶対に言わないこと。


 

「実践広報塾」塾生のプレスリリース募集

 建設業界の協会、団体の皆さんを対象に、プレスリリースを募集します(メールでも郵送でも可)。集まったプレスリリースの中から毎月1点を選び、高崎先生が丁寧に添削いたします。添削の内容は、「しんこうWeb」上の実践広報塾で公開します。なお、応募されるプレスリリースは今後記者クラブへの投げ込みを予定するものに限り、新聞用だけでなくTV用でもOKです。注目度アップを目指して、奮ってご応募ください!

送付先 :(一財)建設業振興基金 プレスリリース診断係
〒105-0001東京都港区虎ノ門4丁目2番12号 虎ノ門4丁目MTビル2号館
E-Mail : itaoka@kensetsu-kikin.or.jp

 

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