どか弁とは、もともと土木作業員の俗称『土方(どかた)』+『弁当』から成る合成語とされ、後に「どか弁」と略されるようになったと言われている。現在ではさすがに見ることも少なくなったが、戦後の建設現場では、激しい肉体労働による空腹を満たすため、大きめの金属製(アルミ製)の弁当箱に白米を一杯にしき詰め、おかずは梅干ひとつを弁当の中央に入れた「日の丸弁当」が主流であった。しかし、金属製は梅干の酸で腐食してしまうことから、後にプラスチック製へとシフトしていった。ここまでは昭和の話である。
では、平成の「どか弁」はどうだろう。東京都でとび工事業の大手(株)鈴木組にご協力いただき、建設現場のお弁当事情について取材をした。
コンビニや飲食店で昼食を済ませる人も多いのだが、最近の大型現場では売店があり、ワンコイン(500円)で弁当とみそ汁を買うことができる。売店にはカップ麺お菓子、お茶や缶コーヒーなど品揃えも豊富。また現場によっては仕出し弁当が支給される。いずれも現場から出ることなく手早く昼食を済ませ、昼寝に時間を充てられるのだ。
では、手作り弁当はというと、残念なことに昔ほど多くはないという。現場の朝は早く、毎日お弁当を作るには相当な覚悟と愛情が必要である。また共働き夫婦が増えた事や、外食の低価格化も影響していると考える。もっとも、戦後の現場と大きく変わったことと言えば、重機や技術の発展により、激しい労働は少なくなり、それほど〝量〟を重視しなくなっていることだ。朝しっかりと食べる以外に、10時と3時の休憩におやつを食べ、5〜6時には仕事が終わるため夕飯もそれほど遅くはならない。一度にもの凄い量を食べていると思われがちではあるが、意外とスタイリッシュな食生活である。そこで編集部では平成の「どか弁」について定義をしてみた。
夫婦共働きという中村さん。毎日のお弁当は、前日の夜に奥様がおかずを作り弁当箱へ入れ、中村さんは仕事へ行く前に炊きたてのご飯だけを詰めて出発する。ご飯の量はコンディションにより調整する。結婚して10年、「毎日遅くに大変だと思う、ありがとう」と奥様への思いを語る。現代における共働き夫婦の〝理想的なカタチ〟かもしれない。
須藤さんは、奥様に毎日、特大おにぎりと、お弁当を作ってもらうとか。朝5時には出発するため、朝食は現場でおにぎりを食べる(奥様には内緒で時々カップラーメンも追加される)。魔法瓶タイプの弁当箱は、寒い冬でも温かく気に入っている。お弁当の感想は正直に伝えている。いろいろとチャレンジしてくれるという奥様に「毎日ありがとう」と感謝の気持ちを忘れない。
毎日、出発する時間がバラバラの中村さんは、早い日は朝5時に出発する。毎日の朝食とお弁当の準備のため、奥様への連絡は欠かせない。魔法瓶タイプの弁当箱は、お茶碗2〜3杯分のご飯が入り満足している。また夏の建設現場は水分・塩分補給が重要で、お味噌汁は必須になってくるとか。「お弁当があるから頑張れます」と、まさにお弁当パワーである。