サブカルチャー

建設業 × ART

 建設業界で働く職人やアーティストの手によって、日ごろ何気なく使われている素材たちが日々、新たにART作品として生まれ変わっています。インパクト抜群、目にも美しい<建設ART>を、広報活動に活かしてみてはどうでしょう。

 
左:「大龍王」2014年9月制作。高さ約170cm、重さ約120kg、長さ15cmの鉄筋約1,600本が使われた超大作。龍の鱗を表現するため、鉄筋を短く切り曲げ、何本も何本も溶接を重ねた迫力満点の技術の集大成だ
 
ART × 鉄筋

ー 鉄筋と、あそぶ。
  D-ART(㈱成島鐡筋工業)



 

 D -ART(ディー・アート)は、鉄筋工事で出たスクラップを使い、ゴジラやキングギドラなどの巨大アート作品を制作するプロジェクト。静岡県藤枝市にある㈱成島鐵筋工業※がプロジェクトを手掛け、現在静岡県内を中心にTV番組や新聞記事で紹介されるなど、にわかに注目を集めている。
 作品の制作は、同社で30年以上のキャリアを誇る職人で、現在鉄筋アーティストとしても活躍する戸塚昌利さんが担当。こだわりは、真っ直ぐの鉄筋は使わず、少しでも曲げて使用すること。鉄筋の微妙な曲がりやデコボコは、筋肉を表現するのに適していると、制作しながら気付いたという。
 「建築物の中で、鉄筋はあまり見かけることがないかもしれないけど、こういうことで会社や鉄筋業界のアピールにもなったら良い。子供たちに楽しんで見てもらいたいね。自分の個展なんかできたら最高だね」(戸塚さん)

※1958年創業。藤枝市を中心に、床板・橋脚・橋台等の土木鉄筋、マンション建築工事、建築鉄筋、木造の住宅基礎の仕事を引き受けている
  作品のレンタル有。イベントや撮影などに利用可

 
平面的かつ立体的。何とも不思議な作品の数々。「線の太さで遠近感を演出した」という。そのノウハウは浮世絵から学んだ。「5~7種類の鉄筋を使い分ける。見る人が省略した線の続きを想像できるように、終わりを細くしたり、跳ねさせたりしている」(徳持さん)
右:地元鳥取砂丘にて。美しい夕焼けに出合って以来、作品の背景として好んで使っている
 
 
ART × 鉄筋

ー 鉄筋彫刻家 徳持 耕一郎


 

 プレイ中のジャズメンの残像を一瞬止めて----今にも音色が響き渡りそうなこの作品は、鉄筋彫刻家として国内外で高い評価を得る徳持耕一郎さんが制作したワイヤー・アートだ。
 版画家として芸術活動を始めた徳持さんは、1989年ニューヨークで個展を開催。そこで観たジャズライブに衝撃を受け、即興的に紙ナプキンにスケッチをしたことが今日の作品づくりのきっかけという。
 もとになるスケッチは、奏者の目まぐるしい動きを脳裏に焼き付けて、描きとめる。そのため線が省略されているのが特徴で、見る人の想像で補完されて初めて作品が完結する。溶接のやり方は、工業高校の教師をしていた父親から教わった。父の作業場や道具が、今は工房になっている。
 「鉄筋に触れた瞬間、作家から職人に切り替わるんだ。今は針金や他の素材も使って線の表現を追求しているけど、最終的には線だけで僕の作品だと分かるところまでいけたらいい」(徳持さん)

 
左:口の硬い奴等シリーズ「三人岩女」
自店2階に構えるギャラリー「自遊石」に常設。1点当たりの制作期間は1カ月ほど。リアリティの追求より「石だけど石に見えない」ニュアンスを大事にするため、ある程度ざっくり完成させるという。「特に石ころを使った作品は、いかにいじらないで成立させるかがテーマ」(伊藤さん)
 
ART × 石工

ー 石工アーティスト
  伊藤 博敏



 

 「石なのに石じゃない」。むき出しの歯がシュールな石ころ、ふっくら柔らかなセーター。異質の手触りと独特のユーモアで世界を驚かせるのは、石工アーティストの伊藤博敏さん。
 伊藤さんは、松本城築城にも携わった高遠石工の流れを汲む㈲伊藤石材店の社長。墓石や彫刻の傍ら、創作活動を展開している。
 作品の特徴は、異素材との巧みな融合。代表作はファスナー付きのモチーフ。「石ころもファスナーも日常のものだけど、掛け合わせで『非日常』が生まれる。絵画ではダリがそれを表現したけど、立体作品ではあまり見かけない。だから追及してみたいのかもしれない」(伊藤さん)
 洋服や食べ物の作品で「衣」と「食」は表現した。次は「住」を表現してみたい。「ヨーロッパでは壁に石が使われるけど、日本の生活空間の中ではあまり使われない。日本家屋は、室内のものは片付けられることが前提。そういう暮らしの文化の中で、石をどう活かしていくかを考えていきたい」(伊藤さん)

 

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