基金の活動

平成23年度CI-NET/C-CADECシンポジウム 第22回

(一財)建設業振興基金 建設産業情報化推進センター

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平成24年2月24日(金)にニッショーホール(東京都港区)にてCI-NET /C-CADEC シンポジウムを開催しました。CI-NET に関しては、中堅・地方の総合工事業者の導入検討に役立つように、電子商取引に対する国土交通省の取り組みや先行企業による導入・活用事例を紹介しました。C-CADEC に関しては、建設の設計から施工、維持管理まで活用が広がりつつあるBIMについて各方面の取り組み、普及状況、今後等についてパネルディスカッションを行いました。 なお、シンポジウムの講演のビデオおよび資料は建設産業情報化推進センターのホームページに掲載します。

CI-NETシンポジウム講演ビデオ
C-CADECシンポジウム講演ビデオ

5.講演3 「『オレ流』からの脱皮と飛躍的成長」

弁護士 牧野二郎氏

 本日は、日本の非常に伝統的なものづくりの社会から徐々に変わっていかなければいけない、ものづくりの精神は残しながらも、そのシステムを少しずつ変えていかないといけない時代になってきたというところをとらえてみたいと思います。
 地震でも津波でも十分に守られる仕組みを作らなければいけないのです。地震があったら責任はないと思ったら大きな間違いです。どのような安全設計、基準、施工かをきちんと説明できない企業は、あるいは建築をした人は、責任が大きく問われるという問題が明らかになってきています。
我が国全体に支配している部分だろうと思いますが、建築のものづくりにもその場の収まりといった現場対処主義がDNAとして継承されています。きちんと仕事をしてその場を収めようとどんなに部分最適でやっても、後日点検したときに記録は責任者の頭の中に存在するのみで最終図面がない、トレースできないでは責任を果たせないのです。それは修繕もできなければ、改良もできないし、改築もできないということです。
 どうすればいいのでしょう。
 「オレ流から、標準化へ」です。標準化とは、皆が共有できるようにすることで、単に契約書を電子化するというものではありません。オレ流に現場で適宜やらずに伝承可能な形でエッセンスを明確にした上で最初でも実践段階でも電子化して記録していくことが必要です。

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 例えば契約書を考えてみますと、契約書が締結されて確定と思われているでしょうが、現実は作業を始めると変更が生じたりして契約の状態は変わっていきます。問題点は二つで、一つは、契約は動くものだという前提で、動いていく様子をコントロールする必要があります。二つ目は、その変化をそのままの形でよいのでカメラOK、メールOK、全部記録することです。つまり、契約を実践し、全体をマネジメントし、各証拠を全部記録すれば、法的には守られるし、問題になることもないのです。そして、修繕にも改良にも改築にも建築主が不信感を抱かないきちんと対応できることになるのです。
 もう一つ標準化するとどうなるのでしょう。ごまかしにくくなり、トレーサビリティーや透明性を確保しやすくなり、ブラックボックスがなくなります。点検、検査、あるいは検証などがよくできるようになり内部統制が実現します、信頼性が向上します。時代は価格競争から品質競争になってきています。
 こんな時代に皆様の会社はどうしますか。
 建設産業において技能継承ができる標準化を進めていただきたい。そのための最適解は、電子契約、電子化を進めることです。是非推進していただきたいと願います。

6. パネルディスカッション「これからどうなる?日本のBIM2」

BIM3の取り組み状況は

 組織設計事務所では、意匠設計・構造設計・設備設計、それぞれデータの連携をする方法は模索中です。構造設計では解析をいかにBIMに持っていくかの研究を今まさにやっているところです。意匠設計では、外壁断熱性能に関するPAL計算や日影計算との連携ができるように、また設備設計ではIFC でやりとりができるようにと考えており、温熱や光音響の環境シミュレーションができるようにしたいと思っています。
 設備設計の立場では、設備設計の上流部分で建物としての設備系効率を考えるための道具立てがなく、また設計者の考えをコンピュータサポートしてないと感じます。現状は、設計そのものをバーチャルな状態で計算できるようになって、ようやくシステム性能を担保できているかの疑問が検討される状態で、設備設計でのBIMの利用は時間かかると思われます。

BIMの利用には

 CADと比べるとBIMの部品は非常に複雑で形状以外に多くの属性、条件判断をする機能を持たせることができます。しかし標準的なフォーマットが整備されていないため、データを他のアプリケーションに持っていくとその情報が失われてしまいます。また、設計の初期段階では「ありよう」を考えるフェーズがあり、それを「やりよう」に変えなければなりませんが、そこでは記号から実態に変える作業が発生します。現状のBIMソフトはそこが不十分なため、労力を要しており、現時点の大きな問題だと思います。  現業でBIM対応していて、「道具が変われば仕事のやり方が変わる」を感じます。鉄骨関係の事例で説明しますと、構造計算ソフトから直接、鉄骨のメンバーや材質が3Dに出すことが可能になり、鉄骨製作加工業者は手入力でやっていた仕事を簡略化できる、ゼネコンではチェックする手間を減らすことができます。バーチャルにパソコンの中で組立てて見られて、ることで、作業所での大きな手戻りもなくせます。つまり設計段階での確認の省力化、製作段階の省力化、作業所での手戻り防止、数量の透明化などのように、BIM対応することで、これまでの仕事の進め方が大きく変わっていく予感がします。  建築生産システムを考えると、現場作業をどうやって減らすかということは大きな課題です。その解決の一つは現業ではユニット化だと思います。BIMと生産システムのどちらのニーズが先か分かりませんが、トータルに考えて建築生産システムの見直しをあわせてやらないといけないと思います。  日本の社会のあり方があって、その上に商慣行や法制度などがあり、最終的に発注方式等の仕組みが決まってくるものだと思います。BIM利用に関しても建築生産システムに携わる一人一人が少しずつ変わっていけば、大きな全体の流れになると、考えます。

BIM(ビ-アイエム:Building Information Modeling):
建物の3次元情報モデルを、建設プロジェクトに携わる建築主や設計・施工・設備関係者等が共有し、生産プロセスに活用する手法またはそのモデル情報のこと。
IFC(アイエフシー:Industry Foundation Classes):
建築分野で利用するソフトウェアの相互運用を目的とした仕様。IAIが仕様策定と普及活動に取り組んでおり、活用検討が進められている。
IAI(アイエーアイ:International Alliance for Interoperability):
世界に13の国際支部があり、建築分野で利用するソフトウェアの相互運用を目的としたIFC仕様の策定と活用普及に向けた活動に取り組んでいる団体。


最後に

 社会、法整備、国の施策などもみんなが何とかならないかと叫び始めて、変わっていくもので、近いうちにそのときが来ると思います。例えば、少し前にはなかったレーザーカッターなどを備えた研究室を持っている建築学科が出てきつつあり、学校も時代を先取りして変わってきている気がします。BIMという道具が建築生産に係わる社会システムを変えるのではなく、その道具を使うそれぞれの組織が変貌を遂げることによって、社会システムが変わるのではないかと期待します。

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