平成24年2月24日(金)にニッショーホール(東京都港区)にてCI-NET /C-CADEC シンポジウムを開催しました。CI-NET に関しては、中堅・地方の総合工事業者の導入検討に役立つように、電子商取引に対する国土交通省の取り組みや先行企業による導入・活用事例を紹介しました。C-CADEC に関しては、建設の設計から施工、維持管理まで活用が広がりつつあるBIMについて各方面の取り組み、普及状況、今後等についてパネルディスカッションを行いました。 なお、シンポジウムの講演のビデオおよび資料は建設産業情報化推進センターのホームページに掲載します。
CI-NETシンポジウム講演ビデオ
C-CADECシンポジウム講演ビデオ
1.プログラム
■来賓挨拶 建設産業の現状と今後の課題
国土交通省建設流通政策審議官 佐々木 基氏
■講演1 国土交通省における電子商取引への取り組みについて
国土交通省土地・建設産業局建設市場整備課企画専門官 新宅 幸夫氏
■講演2 建設業における法令遵守への取り組みについて
国土交通省土地・建設産業局建設業課課長補佐 仲嶋 幹雄氏
■講演3 「オレ流」からの脱皮と飛躍的成長 弁護士 牧野 二郎氏
■報告 電子商取引の導入・運用事例の紹介
事例1:株式会社土屋ホールディングス
事例2:株式会社ミルックス
事例3:五洋建設株式会社
■パネルディスカッション 「これからどうなる?日本のBIM 2」
○コーディネータ
C-CADEC運営委員長、IAI日本代表理事(CIラボ) 山下 純一氏
○パネリスト
国土交通省 大臣官房官庁営繕部 整備課施設評価室 室長 小黒 賢一氏
C-CADEC建築EC推進委員長 (CIラボ) 岡 正樹氏
日建設計 設計部門設計部 部長 奥山 隆平氏
高砂熱学工業 技術本部生産技術部 担当部長 今野 一富氏
梓設計 情報システム部 部長 柴峯 一廣氏
竹中工務店 東京本店 設計部プロダクト設計部門 課長 森 元一氏
CI-NET(シーアイネット:Construction Industry NETwork)
建設産業全体の生産性向上を図るため、建設生産に関わる様々な企業間の情報をネットワークを利用して交換するための仕組み。
C-CADEC(シーキャデック:Construction-CAD and Electronic Commerce Council)
建設産業の設計や製造にかかる情報を効果的に共有したり、活用したりすることを目的として、これら情報の標準化および普及のための活動組織。
2.来賓挨拶 「建設産業の現状と今後の課題」
国土交通省建設流通政策審議官 佐々木 基氏
建設産業をとりまく状況
建設産業をとりまく状況は非常に厳しく、建設投資額は大幅に減少しており、平成4年のピーク時と比べ、半分程度となっています。そうした状況の中、それに見合う形で人や機械を減らしていくことにより、企業が零細化し、利益率が下がるといった悪循環に陥っています。その結果として、地域のインフラ設備もなかなか維持できないという状況になっています。
しかしながら、平成24年度の公共事業予算においては、復旧・復興予算を含め、5.5兆円、また5年間の復旧・復興対策の予算規模は、19兆円程度ということで決定しており、建設投資額の減少については、下げ止まりといった状況になっています。
復旧・復興事業における課題への取り組み
被災地で円滑な復興事業を行うためには、技術者・技能者の不足や労務費や資材費の高騰といった状況の中で、どう対処していくかが大きな課題です。本日は、代表的な施策を2つご紹介させていただきます。
1つ目は、復興JV制度の創設です。復興事業は、地元の建設業の方々が中心となって実施していますが、仕事量が非常に多く、地元企業だけでは復興ができません。そこで、現場に詳しい地元企業の方がリードしつつ、被災地以外の企業の方と協力して頂くとともに、必要な技術者はその地域以外の企業の方からも支援をいただくといった新たな制度として、復興JVを創設しようと考えています。
2つ目は、労務単価の適切な設定です。非常時における労務単価の上昇が著しい状況では、市場に見合った単価を設定しなければなりませんが、現在、実施している年1回の詳細な調査では実態を捕捉できないと認識しています。したがって、今回、被災地については、簡便な方法により新しい単価を設定いたしました。現在、被災地の周辺についても調査中ですが、今後、急激な上昇があれば、それに対応できるような体制にしたいと思っております。今後、首都圏の直下型地震や東海・東南海地震などにより、かなりの確率で大災害に見舞われる可能性があります。それらに対応するためにはこれらの取組が有効だろうと思っています。
大震災以後の情勢の変化について
大震災を受けて、大きく変わっていくだろうと考えていることの中で、2点ご紹介します。
1点目が耐震についてです。日本の耐震技術は非常に高いのですが、古い建物等は依然として耐震化を行っておらず、今後、耐震化への関心が高まると考えています。よって、耐震化に関して、大きな需要が生まれるのではないかと考えています。
2点目がエネルギーの関係です。今後は、省エネ、節電を意識した上で、建物、町、あるいは地域のあり方を考えながら更新していかなければならず、これに伴い、省エネや節電、新エネルギーの開発についても拍車がかかってくるのではないかと考えています。
最後に
日本は諸外国に比べ、これまで様々な災害に見舞われてきた国であり、災害に耐え得るだけのインフラをつくり上げてきた世界に誇るべき技術力があります。今後、アジアなどのインフラ投資見通しなども考慮した上で、海外展開を重視していくべきだと考えています。今回の東日本大震災は悲劇的で不幸な大震災でしたが、多くの方々の犠牲を無駄にせず、これを機に新たな成長を遂げていくことを考えるべきではないかと思っています。引き続き、皆様方にはさらなるご支援をお願いしたいと存じます。