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フロンティア事業報告会

フロンティア事業報告会

 国土交通省と当基金は、2月21日、東京・品川において「新事業展開支援セミナー2013」を開催した。今回のセミナーには、「建設企業の連携によるフロンティア事業」で優れた成果を収めた地域建設業の経営者らが全国各地から集結し、新事業に取り組む上での苦労話や事業展開の方向性などを報告した。本稿では、セミナーで発表した6連携体について、その概要を紹介する。

企業1


事業名:佐渡キッチンプロジェクト
連携体名:(株)廣瀬組、遠藤建設(株)

水揚げした魚介類を直後に加工調理

 

 新潟県佐渡市の水津漁港で水揚げされた魚介類を、素早く現地の工場で加工調理し、「佐渡キッチン」ブランドで全国販売する仕組みを構築したのが、「佐渡キッチンプロジェクト」である。本事業は、国交省による「建設業と地域の元気回復助成事業」(2009年)からプロジェクトを開始し、漁協の台所を借りて商品開発と販売を行ってきた経緯がある。フロンティア事業では、元気回復助成事業に参画していた廣瀬組と遠藤建設が取り組みを継続し、生産力や販売網の強化を図った。
 もともと佐渡で獲れる魚介類は少量多品種で流通には乗せにくい。また、佐渡のような離島では、鮮魚の運搬に時間とコストがかかるため販売価格が高くなる。そこで、魚の旨みを逃がさず、産地で新鮮なうちに加工調理する方法を思いついた。佐渡島内で魚の頭や内臓などを除去して可食部分だけにして、付加価値が高く保存性のある加工商品にするのだ。その商品群は、ブイヤベース、パスタソース、シーフードのオリーブオイル漬、ペーストなど。コンセプトは、「獲った魚介類を新鮮なうちに漁港内の工場で調理」「人工的な調味料は一切使わない」「最新の真空低温調理法を採用」の3つ。
 認知度向上と販売促進策では昨年、東京の三越と伊勢丹、2つの百貨店にターゲットを絞りプロモーションを展開。両百貨店限定の商品を開発し、好評を得たようだ。今後は常設販売と同時にWeb上での通販にも力を入れていく意向という。


 


企業2

事業名:太陽光パネルの屋根取付設置工法と技術営業を結ぶ事業戦略の展開
連携体名:ルーフ・エナジー・ソリューション(北海道)
(株)Mr.ルーフマン、(有)佐藤板金工業、(株)イー・ナック

北海道での太陽光パネル普及に向けて寒冷地用の工法を担う技術者を育成

 

 特許庁に実用新案を登録済みの「太陽光発電等の屋根への取付構造」にかかわる設置工法を用いて技術向上と技術営業の導入を徹底させ、設置工事のコストダウンを図っていこうというのが、本事業の狙いである。
 北海道で住宅用太陽光発電システムの普及が進まない理由の一つに、寒冷地用対策の技術が確立されていない状況があった。そこで2011年度は人材育成と販売力強化を行い、従業員を対象に太陽光発電が身近な技術で今後の中心事業であることを徹底。今後とも、太陽光専門技術者の講習会などを開催し、さらなる人材育成に注力していく計画だ。


企業3

事業名:地域資源(主として間伐材)を有効利用した商品、工法開発
連携体名:地域資源利用協議会(和歌山県)
[(有)クスベ産業、(有)石垣組、清水森林組合]

間伐材を利用し、山の自然復元を促す地盤補強工法の開発

 

 森林保全活動において間伐材の有効利用は急務である。本事業では土木工事への利用を促進するため自然復元をテーマに3つの技術開発・工法検討を行った。①間伐材を井桁状にユニット化し、護岸工、盛土補強工等でのスピーディで柔軟な施工を可能とした「間伐材二重井桁枠工」、②法面に間伐材を数珠状に配置し鉄筋挿入工を併用することで緑化だけでなく表層崩壊防止効果を高めた「ウッド筋工+鉄筋挿入工」、③リサイクル材を混合し固化技術を改善した「リサイクル土固化吹付工」。新工法によりCO2削減・地産地消・雇用創出を目指している。


企業4

事業名:タブレット端末を用いた「提案型森林施業プラン作成システム」普及プロジェクト
連携体名:郡上地域森づくり協議会(岐阜県)
[穂積建設(株)、(株)前田建設、(株)ウスダ、(株)ヤマシタ工務店、西脇建設(株)、奥美濃建設(株)、郡上森林組合]

「提案営業」を促すアプリケーション森林経営を

 

 林業という業態においては作業の集約化が欠かせないものになっているが、これまで事業地の確保が最大の課題といわれてきた。適地があったとしても、不動産所有者の説得、並びにその資料作成に苦労するケースが少なくなかった。この解決策として、林業分野では初となるタブレット型端末による提案型施業アプリケーションを開発した。同ツールは、説明資料、営業ビラ、営業用DVD(7分版)、研修用DVD(25分版)で構成。試験運用として行政や森林組、林建協働組織に配布し、今後は全国の森林組合・林業事業体への販売を目指している。


企業5

事業名:エネルギーの地産地消で地域を元気にするプロジェクト
連携体:地域エネルギー活用 電気乗合自動車普及協議会(富山県)
[大高建設(株)、丸新志鷹建設(株)、川端鐵工(株)]

再生エネルギーで地域を元気に!電気乗合自動車を活用した地域活性化作戦

 

 地域エネルギー資源である小河川や砂防ダムを活用した小水力発電施設を設置。発電した電力を電気乗合自動車(EMU)で活用し、疲弊する地域公共交通を支えるとともに地域活性化を促す事業である。主な概要は、①小水力発電施設の詳細設計及び許可申請、②EMUのオンデマンド運行、③ゼンマイ式小水力発電による土砂災害監視装置の開発、④EMUの販売実績と再生可能エネルギー施設の受注、⑤地熱利用のエネルギー事業の研究・調査、⑥電気乗合自動車リース事業の事業化の6つ。黒部峡谷の玄関口、宇奈月温泉街でEMUの実証運行を行う。


企業6

事業名:高反射塗料による輸送中のコンクリート温度上昇抑制の試験と全国販売
連携体名:暑中コンクリート対策普及連携体(宮崎県)
[(株)宮防、坂口建設(株)]

「生コン車水冷システム」を確立させ、システム販売の全国展開を目指す

 

 高温による生コンクリートの品質劣化は業界内の積年の課題であり、特に近年は地球温暖化の影響もあり、夏季の暑中生コン対策の確立が求められていた。本事業は、生コン車ドラムに遮熱塗装を施し、コンクリート温度の上昇、並びに性状経時変化を抑制させる「生コン車水冷システム」を確立させ、全国展開を目指そうという取り組みである。2011年と12年の夏場に8回の生コン温度・性状試験を実施し、生コンの練り上がりから90分後までの30分ごとの各過程での表面温度、生コン温度、スランプの状態を確認・データ化している。

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