中小・中堅建設企業の資金繰りを支援
「下請セーフティネット債務保証」「地域建設業経営強化融資制度」
活用事例 1
有限会社 茂山工務店〈東京都江戸川区〉
簡易かつ迅速な資金調達が可能な制度を利用することで
下請企業や資材業者とともに円滑な工事を遂行
制度を活用した水道工事現場
「大切にしてきた社員、下請会社の技術力を生かし、今後も新たな分野を恐れず開拓していきたい」と話す茂山麗偉子社長
----茂山工務店について。
当社は、平成26年に創業50周年を迎えました。当初は社名の通り、民間工事が主でしたが、近年は公共工事(道路、上水道、下水道など)を多数請け負っています。私は平成14年に、2代目であった主人の逝去に伴い社長に就任いたしました。「何も知らないところから、何でもやってみようという精神」で仕事に取り組み、次々と事業を拡大してきました。
今まで手掛けてきた仕事を減らすのも頼まれた仕事を断るのも嫌なのです。何事も人を大切にして頑張っていけば、いずれ道が開けます。その結果、さまざまな業務を手掛けられるようになり、技術技能を持った社員も、関係する下請会社も増えてきました。
----下請セーフティネット債務保証等の活用をお考えになられたきっかけをお聞かせください。
下請企業や資材業者に支払いに関する不安を与えず、安心して技術を発揮できる環境を用意することで強い信頼関係を築いてきました。その際に、建設業の動きに精通している融資事業者(組合等)から制度について説明を受け、制度の特徴である「簡易かつ迅速な資金調達」は当社にマッチすると判断し、制度を利用しています。また、公共工事では工期延長や契約変更が発生し、資金調達のタイミングも大きく変わりますので、そうした事態が発生したときも、この制度の利用はさらに効果的だと思います。
----制度についてのお考えをお聞かせください。
資金調達が計画的にできれば、工事に専念できます。
「国の制度」「建設業振興基金の債務保証」といった安心が担保され、融資手続きに精通した融資事業者(組合等)による融資タイミングを理解した簡易かつ迅速な手続きがメリットの本制度を恒久的に維持してほしいです。
災害からの復旧作業で制度を活用
「下請セーフティネット債務保証」「地域建設業経営強化融資制度」
活用事例 2
地震、豪雨等の大規模災害からの復旧工事においても、「下請セーフティネット債務保証」「地域建設業経営強化融資制度」は有効的に利用されています。
災害復旧工事は、一刻も早い作業が求められるなど、通常工事よりも、複雑な状況下で行われることが多々あり、工期の延長、契約金額の変更も多く見られます。このような突発的に資金が必要となるケースにおいても、簡易かつ迅速な転貸融資を受けられるのが、本制度のメリットです。
被災地において、災害復旧工事で本制度を活用された4つの企業にお話を伺いました。
----未曾有の大災害であった、東日本大震災の復旧工事で本制度を活用いただきましたが、利用されての感想をお聞かせください。
A社 災害復旧というスピードが求められる工事であり、かつ請負金額も大きかったため、この制度を活用しました。契約変更が何度も続きましたが、同一工事でも複数回利用できる点も大変助かります。
B社 住宅地での工事であったことから、近隣住民に配慮した工事進行が求められ、工期も延びました。
工期の延長により、想定外のタイミングで資金調達が必要となりましたが、資金調達が早急に行え、安心して工事に専念できるなど、制度のメリットを最大限活用しています。
----台風による集中豪雨被害からの復旧工事で本制度を活用いただきましたが、利用されての感想をお聞かせください
C社 何回も制度を利用しておりましたので、工事出来高に応じてすぐに資金化でき、下請建設業者等に対する支払いが滞りなく行えるので、安心感があります。集中豪雨被害の時は、通常の工事を何件か抱えており、資金面でタイトでした。しかし、地元のために一刻も早く復旧工事を行うことが業界の使命と感じており、本制度の活用を前提に工事を受注しました。
D社 資金調達ルートは多様化しておく必要があります。本制度の利用はいろいろな資金調達手段の一つであると認識しています。
災害復旧工事でも通常工事の現場と同様に出来高を適切に評価していただき、スムーズに資金調達することができました。資金調達の選択肢が増え、日常的な管理も含めて、その場に合った有効的な利用方法を判断できるようになり、発注者からも大きな信頼を得ています。
建設業団体や組合の共同施設設置等を支援
「債務保証事業」
活用事例 3
相双地区復興生コン有限責任事業組合〈福島県相馬市〉
復興工事の生コン不足に呼応すべく組合を設立
債務保証を活用し供給プラントを整備
多くの作業車が行き交う生コンプラント施設
生コンプラント施設内には作業員宿舎も完備
石川俊専務理事
----生コン事業の中核となっている相双地区復興生コン有限責任事業組合についてお聞かせください。
東日本大震災で相双地区は、県内で最も甚大な被害を受けました。震災後の復旧・復興の過程では資材不足、人手不足の解消が喫緊の課題となっていました。中でも払底していたのは海岸堤防復旧のための生コンで、資材の性質上、生産後すぐに使用しなければならないため現場付近での製造が必須ですが、地元の生コン業者だけでは供給が追いつかない状況でした。そこで、福島県建設業協会相馬支部会員である地場の建設業者10社と、生コン業者2社の共同出資により設立したのが、相双地区復興生コン有限責任事業組合(LLP)です。
----復旧・復興作業に従事される中で強く感じられたことをお聞かせください。
放射能汚染被害により、他の地区よりも復旧作業が遅れ、厳しい作業日程が求められる中、平成23年5月に立ち上がった"県工事復旧・復興連絡協議会"の役割は大きかったです。県の関係部の幹部(部課長級)、地場建設企業(社長)と生コン専門業者、資材商社で構成されているため、多方面からの情報収集、決定事項の即決を可能とし、危機的な状況にスピード感を持った対応ができました。組合の設立、事業実施にも大きな影響を与えました。
----生コンプラント整備に当たり、本財団の債務保証事業を活用した経緯をお聞かせください。
組合では、被災現場近くのかつてプラントがあった土地を借り、仮設専用の生コンプラント施設を新設した上で作業員の宿舎も整備しましたが、一部銀行からの借入が必要となりました。前述の通り、情報収集の重要性を感じていた私自身が建設業振興基金主催の研修会に参加していたことから、建設業振興基金および基金事業を知ることができ、組合自体が債務保証の対象となること、利子補給により費用負担軽減が図れることを早くに確認できました。その後、債務保証の利用申請を行い、スムーズに資金調達を受けられました。
----生コン事業の現状をお聞かせください。
平成25年7月の発足当初、約5年間で累計25万㎥の生コンを生産する計画でした。当初は、思うように出荷できませんでしたが、その後出荷量が増え、平成28年12月時点で既に23万㎥を出荷。平成29年9月には全量の出荷を完了する予定です。
震災から5年が経過し、原発事故のため立ち入りが遅れていた相双地区の復旧もようやくめどがつきました。しかし、本当の復興はまだこれからです。たゆまず、社会資本の整備を続けていきます。