お役立ち・支援

金融支援事業

国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課 建設市場整備推進官 後藤 史一氏
聞き手:建設業しんこう編集部

 建設業振興基金は、昭和50年、中小建設業者の金融の円滑化や、経営の近代化、合理化を推進し、建設産業の振興を図る組織として設立され金融支援事業の一つである債務保証事業はこの時スタートしました。
 本特集では、金融支援事業について、国土交通省・後藤史一建設市場整備推進官に事業への期待や展望について話を伺うとともに、各制度の活用事例を紹介します。

 
  INTERVIEW
 

 
 金融支援事業について
 

 
後藤氏

----国土交通省の政策の一環として本財団が実施している金融支援事業について、お考えをお聞かせ下さい。
後藤 建設業振興基金が行う建設業界への金融支援とひとことで言っても幾つかのメニューがあります。具体的には、工事を施工中の建設企業の資金繰りを支援する「下請セーフティネット債務保証」や「地域建設業経営強化融資制度」、下請建設企業の工事請負代金債権を保証する「下請債権保全支援事業」、建設業団体や事業協同組合等の共同施設設置、共同事業等を支援する「債務保証」などです。これらは建設業に対する金融面での支援として政策全体のなかでも大きな意義があると考えています。

----それでは個別の事業ごとにお伺いします。下請セーフティネット債務保証と地域建設業経営強化融資制度について教えてください。
後藤 建設業は、製造業等に比べて資産を多く保有していないなどの事情から金融機関からの融資を受けにくい傾向があります。この制度は工事出来高部分の請負代金債権を現金化するものですが、これにより元請企業の資金繰りに寄与し、工事の品質や下請企業への代金の支払い条件なども改善することが期待されます。現在でも相当程度ご利用いただいているところですが、まだまだ潜在的なニーズは大きいと思っています。

----異次元金融緩和の効果などにより建設企業は民間金融機関からの資金調達が以前に比べて容易になっているとの声も聞かれますが、このような中で下請セーフティネット債務保証等の果たす役割はどのようなものとお考えですか。
後藤 建設企業が工事を施工する際に資金が必要になるのは当然のことです。このため、公共工事では前払金制度などで資金を手当てすることとしていますが、この前払金でカバーできない部分は自己資金や融資に頼ることとなります。下請セーフティネット債務保証等による融資は、簡便で迅速な手続きで融資が受けられますし、経営事項審査で有利に取り扱われるというメリットもあります。言葉が適切かどうかわかりませんが、食わず嫌いの企業も多いのではないかと感じています。民間金融機関による融資も大切であり、これを否定する気持ちは全くありませんが、元請企業の方々には是非とも資金調達の手段の一つとして下請セーフティネット債務保証等も併せてご活用いただきたいと思います。

----下請債権保全支援事業は、多くの下請建設企業の方々にご利用いただいています。
後藤 この制度は、下請企業などが元請企業に対して有する工事請負代金債権について、ファクタリング会社が支払保証を行うことにより債権保全を行うもので、下請企業を直接支援する点が特徴の一つです。国は建設業振興基金を通じて保証料の助成等を行っています。例えば、新規の取引先の仕事では、取引条件や工事代金の回収などが心配な場合があると思いますし、時には実際に元請企業が経営破綻し下請企業が連鎖倒産をするといったこともあります。この制度を適切にご利用いただくことにより安心して下請工事が施工できるようになると思います。この事業は下請企業や資材企業の経営と雇用の安定を図り、円滑な施工を確保するために大切な制度だと考えています。

----共同施設の整備や共同事業などに係る資金の借入に対する債務保証などについてはいかがでしょうか。
後藤 建設業団体の会館などは、団体の事務局として、あるいは各種の会議や研修などの場として建設企業の経営能力や技術力の向上等を図るために必要不可欠な施設です。また、災害時には、特に迅速な対応が求められる建設企業の連絡調整等の拠点として、更に、地域住民等の避難や救援等のための施設としても重要です。これらの施設の整備にあたっては、長期の資金が必要となりますので、この部分を支援しています。最近は特に施設の老朽化や耐震性能の観点から建替えや大規模な修繕を行うケースが増加してきており、今後も根強い需要が見込まれます。また、各組合などが取組む共同事業への支援も強化したいと考えています。例えば栃木県建設業協会ではGPSの活用により災害発生時の道路や河川等の被災情報を広く迅速に収集のうえ対応を図るシステムを独自に開発し、協会傘下の組合が道路等の維持管理業務を共同受注しています。このような意欲的な取組みが今後増えることを期待しています。建設業振興基金でも組合による共同事業の事例を盛込んだパンフレットを作成していますので、組合の皆様にはこのような資料も参考にされて新たな事業に挑戦して頂きたいと思います。

----最後に何かお話いただけることがありますか。
後藤 私は復興庁宮城復興局に勤務した経験もあって、東日本大震災からの復旧・復興については強い拘りを持っています。今回の特集記事にも取りあげられると聞いていますが、福島県での復興生コン施設の整備や除染作業に係る融資などについては、上手く制度を利用して頂いていると思います。また、下請セーフティネット債務保証等についても災害復旧工事で数多く活用されていますので、自然災害からの復旧・復興の観点からもこれらの制度を維持拡大していきたいと考えています。終わりに、私達国土交通省も、金融支援事業を実施する建設業振興基金も皆様のお役に立ちたいとの強い思いを持っています。何か新たに事業を行う際など、幅広にご相談いただければ何かの力になれると信じています。また、事業についてのご提案やご要望も歓迎いたします。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
----本日は貴重なお話ありがとうございました。

 各制度のフロー図
 

 
 詳しくは、下記本財団ホームページをご参照くたさい。制度のパンフレットなどが無料でダウンロードできます。
 ▶︎ http://www.kensetsu-kikin.or.jp/saimu/
 

 

ページトップ

最新記事

  • 経営に活かす管理会計 第10回|管理会計の利用と人材育成の方法を変える

    経営に活かす管理会計 第10回|管理会計の利用と人材育成の方法を変える

    中小企業診断士・社会保険労務士 手島伸夫

    競争の時代には、戦略的に№1になることが重要になります。市場では、価格と品質が良い1社しか受注できないからです。したがって、自社の「強いところ」をさらに強くして№1になるように経営資源を重点的に投下する「選択と集中」が重要になります。...続きを読む

  • 経営に活かす管理会計 第9回|建設企業の資金管理

    経営に活かす管理会計 第9回|建設企業の資金管理

    四国大学経営情報学部教授/㈱みどり合同経営取締役 藤井一郎

    資金管理とは具体的にどのような活動なのでしょうか。『ファイナンス戦略』などと言われる資金調達手法の検討、投資効果の話を聞く機会が多いかもしれません。もちろん、それも正しい考え方の一つですが、...続きを読む

  • 金融支援事業の利用事例

    金融支援事業の利用事例

    金融支援事業のメニューである「下請セーフティネット債務保証事業」「地域建設業経営強化融資制度」などは、それぞれに利用メリット等の特徴があります。本頁では、制度をご利用いただいている企業および団体に制度利用の背景などについてお話を伺いました。...続きを読む

  • 金融支援事業

    金融支援事業

    国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課 建設市場整備推進官 後藤 史一氏
    聞き手:建設業しんこう編集部

    建設業振興基金は、昭和50年、中小建設業者の金融の円滑化や、経営の近代化、合理化を推進し、建設産業の振興を図る組織として設立され金融支援事業の一つである債務保証事業はこの時スタートしました。...続きを読む

  • 経営に活かす管理会計 第8回|マネジメント・コントロール ―部門業績と組織業績の斉合性―

    経営に活かす管理会計 第8回|マネジメント・コントロール ―部門業績と組織業績の斉合性―

    慶應義塾大学商学部教授 横田絵理

    大規模な組織になり、その中の組織単位(部門)に大きな権限委譲がなされればなされるほど、組織全体の目標と組織内組織の目標を同じ方向にすることが難しくなります。...続きを読む

最新記事一覧へ