企業経営改善

4. IoT、ロボットとの連携で建設業が成長産業に

建設ITジャーナリスト 家入 龍太

 
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 IoT、ロボットとの連携で建設業が成長産業に

 
 
建設業の生産性向上をさらに加速

下がり続けてきた建設業の労働生産性は、2008年を底として、少しずつではあるが上昇基調に転じている(資料:日本建設業連合会「建設業ハンドブック2016」)

 約20年間にわたって下がり続けてきた建設業の労働生産性(1人当たり、1時間に生み出す価値の金額)をよく見ると、ここ数年はわずかに回復基調に転じていることが分かる。
 これは建築分野で、3次元モデルを使って設計・施工を行うBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)が本格的に導入され始めた "BIM元年"と呼ばれる2009年と、時期を同じにしている。
 さらに、「土木のBIM」こと、CIMの試行プロジェクトが始まった2012年から13年にかけては、さらに生産性は上向いているかのようにも見受けられる。 BIMやCIMがどの程度、生産性向上に寄与しているのかは分からないが、生産性向上に対する関心と実践が少しずつ建設業界に広がり、その結果として表れていることは推測できる。
 i-Conは、国交省という巨大発注者のリーダーシップにより、建設業界に大きな変革を起こしつつある。その効果が労働生産性という指標に表れてくるのも、時間の問題ではないだろうか。

IoT、ロボットとの連携も視野に

 国交省では2015年12月に有識者からなるi-Construction委員会(委員長:小宮山宏 三菱総合研究所理事長)を立ち上げ、2016年3月まで4回の委員会を開いてi-Con推進の戦略をまとめた報告書を公表した。
 その中でi-Conを進めるための3つの視点として(1)建設現場を最先端の工場へ、(2)建設現場へ最先端のサプライチェーンマネジメントを導入、(3)建設現場の2つの「キセイ」の打破と継続的な「カイゼン」が記されている。
 また、ICT土工の普及推進やコンクリート工の生産性向上を図るため産学官関係者による「ICT導入協議会」や「コンクリート生産性向上検討協議会」も組織された。
 同報告書を受けて2016年10月には「i-Construction推進コンソーシアム(準備会)」が開催された。様々な分野の産学官が連携して、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの革新的な技術や、3次元データなどの活用を進め、生産性が高く魅力的な新しい建設現場を創出することが目的だ。

 
 

 

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