経済

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安全・安心の医療施設づくりの現状

建設経済研究所

医療機関の現状について

 昨年の東日本大震災で我々は医療機関の重要性に気づかされた。普通の建物以上の耐震性が求められることも痛感した。今回は、病院建築の現状とその安全・安心のための制度施策についてまとめた。

病院建築の歴史

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建築統計年報(昭和57年度・平成3年度・平成12年度・平成22年度より作成)

 昭和50年代に病院の1次建築ラッシュがあった。戦時中の医師不足に伴い、政府は医学生を増員する施策を行った。その医師が医師技能を身につけ独立開業し、医院を建てたのが昭和50年代中心になっているという背景がある。
 これらの病院が40年近くたち、老朽化が進んでいるものも少なくない。また、病院施設は、高齢化社会を迎えた日本にとってもより重要度を増している上、地震など自然災害が多い日本において建物の安全性がより一層求められている。病院の法定耐用年数は39年であり、築40年の建物は、経営上からみても建て替えに相応しい時期になっている。

医療施設耐震化臨時特例交付金

全国600箇所災害拠点病院や救命救急センターで震度6以上の耐震性が確保されたものが約半数に過ぎないことが分かり、平成21年度第一次補正予算により、医療施設耐震化臨時特例交付金(約1,222億円)が創設された。医療施設の耐震化費用を国が一部補助するものである。

地域医療再生基金

 厚生労働省は地域の医師確保、救急医療の強化など、地域における医療課題の解決を図るため、都道府県に地域医療再生基金を設置した。平成21年度第一次補正予算で2,350億円、平成22年度補正予算で2,100億円が拡充され、東日本大震災後、平成23年度第3次補正予算で岩手県・宮城県合わせて570億円、福島県で150億円それぞれ拡充された。医師を目指す学生への支援などの他に、救急医療強化のための施設建設費用も対象に含まれる。

最近の民間病院建設の状況

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民間建築の使途別着工床面積の推移
(出典)国土交通省「着工統計」)

 これら交付金制度の影響もあり、近年の民間非住宅建築の着工状況をみると、他の用途の建築の着工がリーマンショックの影響を受けた後、ほぼ横ばいで推移しているのに対し、病院はリーマンショックの影響をさほど受けず、この2年で着工床面積が増えていることがわかる。より安全で安心できる高齢化社会に向けた社会づくりが進んでいる。

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