経済

国土交通省が進める施工時期の平準化|「ゼロ債」「余裕期間」の活用広がる

日経コンストラクション編集長 野中 賢

2014年6月に施行された改正品確法では、公共工事の発注者の責務として、計画的な発注と適切な工期設定に努めることが明記された。
これを受けて、多くの自治体が施工時期の平準化に取り組む。
「ゼロ債」や「余裕期間」の活用で、工期を柔軟に設定するケースが増えている。

 

 公共工事は一般に年度ごとの予算に従って執行し、予算成立後に入札契約手続きを行う。このため、年度当初に工事量が減り、工事の完成時期は年度末に集中しやすい。時期によって工事に携わる社員や作業員の稼働率が大きく変わることは、建設会社の経営や将来の担い手確保の観点で好ましくない。
 そこで、2014年6月に改正された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)では、公共工事の発注者の責務として、計画的な発注と適切な工期設定に努めることが明記された。

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「ゼロ債」で前年度に契約し 年度初めからすぐ工事に着手

 2016年2月には、総務省と国土交通省が連名で、都道府県と政令市に向けて「施工時期等の平準化に向けた計画的な事業執行について」と題する通知を発出。自治体に対して、施工時期を平準化するための具体的な取り組み例を示し、対策の実施を促した。
 対策の一つが、社会資本整備総合交付金を充てる事業について、前年度のうちに契約できるようにする「債務負担行為」の活用だ。同通知では、「2カ年債」「ゼロ債」の例を示した。
 2カ年債は、工期が2カ年度にわたる場合に利用する方式。工費の一部を次年度予算から"前借り"し、工期末を次年度にずらすことができる。年度末の繁忙を避けることができるわけだ。一方のゼロ債は、工費の全額を次年度予算から前借りするイメージで、年度内には支出を伴わず、契約だけを済ませておく。そうすれば、通常は工事量が少ない年度初めから、すぐに着工することが可能になる。
 国土交通省が都道府県を対象に実施した調査によれば、社会資本整備総合交付金事業に対してゼロ債を活用している事例が増加している。2016年2月時点では6自治体だったが、10月の調査では9自治体に増加。実施を検討している自治体も23あった。

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「余裕期間」の設定で 人員や資機材の確保を容易に

図 国土交通省の余裕期間制度

国土交通省の資料に加筆

 もう一つの対策が、工期の30%かつ4カ月を超えない範囲の「余裕期間」の設定だ(右図)。工事の始期と終期の選び方によって、「発注者指定方式」「任意着手方式」「フレックス方式」の3種類が例示されている。
 例えば任意着手方式では、実工事期間は変更できないものの、工期の始期は余裕期間内で受注者が自由に決められる。受注者は人員や資機材の確保などの自由度が高まるメリットがある。同方式を採用している都道府県の数は、2016年2月時点で13自治体、10月時点で19自治体と急増している。
 通知ではその他、やむを得ない理由で年度内に工事が終わらないと判断した場合は、繰り越し制度を適切に活用することも示された。国土交通省の調査では、2016年10月時点で33都道府県が、速やかな繰り越し手続きに着手していると回答している。

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