経済

建設経済の動向

復旧・復興における建設企業の役割と課題

建設経済研究所

被災地域の建設産業のこれまでの動向

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 岩手・宮城・福島の被災3県では、この10年ほどで公共事業費(各県の決算ベース)は1/3に減少している。また、建設企業数の13%減少に対して、建設業就業者数は30%減少しており、被災地域の建設企業は人員削減により存続を図ってきた様子が窺える(図表1)。こうした中、東日本大震災が発生した。

これまでに指摘された課題の改善状況

通信の途絶については、被災3県の建設業協会では、本部や支部に衛星電話やデジタル無線の導入を実施・検討している。全国的に災害に強い通信手段の確保が喫緊の課題であるが、コストの問題から導入に踏み切れない建設業団体も多い。国や自治体による支援(衛星電話の貸与や導入・維持費用の補助等)が必要である。
被災地の建設企業の資金繰りについては、前払率の引き上げや震災復興緊急保証の創設などの金融支援策が効果を発揮し、資金繰りは徐々に安定。3県の建設企業の倒産件数は前年と比べ半減している。
今回の大津波により沿岸部にあった多くの建設機械が被害を受けたが、損害保険は免責となるため保険金は支払われない。また、請負契約約款に規定されている「不可抗力による損害」を適用しても、発注者に負担してもらえる金額は当該工事の償却額が対象であるため極僅かとなる。残る対応策としては、二重債務問題の対策として新たに設立された「産業復興機構」や「東日本大震災事業者再生支援機構」の活用が考えられる。また、今回を教訓として自然災害による建設機械の損害補償の在り方について検討する必要がある。
工事発注体制の整備については、東北地方整備局では出先事務所の新設や職員の増員、事業促進PPPの採用など発注体制を強化している。しかし、被災自治体では、職員の不足が顕在化しており、円滑な工事発注に支障が出ているため、発注業務の一部外部委託するなどの工夫が必要で、CM方式の導入は有効である。

復興に向けた建設企業と行政の取り組み

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 当初難航していたがれきの撤去は、徐々に作業効率が上がり12年5月末までに約79%が一次仮置き場に搬入され、最終処分に向けた取り組みも動き始めている。1,153万tのがれきが発生した宮城県では、沿岸13市町を4ブロックに分け処理業務を発注。各ブロックに設置する大規模な二次仮置き場での処理と全国の自治体等の協力による広域的な処理により、13年末までに最終処分を終える実行計画を策定している。
 また、11年末までに災害査定がほぼ終了し、ようやく復旧工事の発注が本格化し始めている。公共工事前払金保証統計によると、12年1月以降の各県内の保証実績(請負金額)は前年同月の2.1倍〜5.4倍と突出している。  一方、入札不調の増加が新たな課題となっている。継続的な建設投資の減少に伴い技術者・技能者が減少していたところに、がれき処理を始めとした多くの復旧工事が発注され、労賃の実勢価格が上昇したことが主な原因である。建設業景況調査によると、建設労働者の賃金は震災以降上昇基調となっている(図表2)。
 国土交通省は、被災地内の建設企業が被災地外の建設企業と共同する復興JV制度の創設や、実勢価格を反映した公共工事設計労務単価の設定などの入札不調対策を打ち出した。
 復興JV制度については、これまでに宮城県と仙台市が制度を導入している。また、円滑な復興JV結成のポイントとなる被災地内・外の建設企業のマッチングについては、全国建設業協会や東北建設業協会連合会が会員企業情報のデータベース化・検索システムを構築し建設企業を支援している。
設計労務単価については、建設企業への調査や統計調査の結果などを活用し補正した新たな単価が12年2月20日より適用されている。

まとめ

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公共インフラが人命を災害から守り、被害を抑える効果があったことは今回の大災害においても証明されている。また、災害発生時には地域建設企業の即戦力が不可欠であり、組織的に対応できる体制・建設業団体の役割も大きい。
しかし、公共事業の削減などで建設企業は疲弊し災害対応力が大幅に低下しており、被災地では、数年後であれば災害対応ができなかった可能性があるとの声が聞かれた。
全国的に災害対応空白地域の拡大が懸念されている。行政は、災害対応に取り組んだ企業には、その実績に応じた総合評価の加点を増やすなど、これまで以上にインセンティブを与える必要がある。災害多発国である我が国にとって、公共事業と建設産業の果たす役割はこれからも重要である。

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