経済

建設経済の動向

建設経済モデルによる建設投資の見通し

建設経済研究所

 東日本大震災の復旧・復興需要が本格化の兆しをみせ、公的需要は一時的に高い伸びとなるが、2012年度後半からの復旧・復興需要のピークアウトにより、2013年度には反動減となることが予想される。一方、民間需要はエコカー補助金終了等により成長が足踏みする懸念があるが、欧州景気悪化の下げ止まりと中国経済の持ち直しによる輸出の増加、加えて消費税増税を控えた駆け込み需要が2013年度後半にかけて個人消費を押し上げることが期待され、2012年度、2013年度を通して緩やかな回復が見込まれる。但し、欧州債務問題の深刻化、新興国経済の一段の減速、原油価格高騰、円高進行、電力需給の逼迫等の下振れリスクが多いことには、依然として留意が必要である。
 一般財団法人建設経済研究所および財団法人経済調査会が四半期ごとに発表している建設投資の見通し(予測)最新版(2012年7月)では、今年度(2012年度)の建設投資は、前年度比6.2%増の44兆5800億円となる見通しである。世界金融危機発生後の落ち込みから徐々に持ち直してきてはいるものの、民間建設投資がそれ以前の水準に戻っていない。
 政府建設投資は、震災関連予算の執行が本格化することによって、前年度比8.6%の増加と予測する。民間住宅投資は、復興需要や消費税増税を控えた駆け込み需要等により、緩やかな回復基調が継続すると見込まれ、前年度比5.1%の増加と予測する。民間非住宅建設投資は、復興需要や世界経済の持ち直しに伴う設備投資の活発化等により、緩やかな回復基調にあり、民間非住宅建築投資は、前年度比2.6%増、民間土木投資は前年度比6.0%増、全体では前年度比3.9%の増加と予測する。
 2012年度の実質建設投資額は42兆4000億円、2013年度は41兆9500億円と予想しており、2008年度の水準(44兆5959億円)には届かない見込みである。
 なお、上記見通しは2012年7月初旬までに入手可能な各種のデータ、資料に基づいて推計作業を行った結果である。
 政府建設投資の推移は図表2の通りである。2012年度は、東日本復興特別会計等を含めた国の当初予算および地方単独事業費の増加や、行政と建設企業の様々な取り組みにより予算執行が本格化することで、前年度比8.6%増の、18兆4000億円と予想する。補正予算については、震災関連予算規模の拡大が議論されていることや、豪雨等の被害が発生していることを踏まえ、2兆円程度見込んでいるがその大半は2013年度へ繰り越されると考えられる。2013年度は、公共事業関係費等の規模拡大が議論されているが、政府の予算編成方針が定まっていないことを踏まえ、当初予算の公共事業関係費と地方単独事業費は、前年度の震災関連予算を除いた予算並みとし、各種災害への予防的な対策は補正予算としての計上を2兆円程度見込んでいる。しかし、2012年度に震災関連予算の執行が本格化することにより、前年度からの繰越額は平年以下であると想定したこと等が減少要因となり、前年度比△7.1%の、17兆900億円と予想する。
 近年、台風や豪雨等の自然災害が増加する傾向にあり、大規模な地震が発生するという可能性が指摘されている。国土を整備していくための投資が必要不可欠である。各種災害への予防的な対策に必要な建設投資は、補正予算や東日本復興特別会計等に計上されると見込んでいるが、当初予算による建設投資は減少傾向にある。災害に脆弱な我が国の国土を強化し、国民の生命や財産を守る観点から、腰を据えた戦略的な公共投資が求められる。
 政府建設投資は、上述の通り震災関連予算により増加しているとともに、外環道未着工部分の着工方針決定や整備新幹線未着工ルートの事業費予算化等、若干のプラス要因はあるものの、我が国の財政状況及び将来人口推計等を鑑みれば、長期的にこの増加傾向が続く可能性は極めて低い。国民の貴重な税金を振り向けるべき課題が数多くあることを踏まえた対応が期待される。一方で、欧州債務危機等の海外経済動向や電力料金上昇による企業収益圧迫などの懸念材料はあるものの、民間住宅建設投資は復興需要や消費税増税を控えた駆け込み需要等が着工戸数を下支えし、また、民間非住宅建設投資は世界経済の持ち直しに伴う設備投資の活発化等が見込まれることにより、民間建設投資は緩やかな回復基調がしばらく続くと予想する。その結果、建設投資全体では、世界金融危機発生以前の水準をターゲットとして、緩やかに増加していくであろう。

 

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