経済

建設経済の動向

建設工事受注動態統計と公共工事前払金保証統計の違いと見方

建設経済研究所

 日本の経済動向を見る上で、公共投資は重要な項目の一つである。その公共投資に関する統計はいくつかあるが、今回は内閣府が発表する月例経済報告にも利用されている、建設工事受注動態統計(以下「受注動態統計」という。)と公共工事前払金保証統計(以下「前払金保証統計」という。)に注目して、この2つの統計の違いとその見方を紹介する。
 受注動態統計は国土交通省が、前払金保証統計は北海道建設業信用保証㈱、東日本建設業保証㈱、西日本建設業保証㈱の三保証事業会社が毎月合同で発表している統計で、どちらも公共工事の請負金額を集計※1しており、ここから当年度の公共工事の発注量や公共工事予算の執行状況を推測することが出来る。
 また、どちらも工事場所別で集計しており、東日本大震災により被災地で復興工事が実際にどれだけ発注されたかの目安として利用されている。
 この2つの統計を時系列で並べると、特に第1四半期の前払金保証統計の金額は、受注動態統計に比べ大きい(図表1参照)ことや、平成23年10月の受注動態統計の増加率が前払金保証統計に比べ高い(図表2参照)こと等、多少の違いが見られる。
この2つの統計に違いが生じる主な理由は、以下の①~③のとおりである。

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①集計のタイミング

 受注動態統計は、請負契約日で集計しているが、前払金保証統計は、保証契約日(企業と前払金保証契約を締結した日)で集計しているので、同じ工事でも概ね半月程度のタイムラグが生じる。

②年度割工事※2の取扱

 工期が年度を跨るため、年度毎の出来高(請負金額相当額)や支払限度額が設定されている工事(以下「年度割工事」という。大型工事や、年度末に近い発注工事等が年度割工事になる場合がある。)の場合、受注動態統計は、その工事の請負金額全額が集計されるが、前払金保証統計は、当該年度の請負金額相当額が集計される。なお、翌年度以降の請負金額は、その年度分の前払金保証の保証契約日に集計される(主に第1四半期)。

③ゼロ債工事※3の取扱

 年度末に近い発注で当該年度の出来高も無く、翌年度に請負金額が全額支払われる工事(以下「ゼロ債工事」という。)の場合、受注動態統計は、通常どおり請負契約日に集計されるが、前払金保証統計は、企業が前払金を請求出来るのは翌年度なので、翌年度の保証契約日に集計される(主に第1四半期)。
 その他、前払金保証統計には、受注動態統計に含まれない、設計・調査・測量の取扱いや、東京地下鉄㈱等の特殊会社や第三セクター等の発注工事が含まれる※4等の違いがある。
 詳細は、それぞれの統計資料が掲載されているHP等で確認出来る。
 受注動態統計は、当年度に発注された工事のみ当年度に集計されるので、前払金保証統計より解りやすく、当年度の公共工事予算の執行状況をより反映していると言える。
 前払金保証統計は、年度割工事やゼロ債工事の取扱いで複雑になるが、当年度の実質の請負金額を表していると言える。また、受注動態統計と比べ、公表時期が早く※5、速報性に優れている。
 この2つの統計を利用する際は、これらの特徴に留意する必要がある。
 

※1 受注動態統計は、民間等からの受注金額も集計している。
※2 債務負担行為工事ともいう。
※3 一般的に、国が発注するゼロ債工事を「ゼロ国債工事」、県が発注するゼロ債工事を「ゼロ県債工事」という。債務負担行為工事の一つで、発注平準化措置として行われる。
※4 受注動態統計は、特殊会社や第三セクター等の発注工事を、民間等からの受注工事に含めている。
※5 前払金保証統計は、当月分を翌月の15日までに公表し、受注動態統計は、当月分を翌月末に速報を、翌々月の10日頃に確報を公表している。

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