経済

建設経済の動向

建設投資の見通し

建設経済研究所

はじめに

 東日本大震災の発生から1年半余りが過ぎ、公的需要は復興の本格化により一時的に高い伸びを示している。しかし、2013年度は前年度からの予算繰越額が平年以下となることから反動減となる見込みである。一方、民間需要はエコカーなどによる堅調な個人消費に牽引されていたが、中国をはじめとする海外景気の停滞と企業設備投資の伸び悩みにより、踊り場を迎える懸念が強まってきた。ただし2013年度は、海外景気の回復に伴う外需の持ち直しや消費増税前の駆け込み需要にある程度下支えされる見込みである。なお、欧州や中国をはじめとする海外経済、原油等資源価格および円相場など、下振れリスク要因の動向を引き続き注視する必要がある。

1.建設投資の推移

 (一財)建設経済研究所および(一財)経済調査会は四半期毎に建設投資の見通し(予測)を発表しており、本稿は2012年10月初旬までに入手可能な各種のデータ、資料に基づき推計し10月末に発表した結果によるものである。
 今年度(2012年度)の建設投資は前年度比4.1%増の43兆7,300億円となる見通しである。世界同時金融危機発生後の落ち込みから徐々に持ち直してきてはいるものの、民間建設投資がそれ以前の水準まで回復していない。
 政府建設投資は、震災関連予算の執行が本格化することにより、前年度比6.7%の増加と予測する。民間住宅投資は、消費増税前の駆け込み需要および本格化する復興需要に下支えされ緩やかな回復基調が継続すると見込まれ、前年度比3.7%の増加と予測する。民間非住宅建設投資は、工事費予定額平米単価の低下により民間非住宅建築投資が前年度比△0.9%となる一方、民間土木投資が土木インフラ系企業の設備投資水準が高いこと等により前年度比4.2%増となることから、全体では前年度比1.0%増と予測する。
 なお、実質建設投資額については、2012年度は41兆6,000億円、2013年度は42兆3,600億円と予測しており、2008年度の水準(44兆5,959億円)には届かない見込みである。(図表1)

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2.政府建設投資の推移

 2012年度は、東日本復興特別会計等を含めた国の当初予算および地方単独事業費の増加や、行政と建設企業の様々な取り組みにより予算執行が本格化することで、前年度比6.7%増の18兆800億円と予測する。補正予算については、震災関連予算全体の規模拡大を含めた議論がなされていることおよび豪雨等により多くの被害が出ていることを踏まえて1兆円程度を見込んでいるものの、その大半は2013年度へ繰り越されると考えられる。
 2013年度は、2012年度予算の各省概算要求の概要から当初予算の公共事業関係費は増加に転じ、地方単独事業費は前年並み、東日本大震災復興特別会計の建設投資額は3兆5,000億円程度となると推計した。しかし、2012年度に震災関連予算の執行が本格化するため前年度からの予算繰越額を平年以下であると想定したことが主な減少要因となり、2013年度は前年度比△2.1%の、17兆7,000億円と予測する。
 近年、台風や豪雨などの自然災害が増加する傾向にあり、首都直下型地震などの発生も懸念される中、国民の生命や財産を守るため国土整備への投資は必要不可欠である。東日本大震災から復旧・復興を最優先とすることはもちろんであるが、今後も災害に脆弱な我が国の国土を強化していくために必要な建設投資は、十分な確保が必要である。(図表2)

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3.今後の投資予測

 2013年度以降について、政府建設投資は、大型公共工事の事業費予算化など若干のプラス要因はあるものの、我が国の財政状況や将来人口推計などを鑑みれば長期的に増加していく可能性は低い。一方で、民間住宅建設投資は復興需要や消費増税を控えた駆け込み需要などに下支えされ、また、民間非住宅建設投資は、海外経済の動向や平米単価の動向などの懸念材料はあるものの、東日本大震災とタイの洪水被害を教訓とした生産施設再編の動きが期待でき、民間建設投資は緩やかな回復基調が続くと予想する。その結果、建設投資全体では、世界同時金融危機発生以前の水準をターゲットとして、引き続き緩やかに増加していくであろう。

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