経済

建設経済の動向

安心・安全な社会資本を次世代に引き継ぐということ

建設経済研究所

 東京都の首都高速道路建設に象徴されるように、日本では東京オリンピック(1964)を期にモータリゼーションが始まり、自動車の急速な普及とともに、道路が整備されてきた。「50年ぶりに再びオリンピックを東京に招致を」という機運を盛り上げる声は同時に、「首都高速などに使われている道路橋梁も築後50年を経過したのだ」と我々に語りかける。
 日本より半世紀先行し、1920年代からモータリゼーションが始まったアメリカではその約50年度の1970年代頃から老朽化した橋梁の崩落事故が相次いで起こり、「荒廃するアメリカ」といわれた。
 日本でも今後、アメリカのような事故が懸念されるところである。建設投資が積極的に行われた高度成長の時代に対し、現在の日本は急速な高齢化が進み社会保障費が増大するにつれ、公共投資は抑えられる傾向にあり、今の予算水準が維持されるとしても老朽化した社会資本を再建設するには厳しい財政状況となっている。
 図1はこれまで整備された道路について、危険な状況に至るまで放置しておき、補修し、最終的に再建設した場合の対症療法型シミュレーションである。2030年代には、老朽化した道路を社会資本を再度建設する財源はなくなっていく。


 これに対し、図2は老朽化した道路を放置するのでなく計画的に部分補修をして社会資本を永く使うという予防保全型投資シミュレーションである。このように社会資本のロングライフ化を進めることで限られた予算のなかで社会資本を永く使うことができるようになる。


 今我が国では、使っている社会資本に対し、点検や、劣化状況を把握したのち、長寿命化計画を策定し、適切な維持更新施策を施し、できるだけ費用をかけないで永く使っていくための方策を実施し始めたところである。道路の他にも、学校や下水道、水道といった社会資本ストックは、図3の通り粗ストック集計で約786兆円にまで積みあがっている。これらの社会資本を、さらに永く使い続ける工夫は、多くの社会資本ストックを抱えた成熟した社会が持つ逃げられない宿命であり、将来世代に対する大きな責任でもある。
出典:内閣府「社会資本ストック推計」より
(建設経済研究所)

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