経済

建設経済の動向

自治体の2013年度予算 12年度補正予算と一体で公共事業が急増

日経コンストラクション編集長 野中 賢

国の緊急経済対策を受け、都道府県の実施する公共事業が急増の兆しを見せている。
12年度補正を今年度予算に加えると、主に公共事業に使われる投資的経費が、大半の都道府県で増加した。
多くの自治体は国からの手厚い交付金を活用し、防災やインフラ老朽化対策に重点的に投資する。
国庫頼みの一方で、厳しい財源に対応するため、民間資金に期待を寄せる動きも出てきた。

 主に社会資本整備に充てられる投資的経費は、都道府県全体を合計すると2011年度まで15年連続で減少。12年度も東日本大震災の被災3県を除き前年度比マイナスだった。しかし、日本経済新聞社「日経グローカル」の調査によれば、13年度は骨格予算を組んだ秋田県と千葉県を除く45都道府県の合計で、前年度比0.2%増。久しぶりに増加に転じた。
 この数値だけでは大した増加には見えないが、12年度の補正予算を加えて考えると様相は一変する。
 政府が打ち出した緊急経済対策を受け、総額13兆円にも上る国の12年度補正予算が今年2月に成立。それに対応して、自治体も2月あるいは3月に補正予算を組んだ。
 補正予算のうち、緊急経済対策に対応した投資的経費を13年度当初予算に加えると、宮城県を除く全都道府県で12年度の当初予算を上回った。全体の投資的経費の合計は、12年度当初予算比20%の増加だ。

公共事業を支える国の交付金

 自治体の投資的経費の大きな伸びを支えているのが、国による手厚い補助だ。13年度当初予算では、骨格予算を除く45都道府県の合計で、補助事業費が前年度比4.6%増加。12年度補正に関しては、投資的経費の大部分が補助事業に充てられる。
 国土交通省が所管するインフラ関係の補助で大きな割合を占めるのが、13年に新設した防災・安全交付金だ。国交省は12年度補正予算に5498億円、13年度当初予算に1兆460億円を計上した。以前からある社会資本整備総合交付金に関しても、12年度補正予算に2465億円、13年度当初予算に9031億円を確保した。
 国交省の交付金はここ数年、毎年のように制度が変わっている(下図を参照)。使途に制約がある従来の補助金を集約して、自治体の自由度を高めたのが、10年度に創設した社会資本整備総合交付金。その後、民主党政権が府省の枠を超えた「一括交付金」として地域自主戦略交付金を創設したものの、2年後に自民党政権が廃止。今度は、防災や安全を重視する姿勢を明確にするため、防災・安全交付金を新設した。
 基本的には、1月に閣議決定した緊急経済対策のうち、「復興・防災対策」に防災・安全交付金を、「成長による富の創出」に社会資本整備総合交付金を充てる。
 さらに、本来は自治体が負担する部分についても国費が投入される。内閣府が12年度補正予算に1兆3980億円を計上した「地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金)」だ。補助事業の自治体負担分と国直轄事業負担金の8割程度の額が、地域の元気臨時交付金として自治体に配分される。

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民間からの寄付を事業の基金に

 国庫頼みの一方、都道府県のなかには、民間資金を活用する新しい取り組みも見られる。
 静岡県では、一条工務店グループからの寄付金をもとに津波対策施設等整備基金を運用する。13年度予算では、歳入に同年度分の寄付金100億円を見込む一方で、歳出にその寄付金にこれまでの運用益を加えた約100億1930万円を基金への積み立てとして、また基金からの支出20億円を津波対策施設等整備事業費として計上した。
 この基金は、浜松市沿岸域の防潮堤整備に充てる目的で一条工務店グループが総額300億円に上る寄付を申し出たことを受け、県が立ち上げた。県内の法人と個人から広く寄付金を募る一方で、昨年10月に条例を施行して運用を始めた。
 13年度予算で計上した津波対策施設等整備事業費20億円は、同グループからの寄付金を原資とすることから、浜松市沿岸域約17.5kmの防潮堤整備に充てる。

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