経済

建設経済の動向

工事や業務での消費増税の取り扱い受注者都合の工期延長なら増税分は自己負担

日経コンストラクション編集長 野中 賢

2013年10月、政府は2014年4月からの消費税増税を決めた。
それに伴い、工事や業務にかかる消費税率はどのように変わるのかをまとめてみた。
基本的には契約時期と引き渡し時期で決まるが、設計変更などを伴う場合は注意が必要だ。
一方、消費増税を見据えた「駆け込み契約」も増え、資材不足の懸念も高まっている。

 政府は2013年10月1日に、消費税率を来年4月引き上げることを決めた。これまで5%だった税率が8%に高まる。それを受けて国土交通省は、直轄事業での税率の取り扱い方について全国の地方整備局などに同日付で通知した。  物品の購入と異なり、建設工事や業務では、契約から引き渡しまでに時間がかかる。どのタイミングの消費税率が適用されるのか、まずは整理してみよう。

■基本は契約日と引き渡し日

 消費税率を決める基本となるのは、契約日と引き渡し日だ。それぞれ、税率引き上げを発表した2013年10月1日と、実際に税率が上がる2014年4月1日が境界となる。
(1)消費税引き上げ決定前の2013年9月30日以前に契約した工事や業務は、成果物の引き渡し時期にかかわらず、消費税率5%を適用する。
(2)2013年10月1日以降に契約する工事や業務は、成果物の引き渡し時期が税率改正前の2014年3月31日以前であれば5%を適用する。一方、引き渡し時期が4月1日以降になる工事や業務には8%を適用する。
 このため、10月1日以降に発注する工事や業務の予定価格は、成果物の引き渡し時期に応じて新税率の8%を記載するように、各地方整備局などに通知した。

■設計変更は増額分に8%適用

 一方、少し話がややこしくなるのが、設計変更で増額される場合や、引き渡しの時期が4月1日をまたぐ形で変更される場合だ。
(3)2013年9月30日以前に契約した工事や業務で引き渡しが14年4月1日以降の場合、設計変更によって契約金額が増額したときは、増額部分だけに8%を適用する。ただし、成果物の引き渡し時期が14年3月31日以前であれば、消費税率は5%のままとする(下図A参照)
(4)2014年3月31日以前に成果物を引き渡す工事や業務で、工期の延長によって引き渡しが14年4月1日以降にずれた場合のうち、自然災害など延長の理由が受注者に責任を問えないときは、支払い代金全額に8%の消費税率を適用し、発注者が負担する。一方、施工ミスなど工期延長の責任が受注者にあった場合は、税率は5%に据え置いて支払う(下図B参照)
 つまり、受注者のミスなどによって工期が4月1日をまたいで延びてしまうと、全額に対して消費税8%が適用されるにもかかわらず、発注者から支払われる消費税は5%のみ。差額の3%分は、受注者が自己負担しなければならないことになる。
(5)成果物の引き渡し時期が2014年4月1日以降になることから消費税率を8%として2013年10月1日以降に契約する工事で、前金払いや部分払いを適用する際は、2014年3月31日までの分は消費税率5%を適用して支払う。残る3%分は保留して完成時に支払う。
 他方、民間事業では、消費税のアップで施主の負担が増すことから、建築を中心に駆け込み需要とみられる事業量の増加が指摘されている。建設業界にとっては「特需」といえる半面、資材不足への懸念が高まっている。
 なかでも、主要部材である4mのパイプや足場板の需要が多く、既に稼働率は8~9割に上る。軽仮設資材は毎年冬場に向けて稼働率が高まる傾向にあるうえ、復興の本格化や東京五輪に向けた工事の始動など、今後も需要を押し上げる要因が多い。資材の品薄の傾向に、今後拍車がかかる恐れがある。

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