経済

建設経済の動向

建設労働者と資機材の不足 技能労働者不足は「東北以外」で深刻に

日経コンストラクション編集長 野中 賢

東日本大震災を契機に、一気に表面化した「ヒト」「モノ」不足。
被災地での生コン不足などは、様々な対策で一時に比べて落ち着いてきたが、仮設資材や重機については、不足感がむしろ強まっていると言えそうだ。
一方の労働者不足は、関東・中部・中国地方など、東北以外の地域でも深刻化している。

 東日本大震災の復旧・復興事業に端を発した人材や資機材の不足。一時、盛んに指摘されてきた生コン不足については、官民の新たなプラント建設などによって、落ち着きを見せている。一方、その他の資機材や建設労働者に関して、現状の需給状況はどうなっているのか。国土交通省が毎月発表している統計を基にひもといてみる。

■多くの資機材で稼働率7割超

表1 主要資機材の稼働率(2014年2月時点)

 国土交通省の「建設関連業等の動態調査報告」には、建設機械や仮設資材の稼働率が掲載されている。表1に示したとおり、今年2月時点で多くの品目で稼働率が7割以上に達している。
 例えば、覆工板。今年2月時点での稼働率は73.6%で、前年同月に比べて11ポイント上昇している。なお、契約済みだが未稼働のものは稼働率に含まれていないので、逼迫感は稼働率の数字以上に強いと言えるだろう。
 実際、重仮設業協会が会員各社に聞き取り調査したところ、関東・東北地方で保有する覆工板の在庫は2013年10月時点で全保有量の15%を切っている。そして、既に受注済みの分と、引き合いなどで今後必要になる見込み分を合わせると、在庫の4倍超の需要が見込まれるという。
 対策は容易ではない。本設の資材と異なり、単純に増産すれば済むというものでもない。覆工板をはじめとした仮設資材は、公共工事ではリースされる場合がほとんどだ。一時的に需要が高まっても、復興事業などが一段落したら、メーカーは余剰在庫を抱えることになりかねない。被災地に限らず、覆工板の不足は全国的にみられる傾向で、他の地域から余剰分を回すのも難しい状況だ。

■型枠工、鉄筋工の不足が続く

表2 地域別の建設技能労働者過不足率(2014年2月時点)

 一方、技能労働者の過不足については、国土交通省が「建設労働需給調査結果」でまとめている。数値は毎月発表され、月ごとの変動がかなり大きいが、ここでは直近で不足感が強かったとみられる今年2月時点の調査結果を見ていこう。
 職種別では、型枠工(土木、建築)、鉄筋工(建築)の3職種で過不足率(大きいほど不足感が強い)が3%以上で、前年同月と比べていずれも2ポイント以上、上回っていた。昨年下期以降、型枠工と鉄筋工はともに過不足率が高水準で推移しており、型枠工(土木)と鉄筋工(土木)は、いずれも7%を超えていた月があった。
 表2は、8職種の過不足率を地域別に集計したものだ。これも、やはり月による数値の変動が大きいが、2月時点では中部地方の過不足率が6.0%と高く、前年同月より5ポイント上昇。中国地方、関東地方がそれに続いている。人手が被災地に集まっているのに加え、それ以外の地域でも公共事業は増加している。技能労働者不足が、東北地方から全国に拡大している傾向を改めて読み取ることができる。
 同調査では、調査時点から2カ月、3カ月先の労働者確保の見通しもまとめており、2カ月先については、見通しを「困難」「やや困難」「普通」「やや容易」「容易」の5段階で尋ねている。
 今年4月時点での6月の労働者確保の見通しは、「困難」「やや困難」を合わせて33.5%。これは、前年同月に比べて12.6ポイントの上昇だ。復興事業の本格化や政府が推し進める国土強靱化、インフラの老朽化対策などに向け、技能労働者の不足は、しばらく収束しそうにない状況だ。

ページトップ

最新記事

最新記事一覧へ