経済

建設経済の動向

建設三法改正のポイント 担い手確保に向け施工者の適正な利潤確保を掲げる

日経コンストラクション編集長 野中 賢

今年5月29日、品確法、建設業法、入契法が改正され、一部が6月に施行された。改正の大きな目的は、いま課題となっている建設業の担い手確保だ。
そのためには、建設会社の経営体力を維持することが必要だという考え方の下、建設会社が適正な利潤を確保できるように、発注者が配慮すべき事項が掲げられている。

 5月29日の衆議院本会議で、公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)、建設業法、入札および契約の適正化の促進に関する法律(入契法)の三法の改正法案が成立。そのうち改正品確法は、6月4日に公布され、即日施行された。  いずれも、建設会社や公共事業の発注者にとって重要な内容を含む改正だ。以下では、担い手確保により大きな影響を持つと考えられる品確法を中心に、改正のポイントを解説する。

■予定価格や工期の設定を適正化

 これら三法がカバーする範囲はそれぞれ異なるが、今回の改正は一つの目的に沿って行われた。本欄でもたびたび取り上げている「建設業の担い手確保」だ。
 なかでも改正品確法では、第1条に「担い手の中長期的な育成および確保の促進」という文言を付け加え、法律の目的として担い手確保をはっきりとうたっている。そのほか、第3条や第7条などで、発注者に求める取り組みを示した(下表)。発注者が品質確保のために行うことという位置付けで、そのためには建設会社の経営体力の維持が重要だという考えを強く感じさせる内容だ。
 基本的には、建設会社が適正な利潤を得られる仕組みを構築するのが狙いだ。予定価格の適正な設定、入札不調時における入札参加者からの見積もりの徴収、最低制限価格などの設定、適切な工期の確保、設計図書に問題があった場合の請負金額や工期の変更などを、条文に盛り込んでいる。

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■年内にも品確法の運用指針

 改正品確法は理念を示した法律で、自治体はこれに従う努力義務があるが、強制力はない。法律の実効性を担保する目的で、改正品確法の第22条では、国が「運用に関する指針」を作成することが定められた。
 この指針は、発注関係事務の適切な運用のための共通ルールとして、国が関係業界や自治体の意見を聞きながらつくる。国土交通省大臣官房技術調査課によると、来年度からの運用を始めるために、2014年内の指針作成を目標にしている。
 品確法の改正によって、発注者には「最新の単価や実態を反映した適切な積算」、「歩切りの根絶」、「適切な入札制度の採用」、「発注計画の平準化や適正な工期設定のための事前検討」といったものが求められる。これらは以前から発注者の責務だったとはいえ、これまで施工者が発注者に対して不満を抱くケースが少なくなかった。
 指針の運用が始まれば、国や自治体がこれらの施策を具体的に取り始めることになる。品確法の改正で、発注者の責務が改めて明文化されたのを契機に、受発注者の関係が改善されることを期待したい。

■ダンピング防止は入契法でも

 先述のとおり、建設業法や入契法の改正にも、担い手確保の理念が色濃く反映されている。
 改正建設業法では、従来「建設業者は、施工技術の確保に努めなければならない」と定めていた第25条の27で、施工技術に加えて「建設工事の担い手の育成および確保」に努めなければならないという文言が加わった。
 一方、改正入契法では、ダンピングの防止に焦点を当てている。第3条4号として、「その請負代金の額によっては公共工事の適正な施工が通常見込まれない契約の締結が防止されること」を新設(改正品確法の第3条8項にも記載)。そのほか、第12条と第13条で、入札時に受注希望者が入札金額の内訳を記載した書類を提出し、それを発注者が確認しなければならないとした。

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