経済

建設経済の動向

自治体の2014年度予算 税収の増加が投資的経費を押し上げる

日経コンストラクション編集長 野中 賢

景気回復による税収増を背景に、2014年度は当初予算の規模が膨らんだ。
国の財政支援も引き続き手厚く、7割の都道府県で公共事業関連の予算が増加した。
防災事業やインフラの維持管理に多くの予算を振り向けつつ、国の新制度を利用して、建設会社の雇用拡大事業に取り組む自治体も多い。

 都道府県の2014年度予算を見ると、国の緊急経済対策や景気回復を背景に、公共事業関連の予算は増加傾向にある――。日本経済新聞社「日経グローカル」の調査で明らかになった。骨格予算を組んだ石川県、京都府、山口県を除く44都道府県のうち、投資的経費(社会資本整備などに充てられる経費)が前年度から増加したところが32自治体と、全体の約7割を占めた。なかでも、「5~9.9%増加」と「10%以上増加」という増加率の大きい2区分での伸びが目立つ(下図)
 44都道府県全体で見れば、投資的経費は対前年度比4.4%増。同0.2%増だった昨年度に比べて、大幅な増加となった。
 投資的経費が前年度から30%以上増えたのは大阪府(34.2%増)と奈良県(32.2%増)。例えば大阪府は同経費2,032億円を計上し、南海トラフ地震対策や都市基盤施設の維持管理など、必要性・緊急性の高い事業を進める。

■単独事業費は前年度比10%増

 一方、自治体が自ら支出する単独事業費の増加傾向も顕著だ。骨格予算を組んだ3府県を除く都道府県全体で、単独事業費の増加率は対前年度比9.8%。こちらも昨年度の同2.4%を大きく上回った。
 全体の8割近い34都道府県で前年度から増加し、増加率が最も大きかった徳島県は57.9%増。同県も大阪府と同様、南海トラフ地震対策が事業費を押し上げた。
 投資的経費や単独事業費を増やすことができた理由の一つは税収増だ。企業業績の伸びに伴い、法人事業税と法人住民税の法人2税や個人住民税の税収増が見込めることから、予算規模全体を拡大できた。法人2税の税収は都道府県全体で前年度比15.3%増、個人住民税の税収は同5%増に上る。
 国からの交付金も、これまでどおり手厚い。国土交通省所管の交付金は昨年度並みで、国の今年度当初予算を見ても、防災・安全交付金として1兆727億円を、社会資本整備総合交付金として9,145億円を計上している。これらの交付金は国の方針に沿って都道府県に配分される。

図 都道府県の投資的経費の対前年度増減率分布


■「地域人づくり事業」を活用

 投資的経費や単独事業費は、南海トラフ地震対策をはじめとした防災事業や、インフラの老朽化対策などに、多くが振り向けられている。
 防災では、防潮堤や水門の新設・耐震化のほか、緊急輸送道路の整備や改善などに取り組む自治体が見られる。インフラの老朽化対策に関しては、ハード面の取り組みだけでなく、データベースシステムの構築や点検技術者育成事業といったソフト的な事業も目立つ。
 2014年度予算で、建設業が抱える担い手不足対策に取り組む自治体も多い。そのよりどころとなるのが、厚生労働省が創設した「地域人づくり事業」だ。
 2013年度補正予算で、厚生労働省は1,020億円を計上した。同省から交付金を受けた都道府県や、その都道府県から補助を受けた市町村が、民間企業の雇用拡大などの取り組みを支援する仕組みだ。
 事業の内容は、大きく分けて「雇用拡大プロセス」と「処遇改善プロセス」の二つ。前者は、従業員を獲得するための施策で、中小企業のための合同採用説明会の開催、未経験者への教育・訓練、失業者の雇用など。後者は、既存の従業員に対する研修やコンサルティングなどだ。
 特に予算規模が大きいのが、前者の雇用拡大プロセス。国土交通省が都道府県を対象に実施したアンケート調査によると、回答があった41自治体のうち、6月末時点で38自治体が建設分野で雇用拡大の事業を実施していた。雇用予定人数は計1,315人で、予算総額は約38億円に上る。中小建設会社の注目度は高い。

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