経済

建設経済の動向

外国人建設就労者受け入れ事業の概要 報酬や従事できる業種をガイドラインで明示

日経コンストラクション編集長 野中 賢

短期的な人手不足解消に向け、外国人建設就労者受け入れ事業が来年度から始まる。
国土交通省は9月に、制度の詳細を記したガイドライン案を発表。
就労者を、技能実習を修了した「経験者」として処遇する必要があることを明記したほか、技能実習制度よりも厳しい水準で行う監理の概要を示した。

 建設業の技能労働者不足解消に向けた、外国人労働者の受け入れ。5月号の本欄で取り上げたとおり、政府は今年4月、外国人技能実習制度を利用して、実習を修了した外国人の日本国内での就労を認める時限措置を発表した。時限措置の適用期間は2015~20年度だ。
 来年度からの事業開始に先立ち、国土交通省は今年8月13日に「外国人建設就労者受け入れ事業に関する告示」(以下、告示)を発し、続いて9月11日には、告示の内容を具体的に示した「外国人建設就労者受け入れ事業に関するガイドライン(案)」(以下、ガイドライン)を発表した。
 ガイドラインから、外国人建設就労者受け入れ事業の詳細がみえてくる。ここでは、その内容について紹介していく。

■ 時限措置で最大3年の就労可能

図 技能実習制度と建設特定活動の概要


内閣官房発表資料をもとに作成

 まずは、現行の外国人技能実習制度と、4月に発表された時限措置の内容を簡単に整理してみよう。
 2010年から運用されている現行の外国人技能実習制度は、発展途上国の外国人に、日本国内での実習を通じて技能を習得させる仕組みだ。実習期間は最長で3年間。発展途上国への技術移転による国際貢献が主な目的だ。
 ただし、最近の建設事業の急増に伴う人材不足によって、こうした外国人技能実習生を労働力として期待する声が強まってきた。そうした背景から政府はこの4月に、建設業に限定した時限措置を発表。内容は、技能実習を修了した後に、外国人に「建設特定活動」としての就労を認めるというものだ。
 就労できる期間は、実習修了後に継続して働く場合は2年以内、修了後にいったん帰国して、その後1年以上たってから再来日した外国人については3年以内とした(右図)
 国土交通省が8月と9月に発表した告示とガイドラインは、この特定活動についての要領を定めたものだ。

■ 3年の経験に見合う報酬が必要

 では、ガイドラインのポイントを見ていこう。
 まずは、報酬額について。外国人建設就労者は日本国内で3年間の技能実習を積んでいることから、それに見合う報酬額を設定するよう明記した。例えば、受け入れ企業に3年間の経験を持つ日本人技能者がいる場合、その人の報酬と比較して適切である必要があるとした。そうした人がいない場合は、企業の就業規則などに基づいて支払うべき報酬額を提示することなど、処遇について細かく定めているのが特徴だ。
 従事できる作業の種類については、原則として実習を修了した建設分野の職種・作業と同一の業務であると定めた。工事の工程において分離できないなどの理由がある場合は、それ以外の職種・作業も可能としている。また、複数の職種に従事する就労者に対しては、職種ごとに報酬額を設定する必要があることを示した。
 そのほか、日本で受け入れ企業を監督・指導する特定監理団体について、認定要件や行うべき事項も示した。技能実習制度での監理よりも、体制を充実・強化することが狙いだ。例えば、監理団体としてだけでなく、役員や常勤職員個人にも、不正行為を行っていないことを求めている。また、転職を希望する外国人就労者がいる場合、不法就労などの問題が生じるのを防ぐため、転職に関する相談に応じることも盛り込んだ。
 ガイドラインについて国土交通省は、パブリックコメントを実施。11月から監理団体を対象とした説明会も始まる。告示は来年4月から施行されるが、4月からスムーズに受け入れを始められるよう、特定監理団体の認定などの部分に関しては、1月から前倒しで施行する。

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