経済

建設経済の動向

主要建設会社の2015年3月期中間決算 国内公共と海外で土木受注が大幅増

日経コンストラクション編集長 野中 賢

2014年11月に相次いで発表された建設会社の中間決算。
大手・準大手の決算内容を見ると、土木分野での受注の好調ぶりが目立った。
一方、各社とも人員不足のなか、施工能力が限界に達するとみて、今後は利益の見込める案件の受注に集中していく姿勢を見せる。

 上場建設会社の2015年3月期第2四半期決算(以下、中間決算)が、2014年11月に出そろった。それを、土木売上高順に並べたのが下表だ。データをもとに、当中間期の建設業の決算動向を見ていこう。
 土木売上高は、上位10社中7社で前中間期を上回った。また、全体の売上高を見ると、五洋建設を除く9社で増加。大成建設、大林組、西松建設の3社が10%以上の増収を記録するなど、全般的に好調だった。
 各社の完成工事総利益率も、前中間期に比べて伸びが目立つ。下表にない会社も含め、土木売上高上位20社のうち16社が前中間期を上回った。ただし、鹿島、大成建設の上位2社は数字を落とした。
 なかでも鹿島は、当中間期の建築の完成工事総利益率が-0.4%に転落。東日本大震災前後に受注した複数の民間工事で、労務費の高騰などが影響したとしている。その結果、当中間期の営業利益は56億円の赤字となった。

表 土木売上高上位10社の2015年3月期中間決算


上場建設会社の2015年3月期中間決算(単体)を、土木売上高順に並べた。カッコ内は対前年同期増減率(%)。金額は1億円未満を切り捨て、増減率は小数第2位を四捨五入。土木、建築以外の「その他」の値は表示していない。NIPPO、前田道路の土木の値は舗装を加えたもの。なお、不適切な会計処理の判明で決算の公表が遅れている日本道路はランキングの対象にしていない。


■ 外環道のトンネルが受注に寄与

 受注に目を転じると、売上高の数字以上に好調ぶりが目立つ。土木受注高は先の上位10社中9社で前中間期から増加。上位20社の中では17社が土木受注を増やしている。
 当中間期に、大型の土木工事が相次いで発注された影響が大きい。受注に寄与した工事として各社が挙げるのが、東京外かく環状道路都内区間のトンネルだ。大手4社がJVの幹事会社となって4工区の工事を受注。受注額はそれぞれ1,138億~1,510億円と巨額だ。JVには準大手の建設会社が名を連ね、幹事4社以外にも恩恵をもたらした。
 国内公共にとどまらず、海外工事の受注増も目立つ。例えば、五洋建設。シンガポール進出50周年を迎えて同国での工事に強みを持つが、当中間期は地下鉄工事や埋め立て工事といった土木工事のほか、同国保健省から総合病院工事も受注した。これらによって、海外土木受注高は前中間期比132%増、海外建築受注高は同572%増を記録。通年では、海外工事の受注高が過去最高に達する見込みだ。
 他方、建築工事の受注高は全般的に落ち込みが目立った。土木売上高上位4社が全て前中間期比でマイナスだったのに加え、11~20位の会社で前中間期を上回った会社は1社もなかった。前中間期は、消費税増税前の駆け込み需要が旺盛だったことから、その反動とみられる。

■通期の見通しはやや慎重

 中間決算の好調ぶりに対し、2015年3月期通期では、各社ともやや慎重な見方をしている。
 全体の売上高の見通しは、土木売上高上位10社のうち7社が対前期比で増収を見込むものの、増加率はほとんどが5%未満。当中間期に10社中7社で増加していた全体の受注高も、通期で増加を見込むのは4社にとどまる。
 足かせになっていると考えられるのが人員不足の問題だ。施工管理を担当する技術者の逼迫から、施工能力が限界に近付いていると考える会社も増えてきたようだ。「取れる工事は全て取る」のではなく、自社の施工能力を勘案しながら受注する工事を選別していくという姿勢が、控えめに見える受注高に表れている。
 選別に際して各社が重視するのは、やはり採算性だ。東日本大震災後に続いていた労務単価や資機材価格の上昇は、最近やや落ち着きつつあるとみられている。しかし、工事量の増加や円安の影響など、年度末に向けて懸念される材料もある。

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