経済

建設経済の動向

公共工事入札のトレンド 落札率が上昇傾向、指名競争復活も

日経コンストラクション編集長 野中 賢

国土交通省発注の直轄工事で、落札率が上昇している。
発注量が増えているのに加え、低入札調査基準価格が上がっていることが要因だ。
一方、自治体発注工事では、地元企業の育成を目的として、指名競争入札を復活させる動きが相次いでいる。

図 8地方整備局の総発注金額と平均落札率

 ここ数年、国土交通省発注の工事で落札率の上昇傾向が続いている。
 昨年10月に公表した「国土交通省直轄工事等契約関係資料」によれば、2013年度に全国の8地方整備局が発注した工事は1万826件(随意契約除く)で、平均落札率は91.92%。地整によるばらつきは小さく、最低が九州地整の90.32%、最高が中部地整の93.16%だった。
 8地整の発注工事について、過去5年間の平均落札率の推移を右図に折れ線グラフで表した。12年度までは90%前後だったが、13年度は一気に1.5ポイントも上昇した。

■ 発注量の大幅増で競争緩和か

 図には、8地整の総発注金額も棒グラフで示した。13年度の8地整の総発注金額は2兆884億円。12年度の1兆5,387億円から36%も増加した。この5年間を見ると、平均落札率と総発注金額の動きがほぼリンクしていることから、落札率上昇の原因は、発注増による競争緩和の影響とみることができる。
 もう一つ、落札率上昇の要因として考えられるのが、低入札価格調査を実施する基準となる「調査基準価格」の引き上げだ。
 国土交通省の入札では、ほぼ全ての案件で施工体制確認型の総合評価落札方式を採用。調査基準価格を下回ると、大抵は「施工体制評価点」が0点となり、事実上の失格となる。調査基準価格が落札価格の下限値となっていることから、その引き上げが落札率の上昇に直結するのだ。
 国土交通省の調査基準価格と、それに準じた中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)の算定式モデルは08年度以降、1~2年ごとに改定されている。
 現在は、設計価格(予定価格)の内訳のうち、直接工事費に0.95、共通仮設費に0.9、現場管理費に0.8、一般管理費などに0.55をそれぞれ乗じ、合計した金額となっている。これらの乗率が段階的に引き上げられてきた結果、一般的な工事の場合、調査基準価格は予定価格の9割近くに達している。

■ 指名競争でも落札率は変化なし

表 地元企業の育成を目的とした指名競争入札の例

 最近の入札のトレンドとしてもう一つ挙げられるのが、指名競争入札の復活だ。
 2000年代半ば、鋼橋談合事件などを受けて入札改革が進められた。国土交通省が原則として全ての案件を一般競争としたほか、多くの自治体が一般競争の割合を増やした。指名競争入札は発注者の恣意性が排除できないとして、入札改革の流れの中で大幅に減少したわけだ。
 しかし、08年のリーマン・ショック以降、補正予算を迅速に執行するため、入札手続き期間が短くて済む指名競争を一部で復活させる動きがあった。最近ではそれに加え、地域の担い手育成を目的として、自治体が指名競争入札を導入している例が出てきた(右表)。
 先行したのは宮崎県。250万円以上の工事は全て一般競争としていたが、13年7月から3,000万円未満の一部の工事に指名競争を導入した。
 指名での恣意性を排除するために、宮崎県では指名企業の選定に当たって客観的な評価項目を設定した。当該業種の完成工事高、現場から営業所までの距離など14項目を、それぞれ4段階で評価。総合的な評価を点数化して指名企業を決定している。
 14年3月末までの平均落札率は92.8%で、一般競争の92.2%と大差ない。一方、入札不調の割合は一般競争で13.3%、指名競争で3.8%と、入札不調は大幅に減少した。
 ただし、安直に指名競争入札を復活させるだけでは「一昔前」の入札に逆戻りする危険がある。指名基準の透明性確保が欠かせない。

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