経済

建設経済の動向

高速道路会社6社の道路改修事業 総額4兆円の大規模更新・修繕が動き出す

日経コンストラクション編集長 野中 賢

インフラの老朽化が全国的に問題となり、本格的に始まった維持管理の時代。
その目玉となる事業が、今年から動き出す高速道路の大規模改修だ。
構造物を造り替える「大規模更新」、劣化箇所をまとめて修繕する「大規模修繕」の2種類があり、高速道路会社6社を合わせると、約4兆円に及ぶ大事業となる。

 首都高速道路で最初に開通したのは1962年の京橋―芝浦間(4.5km)。63年には名神高速道路の栗東―尼崎間が、64年には阪神高速道路の土佐堀―湊町が相次いで開通し、いまや全国の高速道路網は約1万kmに及ぶ(高規格幹線道路の延長)。
 完成後50年が経過した構造物が増えたのに加え、交通量が当初の想定をはるかに超えている箇所も多い。都市部と幹線を中心に、高速道路の老朽化が問題になり始めている。

■ 首都高の第1弾が1月に公示

 国内には、旧公団系の高速道路会社が6社ある。日本道路公団の民営化で生まれた東日本・中日本・西日本の各高速道路会社のほか、首都高速道路会社、阪神高速道路会社、本州四国連絡高速道路会社だ。老朽化対策として6社全てが大規模な改修を計画しており、その総額は4兆円を超える(下表)。
 大規模改修には、橋梁の架け替えや床版の交換といった「大規模更新」と、劣化した箇所をまとめて修繕する「大規模修繕」の2種類があり、場所の特性に応じて使い分ける。本四高速は大規模修繕のみだが、その他の会社は大規模更新と大規模修繕の両方を実施する。
 既に事業が動き出しているのが、首都高速の大規模更新だ。
 首都高速道路会社は、同社が設置した「首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査研究委員会」(委員長:涌井史郎・東京都市大学教授)の提言を受け、2013年12月に更新計画を発表。大規模更新の対象として3路線の5区間(計約8km)を挙げ、概算事業費を約3,800億円と見積もった。
 その中で、1号羽田線の東品川桟橋・鮫洲埋め立て部の更新に先行して取り組む。まず14年12月に、工事概要や契約手続き案などの説明会を開催した。公示前にこうした説明会を開くのは異例のこと。大掛かりな難工事であることから、民間の技術力やノウハウを十分に生かせるように、公示前に建設会社に対して情報を提供することにした。
 続いて今年1月27日には、公募型プロポーザル方式に係る手続開始を公示。契約締結は7月を予定している。契約方式には、技術提案を審査して優先交渉権者を決定し、価格などを交渉した後に仕様書を確定する「技術提案審査・価格等交渉方式」を初めて試行する。
 主な工事内容は、本線の橋梁部・土工部の撤去や橋梁の新設、湾岸線とつながる八潮連結路の更新、迂回路の設置・撤去など多岐にわたる。施工中は、羽田線4車線の交通確保に加え、交差道路も一部を除いて通行止めできない。車線規制の時間にも制約が多い。
 工期は契約締結日の翌日から26年9月30日までと、五輪後も続く長丁場の工事だ。この区間の総事業費は、用地費を含めて912億円に上る。

表 高速道路会社の大規模改修の概要


各社の発表資料などをもとに作成

 

■ 阪神は修繕費が更新費を上回る

 このように、大規模更新は大掛かりな工事となることから、大手建設会社の独壇場になるだろう。一方の大規模修繕は、一つひとつの工事はやや小振りであると予想されるので、もう少し規模の小さい会社にも参画のチャンスがありそうだ。
 とはいえ、全体での金額は決して小さくない。6社合計で、大規模更新の費用が約2兆3,000億円なのに対し、大規模修繕も1兆8,000億円と巨額だ。なかでも阪神高速道路では、大規模修繕の費用が大規模更新の費用を上回っている。
 阪神高速の場合、補修しても構造物の健全性を引き上げられない箇所で大規模修繕を実施する。例えば、RC床版で損傷があれば桁を増設。鋼床版ではSFRC(鋼繊維補強コンクリート)舗装による補強、PC桁では外ケーブルによる補強、鋼桁では当て板補強などを施す計画だ。2015年度からの事業開始を目指す。

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