経済

日本経済の動向

公共工事の設計労務単価|3年連続引き上げで2000年の水準上回る

日経コンストラクション編集長 野中 賢

公共工事の予定価格を積算する基準となる公共工事設計労務単価。2013年度以降、法定福利費相当分を単価に含めるといった変更が行われ、長期低落傾向から一転、3年続けての引き上げとなった。2015年度は平均で前年比4.2%増となり、年度初めの4月を待たずに2月から適用されている。

図 公共工事設計労務単価の平均の推移


1日8時間当たりの単価。全国、全業種の単価の加重平均を表示。加重平均値は、2013年度の標本数をもとにラスパイレス式で算出した。14年度と15年度は、それぞれ14年2月と15年2月の改定値。国土交通省の資料をもとに作成

 建設業の入職者が思うように集まらない要因として、他産業に比べた待遇の悪さがしばしば挙げられる。実際、技能労働者の賃金水準の目安となる公共工事設計労務単価は、長期低落傾向が続いていた。
 しかし2013年度、その低落傾向に歯止めがかかった。国土交通省や建設関連の団体などが「担い手確保」に向けて講じている様々な対策の一環として、国は設計労務単価を前年度比15.1%増(全国、全職種の単純平均ベース。増減率については以下同じ)と、大幅に引き上げた。2014年度はさらに7.1%引き上げ、しかも年度初めの4月に先駆けて2014年2月から適用を開始した。
 そして今年1月30日には、2015年度の設計労務単価を発表。前年比4.2%増の平均1万6,678円(全国、全職種の加重平均ベース)とし、前年同様、前倒しで2月から適用することを決めた。設計労務単価は3年連続の上昇となり、「底」だった12年度に比べて、28.5%増えた。
 設計労務単価は1999年から2000年にかけて10.1%減と大きく落ち込んだ後、右肩下がりの状態が続いていた(右図)。それが、2013年度以降の3年連続の引き上げによって、ようやく2000年を超える水準まで回復したわけだ。
 なお、岩手、宮城、福島の3県では、東日本大震災の復興事業などで入札不調・不落が発生している状況に対応して、今年も他の都道府県に比べて引き上げ率を高めた。前年比6.3%増で、2012年度に比べると39.4%の増加となった。

賃金引き上げに直結するか

 設計労務単価は、国土交通省と農林水産省が毎年10月に実施する「公共事業労務費調査」の結果をもとに決められている。同調査は、公共工事に従事する労働者の賃金を県別、職種別に調べるもので、1970年から実施されている。
 先述のとおり、設計労務単価は1999年度から2000年度にかけて大幅に落ち込んだが、その要因は明確ではなかったようだ。
 ただ、1999年の労務費調査から、調査方法を一部変更したことが影響したとの見方がある。建設会社が記入した調査票を3省(当時は建設省、運輸省、農林水産省)が審査する前に、全ての工事現場に発注機関の担当者が出向き、作業内容や労働者数、作業日報などを確認したり、元請けと下請け双方にヒアリングしたりするなど、細かいチェックを実施するように改めた。調査の精度を高めたことが、結果的に単価下落をもたらしたとも言われている。
 設計労務単価が下落すれば予定価格が下がり、建設会社の受注金額は減り、労働者の賃金下落を招く。このような「負のスパイラル」が、その後の待遇悪化の一因となった。
 2013年度以降の単価引き上げは、こうした状況に対する危機感の表れだ。社会保険未加入企業の加入促進を狙い、法定福利費相当額を設計労務単価に含めるように変更したことで大幅な増額となった。
 ただし、これが労働者の賃金増加に結び付かなければ意味がない。
 全国建設業協会が昨年、会員企業1,410社を対象として実施した調査では、2014年8月1日時点で下請けとの契約で労務単価を引き上げた会社が6割を占め、引き上げを予定している会社も2割に達していた。他方、残る2割の会社は、「引き上げ予定はない」などと回答している。今後はこうした会社の動向を注視していく必要がある。

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