経済

建設経済の動向

土木工事積算基準の改定|一般管理費率を20年ぶりに引き上げ

日経コンストラクション編集長 野中 賢

 国土交通省は今年3月、土木工事積算基準の改定を発表し、4月から適用を開始した。
 一般管理費率と現場管理費率を引き上げたほか、2工種の歩掛かりの新設や、間接工事費の市街地補正の割り増しも実施。
 品確法に盛り込まれた「担い手の中長期的な育成・確保」が大きな狙いだ。

図 一般管理費率の改定


資料:国土交通省

 国土交通省が3月に発表した土木工事積算基準の改定は、大きく以下の四つの柱から成る。土木工事標準歩掛かりの改定、一般管理費率と現場管理費率の改定、間接工事費の市街地(DID)補正の改定、施工パッケージ型積算方式の拡充。まずは、これらの概要について見ていこう。
 については、「補強土壁工(大型長方形壁面材)」と「連続鉄筋コンクリート舗装工」の歩掛かりを新設した。維持修繕用の歩掛かりの見直しも行い、「道路打換え工」「欠損部補修工」の2工種について、施工数量が少ない場合の小規模施工歩掛かりを追加した。また、「補強土壁工」「締切排水工」「コンクリート工(砂防)」「コンクリート舗装工」「トンネル濁水処理工」の5工種で、現場の実態に合わせて日当たり施工量や労務・資機材の数量などを見直した。
 では、会社の経費や利益に該当する一般管理費と、協力会社への外注経費を含む現場管理費について、率をそれぞれ引き上げた。一般管理費率は工事原価の額に応じて、従来は7.22~14.38%の範囲で定められていたが、7.41~20.29%に引き上げた。工事原価500万円以下では、率が約6ポイント増加する(右図)。一般管理費率の引き上げは20年ぶりだ。
 また、現場管理費率は工事原価と工種によって異なるが、例えば道路改良工事の場合、これまで23.91~29.53%だったのを、24.71~32.73%に改めた。
 では、住宅密集地の場合、仮置きヤードの確保などに費用がかさむ傾向にあることから、「市街地(DID)」における間接工事費の補正係数を改定。「鋼橋架設工事」「電線共同溝工事」「道路維持工事」「舗装工事」の4工種を対象に、共通仮設費率を現行の1.3倍に、現場管理費率を同1.1倍に、それぞれ割り増す。ただし、東京23区や政令市などの「大都市」部は据え置く。については、小規模・人力工事や維持工事を中心に、17の施工パッケージを改定。さらに、入札書提出期限が15年10月1日以降の工事を対象に、111の施工パッケージを追加して、計319の施工パッケージを運用することも併せて発表した。

3億円の道路工事で予定価格は3%増

 こうした見直しは、14年6月に改正した「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)の趣旨にのっとるものだ。
 同法では、発注者の責務の一つとして、「担い手の中長期的な育成・確保」をうたっている。これを受けて、国土交通省が中心となって、公共工事設計労務単価の引き上げのほか、若手や女性を登用する入札方式の試行など様々な手を打っている。その一連の流れの中で、建設会社の適正な利潤確保に配慮して、積算基準の見直しが行われた。
 その意図が色濃く表れているのが、一般管理費率の引き上げと言えるだろう。国土交通省は、建設会社の財務指標を分析し、現状で赤字になっていない企業などの一般管理費を参考に新たな率を設定した。
 一般に、建設業の自己資本利益率(ROE)は他業種と比べて低い。保有機械の維持費を捻出するために、自己資本を切り崩している建設会社も少なくないという。国土交通省技術調査課は、今回の見直しで他業種のROEの平均値に近付くとみている。
 一般管理費率に加えて現場管理費率もアップしたことによって、同じ規模の工事では予定価格が上昇する。例えば、工事原価3億円程度の道路工事の場合、予定価格は3%ほど増加する。

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