経済

建設経済の動向

自治体の「歩切り」の実態|歩切り実施は4割、今後は自治体名公表も

日経コンストラクション編集長 野中 賢

積算に基づく金額よりも減額して予定価格とする「歩切り」。
2014年の「担い手三法」改正によって、その禁止が改めて明示された。
だが、国土交通省などの実態調査の結果では、歩切りを実施していた自治体は4割に上る。
同省は今後、歩切りをやめない自治体名の公表も検討している。

 2014年に一斉に改正された「公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)」、「建設業法」、「公共工事の入札および契約の適正化の促進に関する法律(入契法)」。これら「担い手三法」の改正の狙いは、建設会社の適正な利潤を確保し、将来の担い手確保に資すること。発注者が実施すべき様々な項目を定めていて、その柱の一つが予定価格の適正な設定だ。同年6月施行の改正品確法第7条に盛り込まれた。
 これを受けて同年9月には、入契法の適正化指針を変更。積算に基づく金額よりも減額して予定価格とする「歩切り」が、改正品確法第7条に違反することを明記した。これまで慣例的に行われてきた歩切りが、改めて法律違反であると示されたわけだ。

東北や九州では半数以上の自治体で歩切り

図 「歩切り」に関する自治体への調査結果


資料:国土交通省、総務省

 法律違反とされた歩切りは、こうした法制度の改正を受けて根絶されたのか。国土交通省と総務省は共同で、全国の自治体を対象に実態調査を実施。15年1月1日時点での状況を取りまとめ、4月28日に公表した。その結果、1,788自治体のうち、歩切りを行う場合があると回答した自治体が757カ所、全体の42%に上ることが分かった(右図)。
 地域差も大きかった。例えば北海道地方の自治体では、歩切りを行う場合があるとした回答は9%にすぎなかったのに対し、九州地方では57%、東北地方では54%と、半数を超えていた。
 歩切りをする理由は二つに大別できる。一つが、右図に示した「端数処理など」。これは、事務の効率化のために設計金額の端数を切り下げて予定価格とする場合や、予定価格の漏洩を防ぐために設計金額に無作為で発生させた係数を乗じて調整するといった方法だ。国土交通省では、これらについては「やむを得ない場合がある」としている。

「慣例や財政健全化」を理由に実施

 もう一つの理由が、「慣例、自治体財政の健全化などのため」というもの。公共事業費を削減したり、追加工事に備えて予算の一部を留保したりといった目的による減額で、459自治体が該当した。かかってしかるべき工事費を、いわば自治体の"懐具合"に応じて減額するわけだ。当然、国土交通省も、このような理由による歩切りには問題があると考えている。
 調査では、こうした目的で歩切りを実施している自治体に対して、見直す予定があるか否かも尋ねている。459自治体のうち303自治体は見直す予定があると回答しており、うち259自治体は15年4月までに実施する予定だ。実際、石川県や栃木県のように、歩切りを実施していた県内の市町と県が個別に交渉し、歩切り撤廃の合意を得ている例もある。
 他方、見直しについて「未定」としたのが149自治体、「予定がない」としたのが7自治体あった。国土交通省ではこれらの自治体を中心に、今夏をめどに追加調査し、その結果を踏まえて個別にヒアリングを実施する考えだ。さらに、それでも改善されない場合には、自治体名の公表も視野に入れている。

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