経済

建設経済の動向

自治体の入札制度運用状況|依然として多い予定価格の事前公表

日経コンストラクション編集長 野中 賢

国土交通省などは7月28日、毎年実施している入札制度の運用状況調査の結果を公表。
総合評価の導入やダンピング対策が、自治体へも徐々に浸透していることが明らかになった。
予定価格の公表時期も「事前」から「事後」への切り替えが進むが、歩みは遅い。
今後、品確法改正による変化がどのように表れるのか注目される。

 調査は、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(入契法)に基づき、発注機関の入札契約適正化の取り組みについて毎年実施しているものだ。この7月に公表されたのは、2014年4月1日時点での取り組みを対象とした「平成26年調査」の結果。質問項目は、「総合評価方式の導入状況」、「ダンピング対策の実施状況」、「予定価格の公表時期」などだ。
 国の機関や特殊法人では入札契約適正化の取り組みが一様に進んでいるが、自治体ではばらつきが大きい。ここでは、自治体の取り組み状況の変化について、過去のデータも交えて見ていこう。

市区町村でも6割強で総合評価を導入

 入契法は2001年4月に施行され、同法や同法に基づく適正化指針はこれまで何度か改正されてきた。2006年6月の適正化指針の改正では、目玉として一般競争入札の拡大や総合評価方式の拡充が盛り込まれた。
 例えば総合評価方式の導入率を見ると、適正化指針改正前の2006年4月時点で、都道府県では全自治体で導入済みだったものの、政令市では66.7%、市区町村では2.0%にすぎなかった。それが、政令市は2007年9月時点で100%に達し、市区町村も2014年4月時点で63.2%まで増えた。「導入済み」には試行的な導入も含まれているが、総合評価方式が規模の小さい自治体まで広がってきた様子が分かる。
 ダンピング対策も浸透してきた。低入札価格調査制度または最低制限価格制度を導入している市区町村は、2006年4月の73.5%から、2014年4月には88.4%まで増えている。

判断が難しい予定価格の公表時期

 入契法の適正化指針に沿って予定価格を公表する自治体は増えており、2014年4月時点で非公表の自治体は1割未満と少ない。しかし、難しさが残るのが公表するタイミングだ。
 ここ数年、各地で官製談合が発覚しているが、その中で目立つのが、発注機関の職員が予定価格や最低制限価格を入札参加者に漏洩したケースだ。それを防ぐ目的で、予定価格を事前公表している自治体は多い。一方、2014年6月に改正された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)に基づく運用指針では、予定価格は原則として事後公表することとしている。適切な見積もりをせず安易に入札した会社が落札し、適正な競争が損なわれるといった恐れがあるからだ。
 最新の平成26年調査と、5年前の平成21年調査のデータを比較すると、事前公表の割合が減って事後公表の割合が増えている(下図)。ただし、これは品確法改正前のデータだ。品確法の運用指針に沿って事後公表が増えるかどうか、次回の調査結果が注目される。

図 予定価格を公表する時期


国土交通省、総務省、財務省が発表した「入札契約適正化法に基づく実施状況調査の結果」をもとに作成。2009年9月のデータは「平成21年調査」(2010年2月発表)から、2014年4月のデータは「平成26年調査」(2015年7月発表)から。それぞれ、回答した自治体の割合を示した。「事前公表」は、事前公表を1件でも実施している自治体をカウントした。事後公表も同様。事前公表と事後公表を併用している自治体は「事前公表」と「事後公表」の両方に含まれるので、「事前公表」+「事後公表」+「非公表」の値は100%を超える。回答数は、2009年9月が47都道府県、18政令市、1779市区町村、2014年4月が47都道府県、20政令市、1722市区町村

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