経済

建設経済の動向

2015年度の建設投資の見通し|政府建設投資は前年度比14%減

日経コンストラクション編集長 野中 賢

建設投資のピークは1992年度の約84兆円。そこから右肩下がりで減り続けたものの、2011年の東日本大震災以降、復旧・復興や国土強靱化で増加基調にあった。
しかし、国土交通省が発表した15年度の建設投資見通しは、前年度比5.5%減の約48.5兆円。
なかでも、政府投資が前年度比マイナス14.2%と、大幅減となる見通しだ。

 国土交通省は2015年10月2日、「平成27年度建設投資見通し」を発表した。建設投資全体では、2015年度は前年度比5.5%減の48兆4,600億円と、5年ぶりに減少。50兆円を割り込むのは、12年度以来3年ぶりのことだ(下図)。
 政府・民間別に見ると、政府投資が20兆1,600億円と前年度比14.2%減、民間投資が28兆3,000億円と同1.8%増。民間投資が堅調に推移する一方、政府投資は14年度の補正予算の額が小さく、繰り越し執行が少なかったことが影響して大幅減となる見込みだ。
 建築・土木別では、建築投資が25兆9,300億円(前年度比0.3%増)、土木投資が22兆5,300億円(同11.4%減)と、明暗が分かれた。政府土木投資は公共事業が14.2%減、鉄道や電力といった公共事業以外の事業が14.0%減と、いずれも低調だ。
 住宅投資はここ数年、消費増税の影響で変動が激しかったが、15年度は落ち着きそうだ。14年4月の消費税率引き上げを前に、13年度は駆け込み需要で事業量が急増した。国土交通省の住宅着工統計によれば、13年度の新設住宅着工戸数は前年度から10.6%増。その影響もあり、民間住宅投資は15兆7,900億円と前年度から12.0%増加した。14年度はその反動で、新設住宅着工戸数が10.8%減少し、民間住宅投資も同7.8%減の14兆5,600億円まで落ち込んだ。
 反動が収束するとみられる15年度は、民間住宅投資が前年から微増し、住宅投資全体では前年度比1.3%増の15兆3,900億円になる見通しだ。

図 建設投資額の推移


国土交通省の「平成27年度建設投資見通し」をもとに作成。2013年度と14年度は見込み、15年度は見通し

 

関東、沖縄は微増も6地域で大幅減

 建設投資の増減の度合いは全国一律ではなく、地域による差が大きい。北海道、東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州、沖縄の10ブロックに分けて見ていくと、15年度の建設投資が前年度より増加すると見込まれるのは関東、沖縄の2ブロックのみ。中国地方の14.4%減を筆頭に、6ブロックで10.0%以上の減になるとみられる。また、東日本大震災以来4年連続で大幅増だった東北地方は前年度比2.1%減と減少に転じ、復興需要がピークを越えたことがうかがえる。
 建設投資に一時の勢いがなくなってきたことは、多くの建設会社も感じ取っているようだ。
 日経コンストラクションでは毎年、主要な建設会社を対象に、各社の決算内容について尋ねるアンケート調査を実施している。今年の調査では、14年4月~15年3月に迎えた決算期で、前期に比べて69%の会社が売上高が増加したと回答した。他方、15年4月~16年3月に迎える決算期の売上高の見込みを尋ねたところ、「増える」と予測する会社は36%にとどまり、「横ばい」が39%、「減る」が25%だった。依然、「増える」が「減る」よりも多いものの、14年度の決算期に7割の会社が増収だったのに比べると、慎重な見通しを持つ建設会社が多かったと言える。

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