経済

建設経済の動向

広がる社会保険加入促進策|技能者の加入率低くても全員分の福利費負担

日経コンストラクション編集長 野中 賢

国と業界を挙げて、社会保険加入促進の動きが強まっている。
国土交通省は、直轄工事で元請けと1次下請けを保険加入企業に限定し、2017年度をめどに許可業者の加入率100%を目指す。
下請け会社の加入促進に向けて、新たな契約方式を採用する建設会社も出てきた。

 建設業の担い手確保を目指し、国は様々な対策を実施している。例えば、3年連続して公共工事設計労務単価を増額。2015年4月には土木工事積算基準を改定し、一般管理費率と現場管理費率を引き上げた。いずれも、2014 年6 月に改正した「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)の趣旨にのっとり、建設会社が適正な利潤を得られるようにするための措置だ。
 担い手不足には、公的保障が整っていない点も影響していると考えられることから、国土交通省は社会保険への加入を促す対策にも力を注いできた。設計労務単価の増額も、法定福利費相当額を設計労務単価に含めるように変更した結果だ。他方、2015年8月以降は、直轄工事において元請けと一次下請けを保険加入企業に限定。未加入会社が公共工事に参入できない仕組みを整え始めている。自治体でも同様の対策を実施するところが増えてきた。
 こうした対策によって、社会保険の加入率は高まってきた(下図)。企業単位で見ると、元請けの加入率は100%に近づき、3次下請けでも8割を超えた。

図 社会保険加入状況の推移(元請け・下請け次数別)


雇用、健康、厚生年金の3保険全てに加入している企業と労働者の割合。数値は各年の10月時点(資料:国土交通省)

 

法定福利費の見積もりを工事費と別枠で

 ただし、ここからが正念場だ。国土交通省は、2017年度をめどに建設業許可業者の社会保険加入率を100%にする目標を掲げるが、実現にはさらなる対策も必要となる。
 そんななか、注目を集めているのが清水建設の取り組みだ。同社は2015年10月1日から、下請け会社に属する技能労働者の実際の社会保険加入率にかかわらず、全員が加入するのに必要な企業負担分の法定福利費を下請け会社に支払う契約を開始した。契約する下請けに保険未加入の技能者がいても、加入率100%相当になるよう上乗せして支払う。
 対象は、リース契約を除いた全ての業種で、警備や墨出し、レッカーなども含む。法定福利費の負担額を算定するための根拠となる現状の加入率には、1次下請けと、その会社が定常的に取引している2次下請けの平均値を採用する。
 1次下請けには、企業が負担する法定福利費を工事費と別枠で明示した見積書を提出してもらう。清水建設は、現状の加入率をもとに、加入率100%に当たる法定福利費を算定し、それを別枠で明示した下請負工事契約を結ぶ。別枠計上が難しいという企業や業種によっては、同社が算出方法を指導する。
 清水建設は下請け会社に関して、16年度に企業単位で、17年度に労働者単位で加入率100%を達成することを目標としている。ただし同社によると、未加入の企業や技能者に加入の強制はしない考えだ。

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