経済

建設経済の動向

建設現場の生産性向上|ICT活用などで生産性の5割向上狙う

日経コンストラクション編集長 野中 賢

就業人口の減少と労働者の高齢化に悩む建設業界。
その対策の切り札として、「建設現場の生産性向上」に注目が集まっている。
国は新戦略「i-Construction(アイ・コンストラクション)」を掲げ、ICT(情報通信技術)の活用や部材のプレキャスト化で、生産性を高めていく方針だ。

 石井啓一・国土交通大臣は2015年11月24日の記者会見で、「i-Construction」への取り組みを表明した。これは、国土交通省が進める建設現場の生産性向上に関する新たな戦略。2016年初の記者会見でも、「本年を『生産性革命元年』と位置付け、国土交通省の総力を挙げ、生産性の向上に向けた取り組みを進めたい」と、生産性向上に本腰を入れる姿勢を強く示した。

 

2025年までに100万人超の技能労働者が離職

図 2025年に必要な技能労働者数の予測


日本建設業連合会が2015年3月に発表した「再生と進化に向けて~建設業の長期ビジョン」をもとに作成。総務省の「労働力調査」をもとに推計している。四捨五入の関係で、内訳と合計が一致していない箇所がある。日建連では、新規入職者などで補う必要がある112万~134万人のうち35万人分を、生産性向上によって省人化することを目標としている

 背景にあるのは、依然として深刻な担い手不足だ。建設業就労者数は1997年の685万人(年平均)から、2014年は505万人(同)まで26%減少している。他産業に比べて高齢化も顕著で、今後も大幅な増加は見込めない。
 また、日本建設業連合会が昨年3月に発表した「建設業の長期ビジョン」では、今後の技能労働者の動態について予測している。その予測によれば、2025年度までに必要になる技能労働者の数は328万~350万人。2014年度時点では343万人だが、2025年度までの間に高齢者の引退を中心に128万人程度が離職する(右図)。差分である112万~134万人は、若年層を中心とした新規入職者で補う必要があるが、若者の絶対数が減り続けている今、実現は困難だ。
 このギャップを埋める切り札として期待をされているのが生産性向上というわけだ。石井大臣は昨年11月の記者会見で、「技能労働者1人当たりの生産性を将来的に5割向上できる可能性がある」と述べている。
 「i-Construction」では、機械土工や舗装、場所打ちコンクリートのように、技能労働者が多い作業分野に着目している。国土交通省の資料によると、土工事やコンクリート工事では、単位数量の施工に要する作業員数が過去30年間でほぼ変わっていない。このように、技能労働者が多く、かつ生産性の向上が進んでいない分野に重点を置いて対策を講じる。

 

基準類の整備や施工時期の平準化も推進

 対策の目玉の一つがICTの活用だ。国土交通省はこれまで、情報化施工とCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)という2本の柱を掲げて、様々な検証・試行を進めてきた。「i-Construction」はこれらを含めて工事プロセスをより全体的・包括的に捉えたうえで、ドローン(無人航空機)や三次元測量データ、無人化・自動化施工技術など、従来よりも幅広く要素技術の活用を目指す。
 もう一つの目玉が、効率的な工法の採用による省力化や工期短縮。例えばコンクリート構造物の場合、鉄筋のプレハブ化や型枠のプレキャスト化によって現場打設作業を省力化したり、部材そのものをプレキャスト化して工期短縮を図ったりする考え方だ。
 「i-Construction」には、ICTの活用を前提に、施工管理や数量算出などに関わる基準類の整備、施工時期の平準化も方針として盛り込まれている。基準類の整備には16年度から乗り出す。
 国土交通省は、有識者で構成する「i-Construction委員会」(委員長:小宮山宏・三菱総合研究所理事長)を2015年12月に組織。国土交通省は同委員会での議論を踏まえて、2016年3月末までに取り組みに関する方向性を示す見通しだ。

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