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女性登用モデル工事で見えてきた実態|女性技術者は不足するも"入職予備軍"急増

日経コンストラクション編集長 野中 賢

国土交通省や自治体で、女性技術者の登用を促すモデル工事の試行が始まっている。
しかし、女性技術者の数がまだ少なく、入札参加者が集まりにくい点が課題だ。
一方、建設系の学科に所属する女子学生の割合は急増。建設会社には採用のチャンスが広がる。
女性にとっても、入社後すぐに現場の第一線で活躍できる可能性が高まっている。

 

 ここ2~3年、建設業界での女性の活躍を後押ししようと、官民で様々な取り組みを実施してきた。その一例が、国土交通省が2014年度から試行を始めた「女性技術者の登用を促すためのモデル工事」。予定技術者として、女性技術者の配置を入札参加要件に設定しているのが特徴だ。

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15年度の女性登用モデル工事では入札参加者「1~2者」が過半

 第1弾は、14年6月に東北地方整備局が公告した「東根地区上部工工事」。その後も各地方整備局で同様の方式を試行し、14年度は12件、15年度は16件のモデル工事を実施した。
 試行が増えるにつれて課題もはっきりしてきた。大きかったのが、根本的な問題である「入札に参加できる会社が少ない」という点だ。当初から懸念されていたとおり、現場に配置する女性技術者がやはり不足していたのだ。
 今年3月に開催された国土交通省の「総合評価方式の活用・改善等による品質確保に関する懇談会」では、同省が15年度に試行した女性登用モデル工事での入札参加者数が報告されている。資料によれば、16件のモデル工事の中には入札参加者が9者もいた案件があったものの、かなり珍しいケースだったようだ。参加者が「1~2者」だった案件が9件と過半を占め、そのうち3件は1者応札案件だった。参加者数の平均は3者。参考値として示された14年度の一般土木工事全体の平均入札参加者数が7.4者だったのに対し、半分以下にとどまっている。モデル工事とはいえ、競争性が確保されているとは言い難い状況だった。

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建設系学科の女子学生が急増 1万人を超え女性比率も2割に迫る

 モデル工事の実施で女性技術者の少なさが改めて浮き彫りになった形だが、この状況は近い将来、改善される可能性がある。実は、土木や建築の道を志す"入職予備軍"とも言える女子学生が急増しているのだ。
 文部科学省が毎年実施している学校基本調査では、学科ごとの男女別在籍人数を公表している。「土木建築工学」の項目を見ると、ここ3年間で女子学生の割合が急上昇し、15年度は18.3%と過去最高を記録した(下図)。男子学生がピーク時の1990年代後半から4割も減ったのに対し、女子学生は7年ぶりに1万人を超え、ピーク時に迫る勢いだ。
 女性の大学進学率の大幅な上昇が背景にあるのは確かだが、「大学全入時代」で学校や学部・学科選びの自由度が比較的高いなか、建設系の学科を選んだ女子学生が増えている点は特筆に値する。建設会社は以前に比べて、女性の採用が容易になるだろう。他方、女子学生にとっては、入社してすぐに第一線で活躍できるチャンスが広がっている。
 ただし、活躍の場がモデル工事だけしか与えられないのなら、建設業界も入職した女性も、ともに不幸になる。そもそも、性別を入札要件に据えることへの異論も存在する。モデル工事を一つのステップとして、女性が「女性として」だけでなく、「技術者として」活躍できる業界に、本気で変わることが求められている。

図 大学の建設系学科に所属する学生数と女子学生の割合


文部科学省の「学校基本調査」をもとに作成。「関係学科別学生数」のうち、平成元年度(1989年度)以降の「土木建築工学」の学生数の推移を示した

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