基金の活動

第18回建設業経営者研修のご案内

若年者の確保・人材育成をテーマに「第18回建設業経営者研修」を開催

(一財)建設業振興基金 構造改善センター

 当基金は2月10日に東京都中央区の浜離宮建設プラザにおいて、建設業経営者、後継者、経営幹部を対象とする「建設業経営者研修」を開催しました。全国各地から例年を大きく上回る60名にご参加いただき、18回目となる今回は、「若い力が会社を変える、活力ある組織と経営のあり方を探る」と題し、建設産業において喫緊の重要課題である若年者の確保・人材育成をテーマに講演とパネルディスカッションを行いました。

 

 

福井氏

講義:「多業種共同の教育訓練、工業高校と連携した出張教育の取組について」
講師:福井 正人 氏

 福井建設株式会社 代表取締役社長、職業訓練法人広島建設アカデミー 理事長
昭和45年、広島県生まれ。躯体工事、建築一式工事をメインとする福井建設の三代目社長。多職種の専門工事業者が共同で教育訓練を実施する職業訓練法人広島建設アカデミーの理事長として若手技能者の育成に努める。この他、協同組合中国建設専門工事業協会理事長、中国建設躯体工業連合会会長も務める。

福井氏 講演資料

 

 ただいまご紹介に預かりました、広島で福井建設の代表をしています福井です。よろしくお願いいたします。私は職業訓練法人広島建設アカデミーで理事長も拝命しており、今日はアカデミーの説明と、何らかのアイディアを提示できればと思っております。私としては、これを全国的に展開できないかなと思っております。

○広島建設アカデミーの特徴「複数企業連携」

 広島建設アカデミーは専門工事業者で、主にとび、大工、鉄筋と躯体職種の集まりです。見ての通り私は若輩でございます。若輩の私が、なぜ理事長をさせられているかといいますと、昭和45年、福井建設の中で独自に行っていた高等職業訓練校という企業内訓練校を作りました。これがアカデミーの前身です。当時は高度成長真っ盛りで、全国的に専門工事業者の企業内訓練校ができました。ですが、現在、ほとんどの企業内訓練校はなくなってしまいました。昭和45年、高度成長真っ盛りのときに職人が足りなくなりました。その後オイルショックがあり仕事もなくなった。そんななかでも当社はなんとかやりくりをしながら10年間がんばって訓練校を続け、昭和55年には鳶会社が数社集まり、この任意団体で「広島建設共同職業訓練校」を発足しました。その後平成1年には団体構成員が10社になり、名称を「広島建設アカデミー」に変更しました。
 当アカデミーでは訓練施設を持っていません。授業のあるときにだけ、東広島地域職業訓練センターを借りて授業を行なっています。「施設をつくる」のではなく「借りる」というやり方でなら、今まで職業訓練ができてこなかったという他の地域の方でも真似できると思います。
 訓練生はアカデミーの会員企業から派遣された社員で、研修期間中を全寮制で過します。現在の会員企業は23社で、型枠業者やクレーンなど様々な職種がいらっしゃいます。
 私が会社を継いだのは平成7年です。ちょうどバブルがはじけた頃でしたので、政府が景気対策として建設発注量を増やしました。アカデミーの人数はこの時が一番多く、入校数65名、修了生55名で、会員は51社ありました。その後メンバー数も徐々に減り続け、平成12~17年は低迷しました。
 以前アカデミーでは新入社員教育に丸1年費やしており、半年は座学、残り半年がOJTでした。その後、不況の影響で状況は厳しくなり、平成11~14年はカリキュラムを変え、3ヵ月の座学と9ヵ月のOJTにしました。
 しかし、教育訓練の助成金というのは生徒が1年間在籍しなければいただく事ができません。途中で辞めてしまった生徒の給料は会社負担なのです。あまりにリスクが大きいので、平成14年からは現在の形である50日間の集合訓練にしました。訓練負担金は1人あたり25万円です。392時間新入社員を教えます。50日間の給料は県と厚労省からの助成金でほとんどまかなえます。今年度から法律が変わりますので、今まで助成金が8,000円くらい出ていたところが4,000円と半減するので、多少費用がかかるようにはなりますが、それでもまだまだメリットはあります。我々のような中小企業は各社で独自に新入社員研修をやるのは難しいのですが、二十数社も集まって企業内訓練を行なえば、集合訓練は可能なのです。新入社員研修をするのとしないのとでは大きく差がでます。彼らは違う会社の仲間でありながら、同期生という意識が芽生えるのです。横のつながりを持ち、非常にいい関係を築いてくれます。
 現在、訓練生は各社の制服を着て授業を受けます。授業は鉄筋の2級の課題などです。型枠の授業では鉄筋を組ませて、実際に建物をつくります。前回は当社の加工場を使いました。訓練生はあくまで各社の「社員」ですから、学校の授業とは違って、きっちり5時まで勉強します。

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○工業高校への出張教育を始めた想い

 平成19年からは地元の工業高校とも連携し、熟練技能者を学校に派遣して、生徒に実技指導などの職業説明会を行う出張教育を実施しています。学生が建設の職種を良く知らずに入社して、「思っていたのと違う」と辞めてしまうケースが非常に多いのです。これはまずいと思いました。
 たとえば当社に面談に来た就活生は、「躯体工になりたくて来た」と言います。わたしが「躯体って何?」と問うと、分からないのです。他にもあって、たとえば鉄筋工なら、鉄筋という言葉は知っていても、学校で習うのは図面という二次元の世界なので、鉄筋が結束線でつながれていることすら知らないのです。ミスマッチが重なると、入職後3年も経たないうちに辞めてしまう。自分が思っていた職種と噛み合わないのです。ですから工業高校の先生とお話しをして、職業説明会の時間をいただいたのです。職業説明会では午前中に左官と鳶の座学、午後からは鳶の実習です。この工業高校は2クラスあったので、もう一方のクラスでは午前中に鉄筋と型枠の座学、午後に型枠の実習をしました。鳶と左官に関しては高校生でも取れる3級の資格がありますので、その課題を実際にやっていただきます。
 型枠を学生に組ませるときには、実際の現場での作業をイメージできるように細かく説明をしながら、体育館の柱と梁と同じ形のものをつくらせます。鉄筋ではもち網を組みます。
 この職業説明会は他にも福山工業高校と府中東工業高校の2校でやっています。今年は宮島工業高校でも行い、4校で展開していこうと思っています。教え子が当社に入社したケースもあります。非常に効果が大きいので今後も続けてやっていくつもりです。
 工業高校には実は女の子も多く、この職業説明会で確実に専門工事業に興味を持つ子がいるのです。非常にイキイキとした顔を見せて、今までの授業とはまるで違うと先生方がびっくりするほどです。しかも確実に職業を理解します。就職活動での面接でも、明確に「この職種になりたいからこの会社に入りたい」と言えるようになるのです。そういう子は辞めません。平成19年にこの取り組みを始めて以降、当社に入職した教え子はいまだに辞めていません。この職業説明会は、建設業界に興味を持ちながらもその知識と技術を身につけることができず、取っ掛かりすら分からない子になんとか道を開いてあげたいという思いで始めました。
 この職業説明会は様々な地域の方が興味を持って取り組んでいると聞きます。中国地方ではたまたま福井建設がやっているだけです。各地区で、各県で、ちょっと汗を流してくれる会社があれば、この取り組みは誰でもできるのです。

○少子化を真剣に考える

 今、確実に若い子は減っています。5年後に業界に入ってくるのは、今の中学校2年生です。就労人口のピークだった平成7年頃、就労人口は600万人。就労人口の10%にあたり、すなわち新卒者の10%が建設業に入ってきていました。それが平成20年には新卒者の5%、3万人にまで減少しています。おそらく5年後には3%ほどでしょう。たったそれだけしか新卒者が入ってこないのです。さらに5年後に入ってくる新入社員は、今の小学校2~3年生です。この間私は地元の小学3年生を連れて職業体験として工場見学会に連れて行ったのですが、愕然としました。参加した生徒がたったの15人だったのです。先生方に「連れていくクラスと行かないクラスがあるのですか?」と聞くと、「これだけしか生徒がいないのです」とおっしゃるのです。皆さんの地元の小学校3年生や中学校2年生を見てください。そこから就職してくる子供は、たったの3%。30人クラスのなかで、1人入るか入らないかなんです。それを真剣に考えたときに、ちょっと汗をかいて取り組んでくれる会社が出てきてくれば、我々の業界は確実に変わります。建設業は確実にやりがいのある仕事です。仕事だって今後減ったとしても、未来永劫なくなることはないのです。専門工事業者の我々にできることは、人を育てることだけなのです。それをなんとか皆さんに応援していただけたらと思います。ありがとうございました。

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