広報

建設産業の電子商取引

建設企業の実践的広報

日経BP社建設局長 宮嵜 清志
作家・土木史研究家 高崎 哲郎
仕事が取れる名刺の専門家 名刺協会理事 福田 剛大
株式会社KeyPro Creative 高橋和也

広報とは宣伝(ポスター、チラシ、CMなどの広告)と異なり、さまざまな企業活動をPRする活動のこと。基本的に、お金をかけずに、広く世の中に訴えかけていきます。例えば、昨年の東日本大震災では、建設関連企業が各地で復興支援に取り組みましたが、目立ったのは自衛隊の活動ばかりで、建設各社が話題になることが希少でした。「建設業界の広報はどうなっているのか?」という指摘も仕方がないでしょう。そこで今号の特集は、これからの建設企業の広報のあり方を考える「建設企業の実践的広報」を取り上げます。巻頭では、日経BP社建設局長の宮嵜清志氏に、建設業の広報における課題と実践的手法、考え方のヒントなどを伺いました。

中小建設企業はもっと地元を意識して地域社会と連携した広報に取り組むべき

日経BP社建設局長 宮嵜 清志 氏

 

建設業界の広報における3つの課題とは?

日経BP社建設局長 宮嵜 清志 氏―建設業界の広報について、宮嵜さんはどのような印象をお持ちですか?

宮嵜 2003年から2008年頃まで、国交省が中部や近畿地域で展開した『みちぶしん』というミュージカルを思い出します。「道路整備を円滑に進めるための普及啓発活動」の取り組みでしたが、国民から税金の無駄遣いと一斉に批判を浴びました。そのあたりから業界全体が広報活動に少し及び腰になっていたのかもしれません。それが露呈したのが、東日本大震災の復興支援活動でした。

―というと?

宮嵜 自衛隊ばかりがクローズアップされ、建設業各社の活動はほとんど見向きもされなかったでしょう?弊社の『日経コンストラクション』が調べた「被災地支援で、より大きく貢献したと思う団体・組織などは?」というアンケートでは、自衛隊がダントツで建設業は下位にとどまりました。でも、実際に瓦礫の山を重機でならして道を作ったのは建設業の方々です。道がなければ自衛隊も活動できませんからね。やり方次第ではもっとスポットライトが当たったはずです。

―本当にそうですね。どこが問題だとお考えですか?

宮嵜 建設業界の新しい広報のあり方を考えるに当たって、私は課題が3つあると考えています。「誰に伝えているのか」、「イメージアップなのか、受注増につながる営業活動の一環なのか」、それから「中小企業は大企業と同じでいいのか」です。ここをもう一度見直してみることが重要です。

 

誰に伝えたいのかそれがよく分からない

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―もう少し詳しく教えてください。

宮嵜 1番目の「誰に伝えているのか」ですが、「誰に伝えたいのか」と言い換えてもいいでしょう。例えば、大手建設業各社からプレスリリースが出されますが、流す相手が業界中心ですから、結果的には読むのは同業者が大半です。でも、自分の会社の新計画や新技術を同業者に知らせて何の意味があるのでしょうか。発信する相手を間違えていないか、という疑問があります。

―プレスリリースの内容はどうですか?

宮嵜 正直に言って、とても「親切」とは言えません。専門用語の羅列で、肝心の「業界外」の一般の人には全く理解できないでしょう。全部書き直してあげたくなるくらい。その点においても、誰に読ませたいのか意図が非常に不鮮明です。

―2番目はどうでしょう?

宮嵜 そもそも広報活動が「イメージアップなのか、受注増につながる営業活動の一環なのか」そこがあやふやな感じがします。その背景には、建設業特有の事情があるかもしれません。近年、公共事業はもとより、民間でも大きな案件の受注は入札で決まります。ということは、企業イメージの向上や新技術の披露が直接受注に結び付くわけではなく、そこに各社の迷いがあるのではないかと思います。これは建設業会特有の現象でしょう。

―3番目の課題ですが、大企業はマスコミを集めて記者発表をしたり、プレスリリースを流せますが、中小企業はそうもいきません。

宮嵜 ええ、でも中小企業は大手と違い、土地に根付いて地域社会と密接な関係を築いている場合が多いですよね。地元の建設業が作った商品とは、ビルや道路、橋です。それらはその土地から決して動きません。つまり土地に紐付いている。同時に地域住民の人たちも同じ土地で生活しているわけですから、一体感が生まれやすい。この重要な特徴にもっと注視して、地元の名物や名産品、名勝などを巻き込んだ独自の広報活動があると思います。

 

委縮せずに堂々と意見を言って社会にアピールすべき

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―何か具体例はありませんか?

宮嵜 カッパの姿をした「遠野かっぱ工事隊」をご存じですか?遠野市内の建設業者を中心に結成された団体で、震災直後から遠野市内はもちろん、大槌、釜石などの被災地に出向き、道路の啓開作業やガレキ処理、行方不明者の捜索などで活躍しました。

―マスコミに何度も取り上げられましたね。

宮嵜 名称にカッパを使ったことで、地元を背負っているという誇りや意気込み、覚悟が感じられます。この土地の建設業として一生やっていくぞ、という覚悟ですね。しかもマスコミが喜びそうなストーリー性があります。単なる一発モノではなく、このストーリー性こそが重要なのです。

―ところで、中小企業の実践的広報として、すぐにでも始められる方法として名刺やブログを活用している中小企業もあるようです。

宮嵜 あまりコストがかからない方法としては「あり」だと思います。ただ、唐突に目立つ名刺を作りました!ではなく、ここでもストーリー性を大事にしたいですね。例えば、地域との共通名刺を作ってみると面白いかも。肩書に皆で「○○町まちづくり担当」と入れてみたり、裏面にその町のマークを入れてみたり。そうすることによって地域との一体感がより強調されるはずです。

1209_01_tokusyu_3.jpg―それはグッドアイデアですね。

宮嵜 ただし、広報活動をする中で、自ら「自分たちは頑張っています!」と声を上げてもダメです。そんなことを言っても「建設業だけじゃなく、みんな頑張ってるよ」と返されるだけ。そうではなく、外部から「建設業、最近頑張ってるね」と言われるようにしないと。そのために何をすべきかを考えることが大切だと思います。

―そのほかアドバイスするとすればどのようなことでしょう?

宮嵜 他業界ともっと交流を深めたほうがいいでしょうね。外から見ていると、他業界との連携が非常に少なく、それが業界全体の閉塞感につながっているように感じます。業界の将来を考えれば、そこはぜひ改善すべきポイントです。そして、自ら変革しようとする意欲を持つこと。業界イメージが悪いと言われていますが、自分たちが意識するほど他人は気にしていませんから、委縮せずに堂々と意見を言って、社会にアピールすべきです。社会に向けて積極的に発信することで建設業が見直され、その積み重ねが業界のイメージアップにつながっていくと思います。

―貴重なご意見、どうもありがとうございました。

 

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