経済

日本経済の動向

年末に向けて議論が本格化 消費税引き上げに必要な「3つの条件」

みずほ総合研究所 チーフエコノミスト 高田 創

日本では9月以降、急に景気の足踏み論が台頭し、8%から10%への消費税引き上げへの慎重論が生じている。
4~6月期の成長率が下方修正されたこともこうした議論を後押しし、「デフレ脱却が先だ」との意見もあるが、著者は成長率見通しを前提に消費税引き上げは予定通り行うべきとのスタンスである。
今回は、いよいよ本格化してきた消費税引き上げをめぐる議論について解説する。

■ デフレ脱却か、消費税引き上げか?

図 日本の成長率見通し


(資料)内閣府「国民経済計算」

 日本では9月以降、10%への消費税引き上げへの慎重論が生じている。9月8日に発表された4~6月期の成長率が、年率換算で▲7.1%に下方修正されたことも不安を強める材料になっている(右図)
 筆者は成長率見通しを前提に、消費税引き上げは予定通り行うべきとのスタンスにある。一方、先日筆者が対談を行った静岡県立大学の本田悦朗教授は、今後の消費税引き上げに慎重なスタンスを示していた。本田教授は「この局面を逃してデフレ脱却できなければ元も子もない」、当方は「この局面を逃したら消費税引き上げを中心とした財政再建への道筋は付けられない」との主張である。どちらにも、アベノミクスにおけるこの重要なタイミングを逃したら、これまでの成果が元の木阿弥になるという強い思いは共通する。この局面におけるデフレ脱却の重要性は極めて大きいと著者も認識している。一方、昨年消費税引き上げに関する有識者懇談会に参加したが、その時と比べても財政に配慮する度合いはより高まっていると感じる。要因は、昨年に比べ日本国債の信認を支える経常収支が赤字になるとの不安が生じていることだ。

■ 消費税引き上げの環境をつくる「3点セット」

 消費税引き上げに向けた環境の支援措置として、次の3点を指摘したい。

日銀の追加緩和策(量的緩和、ETFやREITの増枠、成長支援基金の期間の延長、外貨貸出支援など)
補正予算の策定 *財政面でのサポート
政労使会議による賃金の引き上げ *成長戦略の促進

 9月以降円安の流れが強まった一因に、日銀の追加緩和期待がある。基本的には国債購入増加による量的緩和だが、加えて今年2月の日銀の貸出増加支援策の拡大もあるだろう。この支援策は、金融機関の貸出増加額の2倍相当額について、金融機関が希望するだけ日銀が0.1%で4年の資金を総額無制限で供給するというものだ。そこで、4年の期限をさらに長期にすることが考えられる。
 また、外貨貸出を容易にするための外貨調達支援措置も有効と考える。成長基盤支援の資金供給にはドル資金供給に関する特則があり、その総枠と期間を拡大することは、日本企業の海外資金ニーズに応える観点からも重要で、円安支援にもつながる。なお、期限の4年以上の拡充が、貸出金利を含めた長期金利の低下圧力につながることには留意が必要だ。追加緩和は円安誘導による輸出企業向けの収益支援の意味合いが強い。

■ アベノミクス始まって以来の「重要な局面」

 足元の景気不安は消費税引き上げに伴う実質所得の不安にあるだけに、企業側から個人への資金の移転が必要になる。1970年代にインフレ抑制の観点から「所得政策」として賃金抑制が労使で求められたが、今日はその逆で、「逆所得政策」として、デフレ脱却を浸透させる観点から、賃金の引き上げを労使が行うことになる。昨年来、政府は政労使会議を通じて賃金の引き上げを求め、今年のベア上昇やボーナスの引き上げにつなげた。企業収益は堅調な状況を続け、足元の円安はさらなる収益引き上げ要因であるだけに、今年も改めて政労使会議での後押しが重要になる。これは単に消費税引き上げの地ならしにとどまらず、アベノミクスが始まって以来の景気循環の中で初めて不安が生じた局面でもある。それだけに改造安倍政権としては、改めて三本の矢による経済重視姿勢を示すことが重要だ。

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