経済

日本経済の動向

世界経済を左右する新興国経済の行方|新興国への資本流入は続くのか

みずほ総合研究所 チーフエコノミスト 高田 創

昨年後半から今年年初にかけて、中国を中心とする新興国経済の減速が、世界経済の最大のリスク要因として強く意識された。
その後、新興国経済は回復しつつあるが、不安定性も抱えており、引き続きその動向には注視が必要である。
今回は、新興国経済の現状と留意点などについて解説する。

 
図1 先進国と新興国の成長率格差

(資料)IMFよりみずほ総合研究所作成
図2 新興国への資本流出入

(注) データは28日移動平均値。株式投資はインド、インドネシア、韓国、タイ、南アフリカ、ブラジルの合計。債券投資はインド、インドネシア、タイ、ハンガリー、南アフリカの合計 (資料)Bloombergよりみずほ総合研究所作成
図3 先進国と新興国の製造業PMI

(資料)Markit、Bloombergよりみずほ総合研究所作成
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拡大を続ける新興国経済

 新興国経済の減速の背景には、世界的なバランスシート調整が段階的に推移する中、新興国もバランスシート調整の状態に入ったことがある。ただし、新興国の成長が減速傾向にあるとしても、先進国を上回る成長を続けていることに変わりはない。
 2000年代後半以降、新興国と先進国の成長率格差は縮小を続けているものの、依然、新興国の成長率は先進国を2%近く上回っている(図1)。また、新興国の景気は足元を底にして、今後は再び緩やかに拡大に向かうとの見方も根強い。世界のGDPに占める新興国のウェイトが年々高まっているため、世界経済や日本経済に影響力の大きい新興国の動向には益々注目する必要がある。

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新興国への資本流入が回復

 新興国経済に係る注目点の一つとして、昨年来の中国の人民元安ショックを機に、新興国からの資本流出が続き、それが新興国不安の中心となっていたのに対し、今年に入り再び資本流入に転じていることがあげられる(図2)。
 また、先進国と新興国の製造業PMI(Purchasing Managers'Index:購買担当者指数)の推移をみると、先進国は年初来停滞を続けているが、新興国では昨年末から回復のトレンドが続いている(図3)。
 多くの新興国では、通貨安に伴う外貨建て債務負担などの不安があったが、為替相場が落ち着きを取り戻したことが安心感を高めた。この為替相場安定化の背景には、米国の早期利上げ観測の後退から、米ドル高が米ドル安に転換したことがある。特に、中国は今年になってから、米ドル安への転換に大きく助けられたといえる。
 2016年は新興国経済が予想以上に回復しているが、今後については、米国の利上げなどによる不安定性を抱えていることに留意が必要だ。2015年の資本流失・新興国不安の背景に米国の利上げ観測とドル高があったため、今後、FRBは、海外要因も念頭に置いて利上げの判断を慎重に行う必要がある。FRBの利上げは予想以上にハードルが高いのではないか。

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