経済

日本経済の動向

年初来、堅調だった主要指標も4月発表の3月分は下振れに|米国経済指標の下振れは景気変調のサインか

みずほ総合研究所 チーフエコノミスト 高田 創

米国経済指標の下振れに対して、景気変調のサインではないかとの不安が生じている。
年初来、経済指標は予想比下振れを続けていたものの、主要指標については比較的堅調なものが多かったが、4月に発表された3月分では主要指数も下振れしているからだ。今回は、みずほ総合研究所が米国駐在のエコノミストと行った会議に基づき、こうした景気変調への懸念をどう捉えるべきか解説する。

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ドル高は輸出より企業業績への目配りが必要

図1 米国S&P企業の予想EPS(単位:ドル)


資料:Bloombergよりみずほ総合研究所作成

 昨今、米国で発表される経済指標が下振れており、景気変調のサインではないかという不安が生じている。年初来、経済指標が予想比下振れを続けていたが、主要指標には比較的堅調なものが多かった。しかし、4月発表のISM製造業景況指数などの注目指標も下振れたことで、急に景気変調を懸念する見方が生じている。また、米国株式相場では原油安・ドル高の企業業績への影響に対する警戒感が強まっている。
 このような問題意識で、みずほ総合研究所は米国駐在エコノミストと会議を行った。今回、NYからは景気変調とみるのは時期尚早との判断が示された。雇用統計の悪化は天候など一時的要因によるものであり、またガソリン価格下落の恩恵は消費よりもまずクレジットカードの債務返済に回ったとの理解だ。家計の消費購買意欲に陰りはなく、春先にかけて消費は持ち直すと展望した。
 図1に示されるように、米国企業の予想EPS(1株当たり収益)は今年前半に低下が生じている。S&P採用企業の海外収益依存度が4割に達することに鑑みると、ドル高について当面は、輸出よりも企業業績への影響に目配りが必要であるとの認識に至った。仮に、2015年1~3月期が減益とすると、21四半期ぶりの減益になるだけに留意が必要である。ただし、原油価格の下落で懸念されるシェール企業については、コスト削減や投資抑制でシェールオイル生産の限界費用曲線が低下しており、現在の油価への耐性が増しているとの報告であった。

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米国投資家の日本株買いトレンドに変化

図2 S&P‒GS商品市況指数推移


資料:Haverよりみずほ総合研究所作成

 このようなシェール企業の予想以上の体質改善はWTI原油価格の抑制要因になるとみられる。WTI原油先物が中長期ゾーンにおいて下方シフトしているのはその表れである。また、シェール関連の在庫水準の高さから、原油価格が回復のトレンドに戻ったとするのは時期尚早と示された。加えて、図2にあるように、鉄鉱石やアルミ、銅も弱含んでおり商品市況は弱い。この物価動向は、債券市場を強くサポートするとの見方が強かった。従って緩慢な利上げが見込まれる中、債券を購入したいと考える投資家が予想以上に多いのではないかとの見方も示され、債券市場の底堅さが続くとの展望だった。
 最後に、今回注目されたのは、米国投資家の日本株買いのトレンドに変化が見られ、米国投資家の間に日本への見直しが生じている点である。昨年10月の日銀の金融緩和後、米国投資家の中心は一時的な日本株の価格上昇を狙うファンドだったが、最近は年金など長期運用を前提とした投資家に代わりつつある。この背景には、コーポレート・ガバナンスの重視など、日本企業の姿勢の変化を意識し始めたことにあるようだ。日本で意識される以上に、米国では日本の変化を感じ取っていることに注目する必要がある。

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