経済

日本経済の動向

日本以上に「アジア」へのダメージ大|中国経済「減速」が各国経済に与える影響

みずほ総合研究所 チーフエコノミスト 高田 創

 中国経済に対する不安から世界的な株価下落が生じている。
 背景には、中国経済の減速が世界に伝染する懸念があるようだ。
 今回は、当研究所が行った最新の試算から、中国経済の減速がもたらす各国への影響についてご紹介する。

 
1

アジア諸国は中国経済減速の影響が大

図 中国経済の成長率が1%減速した場合の各国成長率への影響


(注)2014年の経済構造をもとに試算
(資料)IMF、世界銀行よりみずほ総合研究所作成

 近年の中国経済の高成長とそれに伴う輸入の拡大から、世界経済は以前より中国の景気動向に影響を受けやすい構造になっている。
 特に対中依存度が高いアジアでは、中国減速の影響を受けやすい。今回行った試算では、中国の成長率が1%低下した場合に、世界経済の成長率が0.24%下押しされるとの結果が得られた。地域別でみると、下押し圧力はアジアを中心とした新興国で相対的に大きくなる。そのため、中国経済が減速すれば、新興国で景気下押しを通じた株安・通貨安圧力が高まりやすい。新興国で資金流出や株安が実際に起きると、中国経済の減速による影響は、さらに大きくなる可能性もある。
 中国における地域別輸入構造をみると、アジアからの輸入が多く、その他、欧州からの輸入も大きい。中国経済減速の影響をみるには、対中貿易がGDP(国内総生産)に対してどの程度の規模になるかをつかむ必要があるが、NIEs(新興工業経済地域)では対中貿易がGDPの15%に達し、ASEAN(東南アジア諸国連合)でも8%になるなど、中国経済への依存度が高い。また、欧州の対中輸出は、金額としてはアジアに次ぐ規模であり、その結果、間接的に欧州依存度が高い中東欧などにまで中国経済減速の影響が及ぶ。
 右図は、中国経済の成長率が1%減速した場合の各国成長率への影響を示したものである。中国の成長率が1%低下した場合、世界全体では成長率が0.24%押し下げられるが、日本の成長率の低下幅は0.2%と世界全体の平均を下回る。一方、アジア諸国は影響を受けやすく、なかでも台湾、マレーシア、フィリピン、韓国への影響が大きい。また、鉄鉱石や石炭を中国に輸出するオーストラリアも中国経済減速の影響を受けやすい。

 
2

実際の影響は試算を上回る可能性も

 IMF(国際通貨基金)によれば、2014年の中国経済は世界全体に占めるシェアが購買力平価ベースで16%になっている。そのため、中国の成長率が1%低下すると、それだけで世界の成長率が0.16%押し下げられることになるが、今回の試算では、貿易を通じた影響が各国に波及することにより、世界全体が0.24%下押しされるという、IMF試算を上回る結果になった。
 新興国の資金流出や株安が実体経済に与える影響を加味すれば、実際の影響は試算結果を上回ることもありうる。そのため、中国経済減速の影響が株価暴落の段階から、貿易を通じて新興国を中心に実体経済へ伝染していくという悪循環が起こるのではないかとの不安も台頭している。また、そうした実態面の不安が新興国、もしくは新興国企業のクレジットに影響を与え得ることに注視が必要となる。




「新興国懸念を高める中国リスク」『みずほインサイト』 もご参照ください。

ページトップ

最新記事

最新記事一覧へ