経済

日本経済の動向

日本経済中長期展望|人口減少を跳ね返す成長モデルの転換

みずほ総合研究所 チーフエコノミスト 高田 創

わが国経済の中長期展望に関する一般的な認識は、本格化する人口減少と産業の空洞化で企業の競争力が落ち込み、成長率が低下するというものであろう。
しかしながら、人口減少などの影響を打ち消して、成長を維持する方策も考えられる。
今回は、わが国経済が中長期的に成長を持続するための要件などについて解説する。

 

図1 日本の実質GDP年平均成長率のイメージ


(注) 2015年度以降はみずほ総合研究所予測 (資料)内閣府「国民経済計算年報」等よりみずほ総合研究所作成

図2 世界経済に占めるアジア経済のウェイト


(注) 2013年のPPPウェイトをベースとして、各国・地域の実質GDP成長率を利用して試算     2015年以降はみずほ総合研究所予測。アジアは中国、インド、NIEs、ASEAN5の合計 (資料)各国統計よりみずほ総合研究所作成

表 GDP型成長モデルからGNI型成長モデルへの転換


(資料)みずほ総合研究所作成
1

中長期的に回復する
わが国の成長率

 みずほフィナンシャルグループのリサーチ&コンサルティングユニットが発表した「グローバル経済の中期展望と日本産業の将来像」の中で、当研究所が示した総括的なわが国の成長率の中長期イメージは、図1の通りである。
 2020年代までを展望すれば、人口減少による成長率の下押しは不可避である。一方、押し上げ要因もある。それは、1990年代以降続いたバランスシート調整に伴う下押しが無くなること、2020年までのオリンピック需要、グローバル経済の成長とアジアを中心としたインフラ需要増、成長戦略の実現による労働投入量の改善および新技術の活用による生産性向上である。
 今回のレポートにおいては、テクノロジーの進化が需要・市場構造に大きな影響を与える点や、規制や社会環境の変化を通じた産業創出を重視した。その結果、バブル崩壊以降長期低迷を続けたわが国の成長率は、2010年代後半、さらには2020年代になって以降も、1%程度まで回復すると展望している。

2

アジア圏のインフラ投資の
取り込みが必須

 この成長率の展望で特に重視したのは、世界のなかで最も高い成長を続けるアジアを取り込むビジネスモデルの実現である。世界経済のなかでアジアの占めるウェイトは、2015年の33%から2025年には40%程度まで拡大する見通しである(図2)。特にアジア圏のインフラ投資は、今後10年で約14兆ドルと試算され、こうした投資需要を取り込むことが日本経済の成長に寄与することになる。
 また、2020年代の成長率が1%程度に回帰・正常化している場合、わが国の成長モデルは、国内生産(GDP)型から国民所得(GNI)型へ転換していよう()。GDP型成長モデルは、製造業を中心とした財の輸出が中心のモデルである。一方、GNI型成長モデルは、直接投資を中心とした投資の見返りとしての収益を拡大させる総合商社型モデルである。この戦略には、インバウンド需要と、非製造業を中心とした海外での活動を取り込むことが重要となる。

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