経済

日本経済の動向

日本経済を下支えするインバウンド消費|訪日外国人対応の重点はモノからサービスへ

みずほ総合研究所 チーフエコノミスト 高田 創

2015年に前年比5割増の1,974万人を記録した訪日外国人数は、2016年も引き続き増加しているが、訪日外国人によるインバウンド消費には、近時、減速感がみられる。
このインバウンド消費の底上げには、今後、サービス消費の取り込みが重要なポイントとなる。
今回は、日本経済を下支えするインバウンド消費の動向と、その一層の取り込みのために求められる対応について解説する。

 
図1 インバウンド消費の要因分解

(資料)観光庁「訪日外国人消費動向調査」、日本政府観光局(JNTO)より みずほ総合研究所作成
図2 インバウンド消費の費目別の一人当たり支出

(注) サービスは「宿泊料金」、「娯楽サービス費」、「飲食費」、「交通費」、「その他」の合計 (資料)観光庁「訪日外国人消費動向調査」、日本政府観光局(JNTO)より みずほ総合研究所作成
図3 インバウンド一人当たり旅行支出と所得水準

(注) 1.各費目の一人当たり旅行支出は消費者物価指数を用いて実質化     2.観光庁公表の一人当たり旅行支出の値     3.20カ国・地域の2010~2015年の暦年の値によるアンバランスドパネルデータを用いて作成     4.サービスは「宿泊料金」、「娯楽サービス費」、「飲食費」、「交通費」、「その他」の合計 (資料)観光庁「訪日外国人消費動向調査」、総務省「消費者物価指数」、IMFよりみずほ総合研究所作成
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インバウンド消費の減速

 2015年度後半以降、訪日外国人によるインバウンド消費の減速感が強まっている。2015年4-6月期、7-9月期の前年比約8割増に対し、2016年1-3月期は同約3割増となった。要因を分解すると、訪日客数は底堅く推移する一方、一人当たり支出の伸びは、2016年1-3月期に12四半期ぶりに前年比マイナスに転じるなど、鈍化が鮮明である(図1)。
 そして、インバウンド消費の費目別の一人当たり支出の推移をみると、サービスは大きな変動がなく概ね横ばいの動きとなっている一方で、買物代の減少が顕著であり(図2)、インバウンド消費の減速が、一人当たりの買物代の減少によりもたらされていることがわかる。
 特に、中国およびNIEsからの旅行者一人当たりの買物代の減少が顕著であり、①円安傾向の転換、②免税対象品拡大やビザ緩和といった政策効果の一巡がその背景にある。

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サービス消費の取り込みが重要

 国内景気が停滞する中、インバウンド消費の増加は数少ない押し上げ要因と期待されている。しかし、年初来、米国の為替政策がドル安に転じた影響で円高になったことなどもあり、今後の買物代の大幅な伸びは期待しにくい。そのため、一人当たり支出の底上げに向けて、買い物だけではなく、サービス消費の取り込みも求められる。サービス消費は買物代と比較して、為替レートや政策効果などの影響が相対的に小さいと考えられる。
 また、インバウンド一人当たり旅行支出と所得水準の関係をみると、買物代と異なり、飲食費や宿泊料金などのサービス消費は、所得水準が上昇するにつれて増加する傾向がある(図3)。今後アジア諸国の所得水準が上昇し、自国製品と日本製品の品質格差が縮小することで、日本での買い物への魅力が従来より低下し、旅行目的が文化体験などにシフトすると予想される。よって今後は、サービス消費を取り込む姿勢が重要となるだろう。

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