人材確保・育成

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FOCUS | 全国に先駆け、業界が一致団結して高校生の入職支援|長野県

一般社団法人 長野県建設業協会
専務理事 田中 幸男 氏

建設業への入職意識向上を図るためのひとつとして

田中氏

田中氏

  建設業界における若者の業界離れは今後も深刻化していくでしょう。当協会では今年度、初めて8月3日から5日までの3日間、長野工業高等学校建築科で進学や就職を目指す3年生16名を対象に、夏休みを利用して「2級建築施工管理技士(学科)試験受検対策講座」を実施しました。これは、在学中に試験にチャレンジすることで、まずは学欲を高め、さらに「せっかく勉強したのだから」と、建設業界に関心や就職意欲を持ってもらうことを期待しています。
 同校建築科の協力のもと、富士教育訓練センターにもプログラム及びテキストの監修、講師の派遣で協力いただきました。参加費の一部は当協会が助成し、通常は3日間の学科の受講に16,000円かかるところを、8,000円に減額するなど受講費の負担を軽減しています。
 毎年、秋に実施される2級施工管理技士の試験に向け、この機会に学校では学べない専門的なことも勉強して、建設業に興味を持ってもらえればと思います。1人でも多くの学生がこの業界に進み、将来的には一級施工管理技士を取得することも目標として欲しいですね。

進む技術者の高齢化施工管理技士の資格取得を奨励

  こうした背景には、長野県が抱える技術者の高齢化の問題があります。県内の一級土木施工管理技士の多くは50歳以上。これに対して20代で新たに一級土木施工管理技士を取得したのは、平成25年度は4名、今年は6名増えたものの10名と、依然として合格者が少ない現状があります(協会調べ)。こうした中、10年先はどうなるか。協会として、現場の中心を担う若手の施工管理技士の資格取得を奨励していかなければなりません。
高等学校の建築科や土木科など指定学科に3年在学していれば、在学中に2級施工管理技士の学科試験を受けることができますし、就職後は3年の実務経験を経て実地試験に合格することで、2級施工管理技士を取得できます。その後、更に3年の実務経験を経ることにより、最短で大学の指定学科卒とほぼ同じタイミングで、高校の指定学科卒でも1級施工管理技士にチャレンジできるということです。
 業界への若年者の入職支援の一環として今後も受検対策講座を継続して実施していくことで、将来の担い手である若者の有資格者を増やしていきたいと考えています。

青年部が中心となって入職支援を推進

協会外観

  当協会では、これまでにも県内の建設系学科の高校生などを対象に、講習会や現場見学会、インターンシップの開催などに取り組んできました。安曇野支部では、10年前から県とタイアップして高校生を対象とした入職支援に取り組んでおり、7月の全国建設業協会の建設業社会貢献活動推進月間では表彰を受けました。この1年間は青年部が中心となって現場見学会や、重機、型枠、鉄筋の組み立て実習を実施しています。
 青年部では、各支部の50歳未満の協会会員が集まり、昨年度からは青年部の太田会長らを中心に、若年者の雇用対策への企画全般を任せています。今回の受検対策講座にはテレビ局にも協力いただき、皆さんの取り組む姿を全国に伝え、同年代の若者にもっと建設業に興味を持ってもらえるようなPRビデオの企画を青年部が計画しています。
 技術者の入職支援は、協会の最大の課題として全力で進めていくつもりです。そのためには今後、長野県庁とも連携を深め、一体となって取り組んでいくこととしています。


協会との連携で施工管理の受検促進へ

熊倉氏

熊倉氏

  昨年12月に協会さんからお声掛けをいただき、今年3月から今回の講座開講に向けて一緒に話を進めてきました。当初は学校相手では、文部科学省や教育委員会との問題もあり、協会さんでもどのように進めていくべきか悩んだようです。私どももこの10数年、こういった活動とは無縁でしたので、講習会などのノウハウや人脈が薄くなっていましたが、これをきっかけにネットワークを強化していきたいと思っています。
 また、昨年まで施工が選択授業だったのは、法規が優先されて施工が後回しになっていた背景がありました。ここ数年は2級施工管理(学科)の受検者がとても少なかったのですが、今年は必修科目になったので、今後はクラスの半分くらいの生徒が受検するように進めていきたいです。
 学校の授業では私が施工を担当していますが、施工管理や品質管理は、教科書でいうと後ろの方にあります。つまり、施工の部分の勉強はまさにこれから。本受検対策講座において3日間という時間的制約がある中、すべてを入れ込むことは難しいので、基本となる部分の話を冒頭にして、専門用語を学んだり、試験のポイントを覚えたり、記憶することを中心に学んでもらおうと思っています。それ以外の部分は、試験までの2カ月間で埋めていってほしいと思います。

高校生の受検環境の改善が必要

授業風景

  15年前は、高校生向けの施工管理技士の資格試験があり、土木も建築も各県で受検することができました。問題も現在より高校生向けの簡単な内容でしたので、普通に勉強していれば9割は合格できていました。長野県周辺では、工業高校の建設学科の生徒のうち、7〜8割が建設業界へ就職していましたが、いまはその半数にまで減っています。試験も各県で開催されなくなり、長野県では埼玉県へ貸し切りバスを使って受検に出向いていました。
 あの頃のように、できれば47都道府県で受検できるようしていただきたいのですが、費用面や利便性、会場確保の問題もあるんでしょうね。一方、学校で受検させたいという先生も多いと思いますので、そういった学校と連携して、校舎を借りるなどの方法で、実施していくのが現実的かもしれません。

小山さん

施工管理の資格を取得して将来に活かしたい

 私は建設業への就職を目指しています。先輩や先生からこの講座のことを聞いて、目標への第一歩と思って受講しました。就職したら現場も経験したいですが、設計や全体の計画に携わりたいです。オリンピックに向けて建設業界が盛り上がってきているので、合格して少しでも将来に活かせるように頑張りたいと思います。
 震災対応にも建設業が関わっていることは、学校で習ったし、テレビでも見ました。両親も「自分のやりたいことなら頑張りなさい」と応援してくれます。地元が好きなので、自分の街を守りたいです。

[建築科 3年生 小山 晃奈さん(17歳)]

 


竹前さん

将来を考えたら施工管理の資格が不可欠

 私は、愛知工業大学への進学を目指しています。これまで資格というものをあまり取得する機会がなかったので、先生の勧めもあって、この受検対策講座を受講することに決めました。今回の講習では、大学に行っても授業についていけるように、自分の苦手とする専門系を学びたいと思います。両親も喜んでくれていますよ。
 大学卒業後は現場監督のような仕事に就いて、CADを使ったりしながら人の役に立つ建物を設計したいです。そのためにも施工管理の資格は欠かせません。学校では建設業が震災時に活動したり、除雪していることも勉強しました。ニュースで見ることもあり、やはり少し恐いと感じますが、それでも建設業で頑張りたいです。

[建築科 3年生 竹前 翔尉さん(17歳)]

 

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