人材確保・育成

FOCUS

明日の日本を担うスペシャリストを目指して|第2回 建築技能体験フェア(技フェスタ)2015

主催:(一社)大阪府建団連・雇用推進研究会

開会式で挨拶をする北浦年一会長
((一社)大阪府建団連)

 7月31日~8月1日「第2回 建築技能体験フェア」(主催:(一社)大阪府建団連・雇用推進研究会)が「ハナミズキホール」(大阪市鶴見区・鶴見緑地花博記念公園内)で開催されました。「明日の日本を担うスペシャリストを目指して」をテーマに、昨年より規模を拡大し、技能体験、職人の実演、講演会やセミナー、パネルディスカッション等が行われ、府内工科高校等の学生、一般の来場者で賑わいました。

 
 講演
 



 日本建築における職人の技

 (一社)日本左官業組合連合会 相談役
 (一社)大阪府左官工業組合 相談役
 阿食 更一郎
 (平成8年 黄綬褒章受章、平成16年 旭日双光章受章)


 

「先人が自らを磨き身に付けた知恵と工夫に、無関心な職人が増えている。優れた建築とは何か、今一度皆で考えてはどうだろうか」。法隆寺五重塔などの歴史的建造物の意匠に触れながら、古代から現代までの日本建築施工法の変遷、古来受け継いできた職人の技について講演が行われました。
 永く人々に感動を与え続けるような建築物は、一朝一夕に生まれるものではない。工人のたゆまぬ努力によって試行錯誤が重ねられ、工夫や新しい技の挑戦があった。技能集団の棟梁・匠は、職人を纏め施工を直接指揮し、時には自ら新しい工夫と技を生み出した。彼らは弟子と生活を共にしながら、厳しく、時に優しく、尊敬され慕われた人たちでした。
 「"技術"は日進月歩、技術革新、技術革命というように大きく進化しなければ廃れていく。一方"技能"は、師匠から弟子に伝承されるべき技」と、"技術と技能"の違いについて述べ、伝統職の施工方法や施工例を挙げ、現地現物での実践が技能の獲得には必要と語られました。職人を目指す若い参加者に"ありきたりの技能の満足"に堕してはならないこと、ならびに技術伝承の尊さを改めて訴える貴重な講演となりました。




 安全なまちづくりと防災について

 (一財)大阪建築防災センター 企画審査部長 草宮 利一


 

 大阪建築防災センターは「防災知識の普及・啓発には、子供のころからの学習が大切」と考えています。来場の高校生に住宅のミニチュアモデルで地震による住宅のひずみを体験してもらい、建築防災の知識や建物をつくる面白さを知ってもらう貴重な講演となりました。
 「"安全安心なまちづくり"とは、私たちが住むまちから違反のある建築物を少しでもなくし、法律的に適切な建築物を増やす努力を皆ですること」。従来、防災は、個人による日頃からの心構えと備えという認識にとどまっていました。私たちが安心して安全に暮らせる住宅は、法律によって基準が定められています。阪神・淡路大震災以降、耐震基準が強化され倒壊率は大きく低下しました。しかし、課題も残り、災害により倒壊しかねない建物は少なくないと指摘されています。
 「"まちづくり"も"防災"も意識の共有が大切。一人は皆のために、皆は一人のために、"防災への意識"は社会の中で助け合うこと。日常の中で、自分にできることから始めてみては」と提案され、防災への取り組みとして耐震補強、耐震改修などの重要性について解説されました。

 
 インターンシップ体験
 大阪府立布施工科高等学校 建築設備系 設備システム専科 2年生のみなさん
 
好きなものづくりで生きていきたい
 幼い頃、職人の祖父から仕事の話を聞かされました。年中戸外で忍耐強く良いものを作り出すというイメージがあります。
 ものづくりが好きで、幼少から端切れで工作を楽しんでいました。自分で作ることはやりがいも感じられ、向いていると思います。高速道路の完成過程を写真で見て、特に型枠が良かった。コンクリートを混ぜて、流し込んで、大きな建造物になるのが格好良い。鉄筋工にも興味を持ちました。
いつか、実際に家を建ててみたい!
 将来は建設業に就職したい。今日は職種を体験したくて参加しました。左官がいいなと感じました。もともと建設業に興味はなかった。学校の授業で機械や電気、建築などを体験する実習があり、一番面白かったのが建築でした。11月には学校で建築施工管理技士の試験を受ける予定です。将来、設計ではなく実際につくる人として、家を建ててみたいです。
実力勝負の世界で勝つ!
 鉄筋が一番良かった。最初に体験したので、一番集中して話を聞いたのかもしれませんが、実際にハッカーで結束線をくるくるさせるのが面白かった。鉄筋工の道もいいなと。
 高校卒業後はすぐに働きたい。勉強が好きでないのも理由ですが、建設業は実力がモノをいう世界というのも魅力。早く就職して、お金を稼ぐ。家庭も早く持ち、子どもに自慢できるものをつくる。当然、収入もビッグ! 社長になるのが夢です。
夢はもう決めました
 完成までにいろいろな職種が関わり、どれが欠けても成立しない、奥が深い。建設業の印象が随分変わりました。
 面白かったのは設備。父がビル管です。昔会社に見学に行って、以来「電気工事士」を目指しています。親には「甘い世界じゃない」と言われましたが、今は「好きにしたら」と認めてくれています。今回、パイプの融着では素早い作業が大切と指導を受け、最初かなりてこずりましたが新鮮で面白かったです。
 
 雇用推進研究会 副会長に聞く
 
 

 (一社)大阪府建団連 雇用推進研究会 副会長の一貫坂 彰氏に、「建築技能体験フェア」の開催目的を伺いました。
 「優れた職人技の紹介や技能体験を通して専門工事業の仕事を理解し、ものづくりの楽しさに触れてもらうとともに若手技能者の確保・育成を目的としたものです。今回は対象を一般にも広げ、参加職種を拡大しました」
 団体の広報活動についても伺いました。
 「当団体では現在、会員企業を主とした専門工事業会社で組織した『雇用推進研究会』を通じて、工科高校、専門学校の先生との意見交換会を開き、新規学卒者への求人活動を行っている。今回のフェアに際しては、意見交換会参加の関係機関15カ所へインターンシップを募集し、チラシを送付しました。会員企業が幼稚園、高等学校、子供会連合会へ出向いて周知活動をし、新聞マスコミには直接取材を依頼しました」
 最後にメッセージを。
 「まずはものづくりの楽しさを味わっていただきたい。将来、共に働ける若者が出てきてくれたら嬉しい限りです」

 
会場全景
鳶ブース
足場でできた約8mのツインタワーに登る体験
 
女性座談会
「女性技能者の活躍の場を考える」
左官ブース
石膏で型抜きした置物の色付け体験
建築大工ブース
四角の小さな木材を使ってキューブパズル制作体験
 
若手左官職人による壁塗り競技会
優 勝 武部 修久(㈱梶原組)
準優勝 横山 和之(㈱佐藤組)
第三位 柳川 卓模(㈱イスルギ)
第三位 池間 暁(田村左官工業㈱)
防災ブース
ペーパークラフトで2種類の家を作って耐震の差を知ることができる体験
板金ブース
板金関係の様々な加工作品や写真の展示

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