中部圏(岐阜県、静岡県、愛知県、三重県)では、平成25年11月に各県建設業協会等の建設業団体が中心となって、「 中部圏建設担い手育成ネットワーク協議会 」(以下「協議会」)を設置しました。建設産業がより魅力的な産業となり、担い手の確保・育成を実現するためのさまざまな取り組みを行っています。
「けんせつ小町増員化計画」は、「女性目線での現場環境の改善」「女性や若者がチャレンジできる建設系資格の取得・誘導」「『けんせつ小町』(建設業で働く女性)の横のつながりの促進」を目的として、(一社)日本建設業連合会中部支部を事業管理団体、協議会を構成員として国土交通省の「もっと女性が活躍できる建設業」地域協働推進事業に申請し、採択されたものです。今回の現場見学、資格取得体験、フォーラムのパネルディスカッションで寄せられた女性の意見を今後の参考にして、さまざまな課題を整理・検討し、今後、建設業に就業する女性がもっと増えることを期待しています。以下、現場見学会、資格取得体験、「女性活躍推進フォーラム」について紹介いたします。
現場見学会 ―高校生―
着替えスペースのある女性専用トイレ
女性技能者からのアドバイス
【日 時】 1月26日(火)
【場 所】・レゴランドジャパン新築工事(施工:㈱大林組)
・納屋橋第一種市街地再開発事業施設建設物新築工事
(施工:清水建設・大日本土木JV)
【参加者】 名古屋市立工芸高等学校 建築システム科1年生39名(女子学生8名)
もっと女性が働きやすい環境となるために何をすべきか、建設現場を見学して考えてもらおうという取り組みです。
納屋橋の現場では、女性専用トイレ(防音対策、着替えスペース設置)や女性用更衣室(ロッカーを奥に設置しプライバシーに配慮)などを見学、女性技術者や女性技能者から意見を聞きました。
参加した生徒からは「トイレや更衣室などの設備や作業服など、男性も女性も過ごしやすい環境にするための相互理解」「育児休暇の充実、残業を減らすなど勤務時間の配慮」「体力を必要としない作業を増やすこと」が必要という意見が挙がりました。
現場見学会 ―SKE48二村春香さん―
【日 時】 1月27日(水)
【場 所】 ㈱文創(研修施設)
【参加者】 SKE48 二村 春香さん
二村さんは、㈱文創(内装仕上げ業の専門工事会社)の研修施設で、クロスと床の張り替え作業を見学しました。作業を行ったのは内装作業歴20年の女性作業員です。
クロスの継ぎ目が見えなくなるように手際よく張り付けたり、小さなローラーを使った作業に感心したり、女性スタッフとの意見交換も行うなど、熱心に見学されていたのが印象的でした。「女性でも働ける分野があり、イメージが変わりました。これからも建設業をサポートしていきます」。ご自身のブログにも現場見学会の様子をアップしてくれました。
資格取得体験 ―高校生等(女性)―
【日 時】 1月30日(土)、1月31日(日)
【場 所】 住友建機販売㈱(住友建機教習所 愛知教習センター)
【参加者】 名古屋市立工芸高等学校、東海工業専門学校金山校
などから17名
【取得資格】・小型車両系建設機械
(3トン未満のミニショベルカーなど)
・高所作業車(高さ10m未満)
女性に建設系機械運転の資格を実際に取得してもらい、取得過程での問題を考えてもらうという取り組みです。
「小型車両系建設機械特別教育」と「高所作業車特別教育」のコースで資格取得に挑戦してもらいました。土・日を利用した2日間の受講です。
小型車両系建設機械特別教育は工業高校1、2年生8人、専門学校1年生4人、一般2人の合計14人、高所作業車特別教育には専門学校1、2年生3人が参加しました。
両コースとも1日目は学科、2日目は実技、「学科は専門用語ばかりで難しかったが、実技はとても簡単」という感想が多く寄せられました。
この体験では「女性でも建設機械の資格を取得したい人は多い」「女性が建設機械の資格を取得すると建設業が男ばかりというイメージはなくなり、女性にも建設業を身近に感じてもらえる」という感想が寄せられ、手ごたえを感じました。「建設機械は女性でも運転できる」ことをもっとアピールし、多くの女性が建設業に興味を持ってもらえるようになればと期待しています。
また、「建設機械の資格取得施設は電車で通える場所が少ない」「建設現場ばかりでなく、建設機械の資格取得施設にも女性用更衣室などの環境を整える必要がある」という課題も分かりました。
女性活躍推進フォーラム
パネルディスカッション
女性活躍推進フォーラム全景
【日 時】 2月17日(水)
【場 所】 ホテル メルパルクNAGOYA 2階瑞雲東
【プログラム】・基調講演「よくばりな女性のワークスタイル」
講師:㈱ライフスタイル・ウーマン 吉居 理奈子さん
・現場見学、資格取得のVTR
・建設業界等に関わる若手女性技術者によるパネルディスカッション
【コーディネーター】 吉居 理奈子さん
【ゲスト】 SKE48 二村 春香さん
名古屋市内で開催された「女性活躍推進フォーラム」(以下「フォーラム」)には、約200人の建設業に携わる女性が参加しました。
基調講演では、吉居理奈子さん(㈱ライフスタイル・ウーマン)が「よくばりな女性のワークスタイル」と題して、女性に選ばれ、女性が働きやすい業界となるための各業界の取り組みを紹介しました。
続いて高校生による現場見学と女性による資格取得の映像が紹介されました。
名古屋市立工芸高等学校による現場見学と資格取得は、地元テレビ局の取材も受けたため、フォーラムではテレビで放映された映像を使用しました。
また、二村春香(SKE48)さんの㈱文創での内装作業の見学と女性スタッフとの意見交換の様子も紹介されました。(*各見学会・研修の概要は前述の紹介記事を併せてお読みください)
フォーラムでは、二村さんと(一社)日本建設業連合会会員企業の女性技術者などによるパネルディスカッションも行われました。ディスカッションでは、女性技術者から、「ものが出来上がっていくことにやりがいを感じる」「将来結婚して子供が生まれても仕事を続けゆくゆくは管理職になりたい」という意見や、「育休・産休の制度があっても周りのサポートがないと難しいと思う」といった問題提起もありました。
フォーラム終了後の女性交流会では、参加者が他社の女性との会話を楽しんだり、メールアドレスを交換したりする姿が見られました。普段、建設業で働く女性は他社の女性と接触する機会がほとんどないということで、こうした会合を通して今後の横のつながりに期待が持てました。