基金の活動

第16回建設業経営者研修「逆境を生きる建設業の経営戦略」開催報告

(一財)建設業振興基金 構造改善センター

(一財)建設業振興基金では、経営者、経営後継者、経営幹部の方を対象とした研修を開催しています。第16回目となる今回は、2月6日(月)~7日(火)に東京都港区のメルパルク東京おいて開催され、全国から30名の方にご参加いただき、好評のうちに終了いたしました。

3.「地域を元気にする建設業を目指して」

講師:株式会社山本組 代表取締役 山本 斉氏

 山形県で建設業に加え、新農法による付加価値の高いトマトを生産。短期間で成果を上げる。栽培モデルを普及し、地域にも本業にも波及効果を目指す。

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 地域建設業において、社員や家族が農家というケースは希ではなく、建設業の新分野展開において、農業参入を検討するケースは、少なくないようである。一方で、新規事業を経営の柱の一つにまで成長させることが、容易ではないことも事実である。
 山本講師からは、同社がある山形県庄内地方の歴史風土、同社の概要とトマトの生産をはじめたきっかけ、販売戦略等について講義いただいた。
 同社の経営基盤である公共土木工事の売上が減少する中、新規事業について様々な情報収集をしていた時、「アニス」という微生物培土によるバイオ新農法を手懸けるベンチャー企業の新聞記事が目に留まり、すぐにコンタクトをとったそうである。当初は、土の販売を考えていたが、プロの農家に、建設会社が作った土の良さを理解して貰うのは難しく、それなら、微生物培土の有効性を自ら証明すべく、この土を使って、農業に参入してみようと考えたとのことである。
 数ある野菜の中で、トマトを選んだ理由は、様々に加工できるため、汎用性が高く、客層を絞らない商品であること。また、こだわった土から高付加価値な野菜を生産・販売することを考えた際に、低価格でしか売れない商品では、利益が確保できないが、この点、トマトは、高いものは高級果物のような値段で売れる野菜であることであった。
 また、当初から、生産だけでなく、加工商品の開発と直営店舗での販売を考えており、単純にスーパーなどへ卸販売することは避けた。平成20年の生産開始からすぐに、同社が作る絶品のトマトは注目を浴び、有名オーナーシェフのレストランや消費者の健康志向から注目されている野菜パティシエが作る野菜スイーツ店などへの販路開拓に成功、テレビや新聞でも取り上げられ、大きな販売促進効果を生んでいる。
 高付加価値商品の販売において、消費者のマインドを掴むには、「こだわり」や「手作り」といった使い古された言葉では駄目で、物語的な要素が必要であり、デザインも非常に重要であるとのこと。
 物産展などにおける費用相場の話や素人ゆえの苦労話・笑い話も交えながらの講義に、受講者は、大変興味深く聴き入っていました。

4.「伝統と若い感性の融合で左官業を活性化」

講師:有限会社原田左官工業所代表取締役社長 原田 宗亮氏

 (有)原田左官工業所代表取締役社長。文京区で女性左官職人を積極的に育成する先駆け的存在。夢とロマンをモットーに柔軟な発想で、壁材開発から若者育成まで幅広く取組む。

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 若者の建設業離れが進み、技能伝承の危機が叫ばれる建設業界にあって、同社には若い女性左官職人が7名在籍し、来年4月からは2名増える予定とのこと。きっかけは、ある女性事務職員の「私も現場に出てみたい。」という一言だったそうだ。バブル期の人手不足もあり、当初は、お手伝い程度と考えていたが、この女性が頑張り続けた努力に、会社が応える形で様々なサポート体制を整えていった。ベテランの男性職人との軋轢も生じたが、様々なメディアで取り上げられることによる宣伝効果があっただけでなく、新しいことにチャレンジするという文化が社内に根付いたとのことである。
 女性ならではの結婚・出産という課題に対しても、仕事を続けたいという本人の意思を尊重し、試行錯誤を繰り返しながら、産休・育休制度を整えていった。会社にとっても、計算できる貴重な戦力が、現場復帰することは、非常にありがたいとのことである。
 また、同社では、入社から4年目に、いわゆる年季明けとして、盛大なセレモニーを開催している。これまでの本人の足跡を収めた「フォトブック」をプレゼントし、その成長を本人の家族も呼んで一緒に振り返りながら、お祝いをしているとのこと。社員を大事にする同社の姿勢が、窺い知ることができた。
 続いて、効率的に広報を受注に結びつける同社の広報戦略について講義いただいた。ターゲットと売りたいものを絞り、自社の独自性をPRすることが重要とのこと。何でも出来きますというPRは、単価の問い合わせばかりが増え、実際の成約には至らないことが多いとのこと。同社では、オリジナル商品として西洋風漆喰「フルーフレ」を開発。ホームページも、あえて専門性の高いページ作りをしている。どんな会社なのか相手に伝わることで、同社に発注したいというお客さんが増えているそうだ。
 ユニークな取り組みとして、仕事旅行社とのタイアップによる職業体験ツアー「左官職人になる旅」の紹介と現代流「見習い」である「モデリング」という基本技能の伝承手法について紹介いただいた。名人の塗り作業をビデオに収め、インターネットの動画配信サイトYouTubeにアップすることで、いつでも「見習う」ことができるというアイデアである。

講師・参加者との懇談会、討議・意見交換会

 1日目の夜には、各講師、参加者との懇談会を開催。2日目の講義終了後は、コーディネーターに中小企業診断士の山北浩史先生を迎え、討議・意見交換会を開催しました。参加者からは、「建設業が抱える不安や問題を皆様から聞くことができて大変参考になった。」、「各地方の違いが感じられて勉強になった。」、「講師や参加者から刺激を受け、自社の経営力強化に努力していきたい。」などの意見が聞かれ、有意義な研修を行うことができました。

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