基金の活動

FOCUS

FOCUS | 建設マスター女性座談会 女性が働きやすい職場とは?

<司 会> 鎌田 いづみ 氏 国土交通省 土地・建設産業局建設市場整備課 係長
      今田 香織 (一財)建設業振興基金 構造改善センター

顕彰式典

顕彰式典

 10月10日、東京のメルパルクホールにおいて「平成26年度 優秀施工者国土交通大臣顕彰式典」が開催されました。顕彰者は389名(女性5名)。顕彰された女性技能者5名にお集まりいただき、鎌田いづみ氏(国土交通省)、今田香織(建設業振興基金)の司会により、女性技能者の"今"を語り合う座談会を行いました。

 

建設業界を志向し その職種を選んだ理由

1411_18_FOCUS_3.jpg

鎌田 皆さん、本日はおめでとうございます。まずは自己紹介と、建設業界に入ったきっかけについてお聞かせください。
木田 私は造園工ですが、樹木医でもあります。家業は造園業でしたが、大学卒業後は東京でシステムエンジニアとして働いていました。しかし、都会暮らしの中でいつしか"緑の大切さ"を意識するようになり、24歳のときに地元へ戻って家業を継ぐことにしたんです。
後藤 職種はとび工です。以前クレーンオペレーターに憧れていたのですが、女性でも資格を取得できると知り、この業界に入りました。結婚、出産を経験しながら今も現役のとび工として現場に出ています。
 仕事は鉄筋工です。富士教育訓練センターで鉄筋の非常勤講師も務めています。この仕事に就いたきっかけは、高校の進路指導でいろいろと資料を見る中で面白そうだと思ったからです。でも、どんな仕事か分らずに入社したんです。親に黙って決めたので合格通知が来たときは「あんた、なんで鉄筋工なの?」と母に驚かれました(一同笑)。
吉岡 山陰の島根県松江市で電気工事や設備の会社に勤務しています。当社は女性社員の雇用を重視していて、レディースエンジニア1期生に関する新聞記事を読んで、「エンジニア、かっこいいなぁ~」と思い、3期生として入社し、以来、電気工事作業と現場管理などに従事しています。
安里 私の場合、最初は設計で入社して、現在は電気工をメインに水道配管工事なども手掛けています。設計の仕事を選んだきっかけは、学生の頃に「自分の家を自分で設計したい」と思ったからです。設計と現場の仕事を兼務していましたが、徐々に現場の方が面白くなってきて......。大勢の職人さんとのやりとりの中で仕上げていく過程とか、デスクワークにはない醍醐味、達成感があるんです。

1411_18_FOCUS_4.jpg

どこにやりがいを感じモチベーションが上がるか?

座談会

座談会

今田 皆さんが仕事にやりがいや魅力を感じたり、モチベーションが上がったりするのはどのようなところでしょう?
木田 造園業は完成したときがもう一つのスタートというか、その後の変化、経過を追うことが重要な仕事です。お客様に喜んでいただける場に立ち会うことができて、それが私たちの喜びにもなる。そんなところが最大の魅力ですね。
後藤 とびの仕事は、完成形を頭の中で想像しながら作業を重ねていきます。その想像と実際の完成したものが見事に合致したときはやはりうれしいし、やりがいを感じますね。
鎌田 とびは特に男性が多い業種と伺います。人知れないご苦労も多かったのではないでしょうか?
後藤 お客様から「女は頼んでないぞ!」と言われて現場から帰ってきたこともあります。やさしい人が多いけど、職人肌で「女の職人は認めない」という頑固な人も昔はいましたからね。
 鉄筋工は時間が勝負のところがあります。いかに速く正確に、きれいに仕上げることができるか、そこが実力の見せどころ。経験を積むうちにだんだん熟練してくるとうれしいし、やりがいも感じます。
吉岡 お客様に指名されると素直にうれしいですね。一人暮らしの女性から「女性の職人がいい」とご要望いただいて、指名されることもあります。
安里 電気工は一つの現場の最初から最後まで携わる場合が大半で、建物が完成した際に、お客様よりも先に建物の隅々までチェックできます。いろんな建築家さんの作品を見ると刺激を受けるし、モチベーションが高まりますね。

女性ならではの悩み 困っているところ

今田 建設現場は男性の方が多いですが、女性ならではの気遣いや留意している点がありましたら、ご紹介ください。
木田 女性としての存在感を意識していますね。例えば「女性だから無理」といった変な甘えを出さないようにしています。一般に女性がいると現場が華やぐと言われますが、半面、男性の足を引っ張ることはできないという責任感も芽生えるんです。
後藤 男性でも力が弱い人もいますよね? 誰でも得手不得手があり、それぞれの役割分担の中で自分のマイナスを仲間が補うような、チームづくりを大切にしています。出産経験など、女性特有の悩みもあるので、上司に報告して、場合によっては休みをもらうこともあります。問題を一つずつ解決して、その繰り返しで信頼関係を築いてきたからこそ、今があるという感じですね。
 現場では男女同じ服装なので男性に間違われることが多く、そこは少し困りますね。着替えとかトイレとか、いろいろ不便なこともありますし。だから、仲間との会話の中でわざと女っぽく「なあに~?」「そんなことないわ~」と答えてみたり(一同笑)、「私は女性よ」と周囲に意識させたりすることも。
吉岡 現場に女性一人の場合がほとんどなので、真っ先に名前を覚えてもらえるのはメリットですね。体力面での不利は、最初は悩んだことがありましたが、だんだん図々しくなり「あれ、ちょっと運んでくれる?」って頼みますよ(一同笑)。
安里 やはり困るのはトイレですね。
今田 現場に女性専用トイレがない場合がほとんどでしょうか。
安里 ええ、そうです。最初の頃は「トイレに行ってくる」というのも言い出せずに苦労しました。今でも状況によってですが、トイレの回数を減らすために水分を控えることがあります。
後藤 現場にトイレや手洗い場があるか確認して、無い場合は水のタンクやウエットティッシュを持参しています。
 私はトイレで着替えますが、換気がないので臭いし暑いし本当に大変。ここは何とかしてもらいたいですね。

建設業界を目指す女性たちへメッセージ

鎌田 最後に、これから建設業界を目指そうと思っている若い女性へ一言アドバイスをお願いします。
木田 女性が極端に少ない世界ですが、今後必ず増えていくはず。徐々に女性が働きやすい状況になっているので、心配せずに飛び込んできてほしい。
後藤 3Kな側面も依然ありますが、やりがいはとても大きいし、入ってしまえばそんなに気になりません。女性が現場にいると華やかにもなりますし、ぜひ目指してほしいと思います。
 「みんなでものづくりを始めよう!」と言いたいですね。ものづくりの楽しさ、醍醐味、達成感、そんなものを若い女性に伝えていければと思います。
吉岡 女性でも建設業で活躍できることがたくさんあるので、まずはそれを教えていきたい。情報を知ることで目指す人も増えると思うんです。
安里 現場が好きなので、もっと現場の楽しさを伝えたいですね。私が働いている姿を見てもらって、建設現場でも女性が必要とされていることを広めたいです。
今田 皆さんから多くの貴重な意見をいただきました。本日は長い時間ありがとうございました。

ページトップ

最新記事

最新記事一覧へ