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ロボット企業インタビュー ROBOCOが行く! Vol.2|ロボット技術で労働者を支える!

サイバーダイン株式会社
代表取締役社長/CEO
山海 嘉之


 
ROBOCO(ロボコ)

生まれたばかりのロボットの妖精。頭のヘルメットには秘密が隠されている。建設産業に関わる「ロボット技術」について取材を通じ勉強している。
 
 

 
サイバーダイン株式会社
代表取締役社長/CEO 

山海 嘉之(さんかい よしゆき)

筑波大学大学院修了。工学博士。筑波大学サイバニクス研究センター センター長。筑波大学大学院教授。2004年サイバーダインを設立。

 
 

 労働力不足、生産効率の向上の必要性などから「ロボットの活用」が注目されています。建設産業におけるロボット技術の可能性を探る「ROBOCOが行く!」 第2回を迎える今号では、世界初のサイボーグ型ロボット「ロボットスーツHAL®」で有名なサイバーダイン社の山海嘉之社長に、同社が世界トップを走り続ける「サイバニクス技術(人・ロボット・情報系の融合複合技術)」が建設産業に寄与する可能性についてROBOCOがお話を伺いました。




Q. サイバーダインの「HAL®」とはどんなものですか?



 
HAL®作業支援用 Prof. Sankai, University of Tsukuba / CYBERDYNE Inc.

 「HAL®」はサイバニクス技術(人・ロボット・情報系の融合複合技術)を用い、装着者の脳から神経を通じて筋肉に伝わる微弱な生体電位信号を検出し、実際に身体を動かそうとした瞬間に装着者とロボットが一体化して動作する世界初のサイボーグ型ロボットです。実際に体が物理的に動かなくとも脳から身体に伝わっていく生体電位信号が検知できればHALが動作をアシストしてくれるのです。HALは身体に障害がある人の機能改善治療などの医療用途への展開を目指し実用化されたものですが、医療機器としての高い技術と筋骨格系に対する医学的解析に基づいて作業支援分野へと展開されました。




Q. 建設産業への作業支援用HALの導入について教えてください。



 
提供:㈱大林組

 昨年から㈱大林組で「作業支援用HAL」の現場実証を始めています。主に、重労働をする作業者の腰部の負荷を低減させながら、作業の際に力を補助して楽に安全に継続して仕事ができるようにするものです。例えば、1日約800キロ(20kg×40箱)の運搬をしていた作業者の方が、頑張ってくれたのでしょうが、HALを装着することで、1日で約8トン(20kg×400箱)もの運搬を達成したとの連絡もありました。補助率は最大40%ですので、むしろ継続が厳しい作業が楽になり、長時間、安全に作業を続けられることが特徴と言えます。目的はあくまで腰痛の防止など作業者が安心して働ける環境の整備です。腰痛になってから治療するのではなく、腰痛にならないように予防するのです。




Q. 建設産業へのロボット技術というのはどのように広がっていくのでしょうか?



 

 熟練者の技能伝承にも有効です。熟練者の技能(動作)をロボットが記憶して、そのデータを組み込んだロボットを他の人が装着することで、コツなどの伝承ができるでしょう。これからは単関節や、手、指といった個別のアシストも可能となっていきますので、建設業のそれぞれの職種に合ったロボット技術による支援ができることでしょう。
 建設産業以外に、製造現場や工場内での重量物の運搬や大手銀行での紙幣の搬送などでの活用も進んでいます。身体への負荷が減ることで作業に集中でき、ヒューマンエラーによる事故の減少にもつながります。また、災害現場など人体に危険を及ぼす環境で放射線、アスベスト、化学物質などから身を守るプロテクションジャケットや冷却装置などを装着することによる作業員の安全の確保にも有効です。




Q. 中小建設企業に普及させるためにはどうすればいいでしょうか?



 

 ロボットのニーズは中小企業にも徐々に広がっていくでしょう。ただ、法整備や導入支援が必要です。例えば労災保険では、日本の場合、怪我をしてからの補償が中心ですが、ドイツでは労働環境整備として「予防」に重点がシフトしています。つまり、作業員の身体的な負荷を低減し、腰痛にならないようにするといった観点で労働環境を改善していくことの重要性が企業の管理者の方々にも理解されています。さらに、適用分野の拡大も必要です。どういう用途が最適かを探り、さらに運用モデルまでつくっていけるかがポイントとなるでしょう。既存のIT機器とロボットとが連動する情報システムの構築も必要です。
 これらの相乗効果で人員や生産計画が非常に立てやすくなり、より安心で先進的な業界としてイメージアップに繋がり、さらに、業務効率アップができるため、経営層にとってはスケールメリットも大きいでしょう。




Q. ロボットがある社会、安全性は問題なのですか?



 

 建設現場など職場を含めた生活分野で活用される生活支援ロボットの安全認証については、国際標準化機構のISO13482という国際規格が昨年、発行されました。作業支援用HALは、装着型ロボットとして世界初の認証を取得しています。今後、第三者認証機関から国際安全認証を取得しておくことが国際的な流通の面で必要となる時代が来るでしょう。ロボットが社会実装されていく際には、ユーザーや社会に受け入れてもらい易くするための取り組みとして、安全性の検証を行うことは大変重要であると考えています。
 様々な分野でロボット技術が開拓されるにしたがって新たに見えてくるものがあります。ハイテクが進めば仕事も「楽しく」出来るのではないでしょうか。楽しいとなった瞬間からその意味も変わってくる。ハイテクによる労働環境の改善やイメージアップは後継者の獲得にも繋がることでしょう。

(2015年7月21日、サイバーダイン本社にてインタビュー)
 
 取材を終えて...

 
 インタビューに応えていただいた山海社長は、常に未来のことを話される姿がとても印象的でした。ロボットは人間に代って何かをしてくれたり、生活を便利にしたりするだけではなく「私たちの生活を支えてくれるロボット」がある新しい未来を感じました。ロボットと一緒なら未来の建設現場は、きっと辛かった仕事も楽しくなるかもしれません。

 
サイバーダイン株式会社


所在地 〒305-0818 茨城県つくば市学園南2丁目2番地1
設立 2004年6月24日
代表取締役社長/CEO 山海 嘉之

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