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Kaleidoscope/建築施工系技術者に求められるコミュニケーション能力

第3回|内定者・新入社員の不安と若手社員の実態

鹿島建設株式会社 建築管理本部 建築企画部 大湾 朝康

1 内定者・新入社員の不安

 前項でも紹介しましたが、2009年~2010年に土木・建築内定者を対象に、就業に向けての不安事項をグループで抽出させ、改善案を発表させました。この結果、不安事項で最も多かったのが、「職場でのコミュニケーション」と「自分の時間の確保」で共に31%。「一級国家資格の取得」と「失敗と失敗後の対応」が共に13%、以下、「仕事への自信」「女性社員の産後の位置付け等」と続いております(図-2)。2009年には同年入社の建築施工系新入社員全員と面接して不安事項を抽出させた結果、「職場でのコミュニケーションがうまく取れない」「自分が現場に貢献しているのか不安」「失敗はしたくないが、早く成果を出したい」「同期から遅れている感じがする」「自分の時間が取れない」「現時点での仕事の意義が見えない」などの項目が多く見られました。内定者と新入社員の不安に関わる共通のキーワードは「コミュニケーション」「時間」「失敗」でした。コミュニケーション不足から自問自答で悩んでいる社員に対しては、「教えて下さい」という謙虚な姿勢で職長や上司に相談すること、そして、こちらがコミュニケーションを取りたいと思われる社員に自ら変革する努力と姿勢を持ち続けることが重要であり、それには、「家庭」と「職場」と異なる第三の世界を持ち、そこで「価値ある情報」を絶えず仕入れ、リーダーシップ経験や成功体験を味わい、人間としての幅を広げるように指導しております*4

2 若手社員の実態

 社内では研修の講師として招聘した現場所長や教育担当者と、また社外では、建築学会等を通じて交流のある他ゼネコンの育成担当者と、最近の若手社員について意見交換する機会に恵まれております。若手社員の質的変化に関わる社内外の意見を整理しますと、「対面によるコミュニケーションが苦手」、「時間にルーズなど、マナーレベルが低い」、「マニュアル型人間が多い」、「PCスキルは卓越しているが、依存度が高い」、「自己中心」、「指示待ち」「余計な仕事は率先しない」「打たれ弱い」等の結果となります。この中で必ずテーブルに上がるのが、“タイムリーな報・連・相が少ない、メールによる会話やネットからの情報収集が多い、注意しても他人事のようで感度が鈍い、人との議論や討議を避けたがる”等に代表される「コミュニケーション能力不足」の問題でした。これらの意見は、当社で実施した2010年管理者研修における「最近の若手社員に関する事前レポート」の内容とほぼ一致しております。  若手社員が抱える問題点と真の原因を精査してみますと、「知識・スキル不足⇒自ら情報収集しない」「残業時間が多い⇒全体が見えず、優先順位が不明」「非効率でミスを連発⇒新人であることの甘え」「上司とのコミュニケーション不足⇒声を掛けてもらえる筈という甘え」等、“意識の不足”、そして“甘え”という「マインド面」の問題が浮かび上がってきます。我々は、目に見えやすい幹や枝葉(知識、スキル、行動特性)で若手社員を評価してしまう傾向にありますが、目に見えにくい根っこの部分(マインド)に焦点を切り替えて問題点を追及する姿勢、即ち「パラダイム転換」が必要になると思われます※5


<参考>

※4 「建築施工系技術者の役割・育成と業界が求める人材・スキル」大湾朝康 実践教育Vol.28
※5 2010年6月7日 リクルートマネジメントソリューションズセミナー

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